不安が強い小学生への関わり方に悩んでいませんか?今回のお家療育シリーズでは、不安が強くなる理由を発達の視点から解説。夏休みに親子で実践したい「安心の土台」を育てる言葉かけを、実体験を交えながらご紹介します。
1.「どうしてこんなに不安が強いんだろう?」
旅行が近づくと、急に『行きたくない』と言い出す。
初めての習い事の日になると、お腹が痛いと言って泣いてしまう。
何度『大丈夫だよ』と励ましても、不安そうな表情は変わらない。
そんな我が子を見て「どうしてこんなに心配性なんだろう。」
そう感じたことはありませんか?
親としては、「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と安心させたいですよね。
私もこれまで多くの保護者の方から同じような相談を受けてきました。
「楽しみにしていたはずなのに、当日になると行けなくなるんです。」
「何をするにも『大丈夫かな?』と確認してきます。」
「このまま大人になって、大丈夫なのかと心配です。」
私は、不安が強い子は「心が弱い子」ではなく「安心して一歩を踏み出すための土台」がまだ育っている途中であると捉えています。
だからこそ「心配しすぎ」と考えるのではなく、「どうしたら安心して挑戦できるかな?」という視点で関わることが大切になります。
この記事では、お家療育シリーズ第4弾として、生徒さんの実体験と発達の視点を交えながら、不安が強い子どもの背景を解説するとともに、夏休みだからこそ親子で取り組みたい「安心を育てる言葉かけ」をご紹介します。

2.生徒さんの体験談|「親も一緒だから大丈夫。」そう思っていたのに…
ある生徒さんの体験談をご紹介します。
Dさんのお子さんは、不安がとても強いお子さんでした。
ある年の夏、親子で参加する宿泊イベントがありました。
募集が始まるとすぐに申し込みをし「早く行きたい!」「あと何日で行ける?」と、イベントの日を指折り数えて楽しみにしていたそうです。
Dさんも「親も一緒に参加するイベントだから、不安になることはないだろう。」
そう思っていました。
ところが、イベントまであと一週間になると、お子さんの様子が少しずつ変わり始めます。
「ちゃんと眠れるかな。」
「友達とうまく過ごせるかな。」
「みんなに迷惑をかけたらどうしよう。」
「やっぱり行きたくない。」
楽しみにしていたはずなのに、不安な言葉ばかりが増えていきました。
「ママも一緒だから大丈夫だよ。」
そう励ましても、お子さんの表情は晴れません。
そして迎えた当日。
玄関まで準備をしていたにもかかわらず、お子さんはその場から動けなくなってしまいました。
涙を流しながら「ごめんなさい…。やっぱり行けない。」そう話したそうです。
Dさんは
「いつもどんどん不安が強くなっていき、結局挑戦できない」
「親も一緒なのに、何がそんなに不安なんだろう。」
「これからの将来がとても不安。」
と、ご自身を責めるほど悩まれました。
そんな時に発達科学コミュニケーションを学び、お子さんの発達について理解を深めていく中で、初めて気づいたことがありました。
お子さんは「行きたくない子」だったのではありません。
本当は行きたかった。
でも、不安が大きくなりすぎて、一歩を踏み出せなかっただけだったのです。
そのことが分かってから、Dさんの関わり方は少しずつ変わっていきました。
「大丈夫だよ。」と励ますことよりも「心配なんだね。」と、まず気持ちを受け止めることを大切にするようになったのです。
後になって、お子さんはイベントに行けなかった理由を「本当は行きたかったんだけど、夜どんな場所で寝るのか心配でたまらなかった。」と、正直に話してくれたそうです。
Dさんはこの経験を通して、子どもに必要だったのは、不安をなくすことではなく、「安心できる心の土台」を育てることだったのだと実感されたそうです。

3.不安が強い子は「心が弱い子」ではなく、「安心を必要としている子」です
子どもが何かを心配している姿を見ると「考えすぎじゃない?」「そんなこと気にしなくても大丈夫。」と思ってしまうことがあります。
でも、不安は決して悪い感情ではありません。
本来、不安とは、自分の身を守るために誰もが持っている大切な力です。
道路を渡る前に車を確認したり、初めての場所で慎重になったりするのも、不安という感情があるからです。
では、なぜ不安が強い子は苦しくなってしまうのでしょうか。
それは、まだ起きていない未来を頭の中で何度も想像してしまうからです。
例えば宿泊イベントなら
夜眠れなかったらどうしよう。
友達とうまく話せなかったらどうしよう。
先生に迷惑をかけたらどうしよう。
忘れ物をしたらどうしよう。
次から次へと、不安な未来を思い描いてしまいます。
すると脳は「危険かもしれない。」と判断し、自分を守ろうとしてブレーキをかけます。
その結果
「行きたい。」という気持ちよりも「やっぱりやめておこう。」という気持ちが大きくなり、一歩を踏み出せなくなってしまうのです。
つまり、不安が強い子は心が弱いのではありません。
未来を想像する力が豊かだからこそ、不安も人一倍大きく感じてしまうのです。
だからこそ、私たち大人が目指したいのは、不安をなくすことではありません。
子どもが「不安だったけれど、大丈夫だった。」という経験を少しずつ積み重ねられるように関わることです。
その積み重ねが、「安心の土台」を育て、新しいことへ挑戦する勇気につながっていくのです。

