「何が嫌なの?」と聞いても答えられないのは、気持ちを整理して言葉にする力が追いついていないからかもしれません。不安が強い子が気持ちを話せない理由と、安心して言葉にできるようになる関わり方を実体験を交えて紹介します。
1.不安が強い子に「何が嫌なの?」と聞いても答えてくれない…そんなお悩みありませんか?
「どうしたの?」
「何が嫌なの?」
「何があったの?」
子どもが学校へ行きたがらないとき、こんなふうに声をかけたことはありませんか?
けれど、返ってくるのは、
「分からない。」
「別に。」
「何でもない。」
そんな言葉ばかり。
話しかけても返事をしない。
自分の気持ちを言葉にできない。
困っていることを言えない。
会話が一方通行になってしまう。
そんな様子を見ていると、
「本当は理由があるんじゃないの?」
「ちゃんと話してくれないと分からないよ。」
と焦ったり、イライラしたりしてしまいますよね。
ですが、不安が強い子の場合は、「言わない」のではなく、自分でも言えない状態になっていることが少なくありません。
気持ちを整理したり、言葉に置き換えたりする力は、脳の発達とともに少しずつ育っていくため、不安でいっぱいになると言葉が出にくくなることがあります。

2.息子も「分からない」しか言えない子でした
我が家の息子も以前は、不安が強く、学校へ行きたくない朝になると、
「どうしたの?」
「何が嫌なの?」
と聞いても、
「分からない。」
「学校、行きたくない。」
その言葉しか返ってきませんでした。
理由が分からない私は、
「先生?」
「友達?」
「勉強?」
「給食?」
と次々に質問をしていました。
すると息子は、「分からない!」「もういい!」と言って黙り込んでしまうこともありました。
当時の私は、
「本当は理由があるのに話してくれないのかな。」
「言いたくないだけなのかな。」
そう思っていたのです。
しかし、後から分かったのは、息子自身も理由が分からなかったということでした。
学校では、
- 先生のこと
- 友達のこと
- 授業のこと
- 給食のこと
- 教室の音
たくさんの不安が重なり合い、頭の中がいっぱいになっていたのです。
だから話せなかった。
そのことを知ってから、私は「理由を聞き出すこと」よりも、「気持ちを整理する手伝い」を意識するようになりました。

3.不安が強い子は気持ちが頭の中で渋滞している
不安が強い子は、小さな変化にもとても敏感です。
- 授業で少し分からないところがあった
- 先生の声がいつもより大きかった
- 友達の表情が気になった
- 給食を残してしまうかもしれない
- 教室がいつもより騒がしかった
そんな出来事でも、不安が一気に膨らんでしまいます。
大人でも突然トラブルが起きると、「どうしよう。」と頭が真っ白になることがありますよね。
子どもは脳の発達が途中だからこそ、その状態になりやすいのです。
私たちはつい、「気持ちは言葉で伝えるもの」と思いがちです。
ですが、本当は
①感じる
↓
②整理する
↓
③言葉にする
という順番で育っていきます。
本人の中では、
- 「先生が怖い。」
- 「分からなかったらどうしよう。」
- 「友達に何か言われるかもしれない。」
- 「疲れる。」
- 「給食が心配。」
そんな気持ちが何層にも重なっています。
しかし、それを一つ一つ整理して言葉にする力は、まだ十分育っていません。
だから最後に出てくる言葉は、「行きたくない。」だけなのです。
つまり、「行きたくない」はたくさんの感情が混ざった結果として出てきた言葉なのです。

4.「何で?」ではなく、気持ちを整理できる関わり方
子どもが何も話してくれないと、
「何があったの?」
「何でそう思うの?」
「ちゃんと教えて。」
と、理由を知りたくなりますよね。
しかし、不安でいっぱいの子にとっては、この質問がプレッシャーになってしまうことがあります。
頭の中が整理できていない状態で理由を聞かれると、「分からない。」としか答えられません。
すると、「何で分からないの?」「ちゃんと考えて。」と言われることで、
「答えられない自分はダメなんだ。」
「どうせ話しても分かってもらえない。」
そんな気持ちが重なり、ますます言葉が出なくなってしまうこともあります。
だからこそ、言葉が出ないときは、「話したくない」のではなく、「まだ話せる状態ではないのかもしれない」という視点を持つことが大切です。
子どもが言葉にできないときは、ママが正解を当てる必要はありません。
大切なのは、「こんな気持ちだったのかな?」と、言葉を添えてあげることです。
例えば、
- 「分からない問題があると不安になるよね。」
- 「今日は教室がいつもより騒がしいのかな。」
- 「先生に当てられるかもしれないってドキドキするよね。」
- 「給食を残したらどうしようって思ったのかな。」
このように気持ちを言葉に置き換えてもらうことで 、「そう、それ。」「うん。」と、うなずけることがあります。
その積み重ねが、
「あ、この気持ちは『不安』っていうんだ。」
「これは『悔しい』だったんだ。」
と、自分の感情と言葉を結び付ける力を育てていきます。
また、不安が強い子に、「どうしたい?」と聞いても、「分からない。」となることは少なくありません。
そんなときは、答えを考えやすいように選択肢を用意してあげるのがおすすめです。
例えば、
- 「先生が心配なのと、給食が心配なのと、どっちが気になる?」
- 「今日は教室より保健室のほうが安心かな?」
- 「午前中だけ行くのと、お昼から行くのならどっちならできそう?」
このように選択肢があることで、子どもは自分の気持ちを整理しやすくなります。
そして、自分で選ぶ経験を積み重ねることで、
「こうなのかも。」
「今日はこれならできそう。」
と、少しずつ自分の気持ちを言葉で伝えられるようになっていきます。

5.少しずつ自分の気持ちを話せるようになった息子
関わり方を学んでからの私は、理由を聞き出そうとすることをやめ、まずは息子の気持ちを想像して言葉にすることを続けていきました。
そんな小さなやり取りを繰り返すうちに、息子は少しずつ自分の気持ちを整理できるようになっていきました。
- 「今日は保健室。」
- 「給食までは頑張る。」
- 「算数が不安。」
そんなふうに、自分から少しずつ話してくれる場面が増えていったのです。
学校でも、分からない時やどうしたらいいか困った時に、先生に直接「どうしたらいいですか?」と聞ける様になりました。
今でも「分からない。」と言う日はあります。
ですが、以前とは違い、その言葉の奥にある気持ちを一緒に探せるようになりました。
そして何より、息子自身が「困ったら伝えていい。」「不安な気持ちは話していい。」と思えるようになったことが、大きな変化だったと感じています。
「何が嫌なの?」と聞いても答えられない子は、不安で頭の中がいっぱいになり、自分でも気持ちを整理できない状態なのかもしれません。
焦って答えを求めるよりも、一緒に気持ちを整理していく関わりを積み重ねることで、子どもは少しずつ自分の気持ちを言葉にできるようになります。
その積み重ねは、自分で考え、選び、困ったときには助けを求められる力へとつながっていきますよ。

\“どう関わればいいか迷う”ママへ/
「待つ?手伝う?」と悩みやすい場面での関わり方を
不安が強い子が「自分でやる」を少しずつ増やしていく
視点と具体的な声かけにまとめました。
執筆者: たるみ あや
発達科学コミュニケーション アンバサダー




