聴覚過敏の子どもは大きな音が全部苦手?音に敏感な娘が、大好きなアーティストのライブを楽しめた体験から、音への感じ方と「好き」「やってみたい」という気持ちが子どもの挑戦につながった理由をお伝えします。
1.聴覚過敏のある子どもに大きな音のするライブなんて無理!って思ってませんか?
音にとても敏感な子っていますよね?
周囲の人は特に気にならないような音にでも過敏に反応したり、大きな音を怖がって泣き出してしまったり、パニックになってしまったり…。
子どもにそのような聴覚の過敏さがあると、家族でお出かけする時にも色々と配慮が必要になります。
- きっと楽しいだろうと思って連れて行ったお祭りで、太鼓などの大きな音を嫌がって不機嫌になってしまった
- 外出先で思いがけず苦手な音と遭遇してしまってパニックになってしまった
そんな経験から、楽しいはずのせっかくのお出かけが残念な結果になってしまったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そういった経験が重なると、「ライブみたいな大きな音がでるイベントは、絶対無理だな…」と思ってしまいますよね。
私もずっとそう思っていました。
ところが、聴覚過敏のある娘が「大好きなアーティストのライブに行きたい!」と言い出したのです。
そして実際に行ってみると、私の予想とは違う娘の姿がありました。
この記事では、聴覚過敏のある自閉スペクトラム症(ASD)グレーゾーンの娘がライブを楽しめた体験を通して、音への感じ方と「好き」「やってみたい」という気持ちについてお伝えします。

2.聴覚過敏のあるASDグレーゾーンの娘の対応に難しさを感じていた過去
私にはASDグレーゾーンで聴覚過敏のある小学生の娘がいます。
娘は、赤ちゃんの頃から音に敏感で、物音や車、バイクの音ですぐに起きてしまったり、花火の音を怖がって花火大会には行けなかったりというようなことがありました。
そのため、「大きな音が怖いんだな」ということには気づいていましたが、幼児期にはそれほど心配するようなことはありませんでした。
わが家の場合、 音への過敏さが目立つようになったのは、小学校に入学してからでした。
特に、娘が小学校への登校をしぶり始めた小学2年生ごろから、雷などの大きな音を極度に怖がったり、人混みのザワザワした音を嫌がったりということが増えてきました。
外出先でも、大きな音に遭遇すると耳を塞いだり、不安を訴えるようになりました。
お祭りでの太鼓やスピーカーの大音量、遊園地でのアトラクションでの大音量などを嫌がり、その度に機嫌が悪くなったり、癇癪を起こしたりして、家族も対応に困ることが増えました。
そんな娘の姿を見ているうちに、私は、「この子は、大きな音が出るイベントに参加するのは難しいんだろうな」と考えるようになっていました。

3.聴覚過敏ってどんな状態?
聴覚過敏とは、周りの人はそれほど気にならない音でも、強く感じたり、不快に感じたりする状態のことをいいます。
たとえば、運動会のピストルの音や太鼓の音、バイクや車のエンジン音などの大きな音にびっくりしてしまったり、怖く感じたりすることがあります。
また、人がたくさんいる場所のガヤガヤした声や、時計の針の音、冷蔵庫の機械音など、生活の中にあるささいな音でも気になってしまい、落ち着かなくなったり、イライラしてしまうこともあります。
どんな音がどのくらい苦手かは人それぞれで、その日の体調や気分によって感じ方も変わってきます。
疲れていたり、不安やストレスが強かったりすると 、いつも以上に音がつらく感じられることがあります。
反対に、自分が出す音や好きなことや興味のあることに夢中になっているときには、同じような音の刺激があっても、気になりにくいこともあります。
つまり、「聴覚過敏がある=すべての大きな音がいつでも苦手」とは限らないのです。
娘の場合も、「大きな音が苦手」ということ自体がなくなったわけではありません。
それでも、大好きなアーティストを「見たい」「ライブに行きたい」という気持ちが、音への不安を上回ることがありました。

4.「好き」の力で、聴覚過敏でもライブに行ける⁉
聴覚過敏のある子どもへの対応では、本人がつらいと感じる音をできるだけ避けたり、安心して過ごせる環境を整えたりすることが大切です。
だからこそ、娘が地元で開催される好きなアーティストのライブに「行きたい」と言った時、私は悩みました。
「大音量が苦手なこの子にライブは厳しいのでは?」
「チケットの値段もそこそこするし、行ってみてやっぱりダメだったとなったら嫌だな」
「今回のライブがトラウマになって、今後ずっとライブやコンサートの類には行かない!なんて言うようになっても困るな…」
こんな考えが頭をよぎりました。
けれど、娘自身は「行きたい」と言っています。
そこで、大きな音がすることを事前に伝え、それでも行きたいか娘の気持ちを確認したうえで、一緒に行ってみることにしました。
当日は、音がつらくなったときに使えるよう、 お守りとしてイヤーマフをカバンに忍ばせて、ライブに参戦。
そしてライブが始まってみると、私の心配をよそに、娘は大好きなアーティストの音楽を楽しんでいました。
結果として、イヤーマフの出番もなく、楽しい時間を過ごすことができました。
もちろん、聴覚過敏のある子どもに苦手な音を無理に我慢させたり、「慣れれば大丈夫」と大きな音にさらしたりする荒治療は絶対にNGです。
けれども今回の娘の姿を見て私は、「聴覚過敏があるから、この子には無理」と親が先回りして決めなくてもいいのかもしれないと気づきました。
娘は今でも大きな音が苦手です。
それでも今回は、「大好きなアーティストを見たい」「ライブに行ってみたい」 という気持ちが、音への不安を上回ったのだと思います。
子どもの苦手なことに配慮することはもちろん大切です。
それと同じくらい、「何が苦手なのか」だけではなく、
「何が好きなのか」
「何ならやってみたいと思えるのか」
に目を向けることも、子どもの新しい一歩につながるのではないでしょうか。
「聴覚過敏があるから難しいのでは」と親が思うようなことでも、本人が「やってみたい」と興味を示したときには受け止めて、安心できる準備をしながら、その気持ちを応援してみる。
今回の経験を通して、私も娘の「好き」の力をもう少し信じてみようと思えるようになりました。
この体験が、お子さんの聴覚過敏に悩むママにとって、「苦手」だけではなく、その子の「好き」にも目を向けてみるきっかけになれば幸いです。

執筆者:中川 まさみ
発達科学コミュニケーション トレーナー