4.夏休みだからこそできる|安心を育てる言葉かけ3ステップ
夏休みは、学校がある時期よりも親子で過ごす時間が長くなります。
朝の登校時間に追われることも少なくなり、一緒に食事をしたり、お出かけをしたり、ゆっくり話をする時間も増えるのではないでしょうか。
だからこそ私は、夏休みは「安心の土台」を育てる絶好のチャンスだと考えています。
「お家療育」と聞くと、特別な教材やトレーニングを思い浮かべる方もいるかもしれません。
ですが、不安が強い子にとって一番大切なお家療育は、毎日の親子のコミュニケーションです!
私が教えている発達科学コミュニケーションの中で、実際に多くの親子との関わりの中で効果を実感しているのが「安心を与える言葉かけ」です。
① まずは、子どもの気持ちを否定せずに受け止める
子どもが不安な気持ちを話してきた時、親は安心させたい一心で「大丈夫。」「考えすぎじゃない?」と声をかけてしまいがちです。
私たちは励ましているつもりでも、子どもには「この気持ちは分かってもらえないんだ。」 と伝わってしまうことがあります。
だから最初に必要なのは、解決策でも励ましでもありません。
「気持ちを受け止めること」です。
例えば、
「そうなんだ。」
「心配なんだね。」
「それだけ大切な予定なんだね。」
たったこれだけでも、子どもの表情がふっと和らぐことがあります。
不安が強い子は「不安をなくしてほしい」のではなく「自分の気持ちを分かってほしい」と思っていることが多いのです。
② 気持ちを肯定して、「味方がいる」と伝える
気持ちを受け止めたら、次はその気持ちを肯定します。
例えば
「初めてのお泊まりだもんね。」
「楽しみにしているからこそ、ドキドキするよね。」
「ママも初めてのことは緊張するよ。」
そんな言葉をかけるだけで、子どもは「こんなふうに感じるのは自分だけじゃないんだ。」と安心できます。
ここで大切なのは「そんなこと気にしなくていい。」ではなく「そう感じても大丈夫だよ。」というメッセージを届けることです。
子どもは、自分の気持ちを否定されずに受け止めてもらえる経験を積み重ねることで「どんな気持ちになっても、お母さんは味方でいてくれる。」という安心感を育てていきます。
この安心感こそが、不安が強い子の心の土台になります。
③ 「どうしたら安心できそう?」と一緒に考える
気持ちを受け止め、肯定した後は、一緒に安心できる方法を考えていきます。
例えば「どうしたら少し安心できそうかな?」と聞いてみてください。
すると子どもから
「先生が近くにいてくれたら安心。」
「お気に入りのハンカチを持って行きたい。」
「ママとずっと一緒にいたい。」
そんな言葉が出てくるかもしれません。
もし子どもが思いつかなければ「困ったら先生に相談してみる?」「お守りをポケットに入れていこうか。」など、一緒に考えてあげるのもいいでしょう。
ここで大切なのは、親が答えを決めることではありません。
「一緒に考えてくれる人がいる。」
そう感じられることが、子どもの安心につながります。
「不安はある。でも、自分には乗り越える方法がある。」
そんな経験を積み重ねることで、子どもは少しずつ自分の力で一歩を踏み出せるようになっていくのです。

5.大切なのは、「不安をなくすこと」ではなく、「安心できる心」を育てること
親としては、子どもが不安そうにしている姿を見ると「早くその不安を取り除いてあげたい。」そう思いますよね。
でも、これからも子どもたちはたくさんの「初めて」を経験していきます。
そのたびに、不安を感じることは決して悪いことではありません。
だから私たちが目指したいのは「不安にならない子」を育てることではありません。
不安になっても
「きっと大丈夫。」
「困ったら相談してみよう。」
「やってみようかな。」
と思える子を育てることです。
そのためには「大丈夫。」という言葉だけではなく
「心配なんだね。」
「そう思うのも無理ないよ。」
「どうしたら安心できそうかな?」
という関わりを積み重ねることが何より大切です。
夏休みは、そんな安心の土台を育てる絶好の機会です。
宿題を頑張ることももちろん大切ですが、一日5分でも構いません。
- 今日楽しかったこと。
- 少し心配だったこと。
- 頑張ったこと。
そんな何気ない会話を親子で楽しんでみてください。
その積み重ねは、目には見えなくても、子どもの心の中に少しずつ「安心」という土台を育てていきます。
そして、その安心の土台が育つことで、子どもは少しずつ「やってみよう。」と、自分から一歩を踏み出せるようになるのです。
お家療育で一番大切なのは、特別な教材でも、難しいトレーニングでもありません。
毎日の親子のコミュニケーションです。
今年の夏休みは、ぜひ「安心を育てる言葉かけ」を意識しながら、お子さんとの時間を過ごしてみてください。
次回のお家療育シリーズでは、「偏食」をテーマに、子どもが食べられない理由を発達の視点から分かりやすく解説します。
「好き嫌いが多い」「食べられる物が限られている」と悩む子どもの背景には、感覚の特性や不安の強さが関係していることも少なくありません。
実体験を交えながら、親子で楽しく取り組めるお家療育や、食事の時間が「安心できる時間」になる関わり方をご紹介します。
ぜひ、お楽しみに!






