幼い頃から抱っこ・歯磨き・爪切り・耳かきなど、人から触られることが苦手なお子さんは『触覚過敏』なのかもしれません。『触覚過敏』は発達障害やグレーゾーンの子に多く見られる症状です。我が子の実体験を元に『触覚過敏』の原因とその対処法についてご紹介します。
1.触られることが苦手な子どもの対応に困っていませんか?
お子さんにこのような様子は見られませんか?
✔︎仕上げ磨き、散髪、耳かき、爪切りが大の苦手
✔︎抱っこを嫌がる
✔︎自分から触るのはOKなのに、人から触られるのが苦手
程度の違いはあるにしても、幼少期にお世話を嫌がられるとママは困ってしまいます。
「子どもってみんなこんな嫌がるものなの?」と不安に思われるかもしれません。
可愛いから抱っこしようとしても拒否され、健康を保つためにお世話をしても癇癪を起こす位嫌がったり、発達障害・グレーゾーンの子どもの行動が謎だったりしませんか?
本記事では、子どもがなぜそのような行動を起こすのか、そして、その対処法についてお伝えします。
同じように悩まれている人の参考になりましたら幸いです。
2.触れる感覚が苦手で日常生活は困りごとだらけ…。
私の娘は発達障害・グレーゾーンの子どもです。
小学生になり特性が強く出てきたので、幼少期の検診で発達について指摘されることはありませんでした。
✔︎抱っこされるのが苦手。自分から抱っこされるのは平気。
✔︎仕上げ磨き、散髪、耳かき、爪切りが大の苦手
✔︎芝生、粘土、手で塗るのり、帽子、服のタグ、靴下、ピチッと締まる服、制服・・・などの触れる感覚が苦手
挙げたらキリがないくらい苦手なことだらけで、まだまだ日常的に苦手なことは沢山あります。
こんなに苦手なことがある?というくらい多すぎて不安になります…。
例えば、爪切りや散髪。
大暴れするくらい嫌なら「寝ている時に切ろう!」とそこまで深刻に考えずに、どうにか対処法を探して日常を送ってきました。
仕上げ磨きも全部磨こうとすると嫌がるから今回は前歯をしっかり磨こう。
次回は奥歯を磨こう、といった具合です。
というより、当時ワンオペ育児と仕事でそこまで構ってあげられていなかったのが本当です。
嫌がって癇癪を起こさないように工夫をして、毎日を過ごしていました。
成長するにつれ平気になってきたものが多くありますが、苦手なこともまだまだあります。
学校の制服がチクチクして痛いので私服で登校しています。
私服も何でも良いという訳でなく、タグの当たり心地や着心地が良くないと着れないので、同じ服や色違いなど多めに買って着ています。
ランドセルの肩紐は固くて担ぐのが無理なのですが、素材を変えて本人が大丈夫と感じたリュックは担ぐことができるのです。
低学年の頃は学校指定のズックが履けませんでしたが、成長と共に履けるようになりました。
靴下も苦手で、合うものがあれば多めに購入しています。
一見毎日同じような格好をしているように見えますが、今のところ同じデザインの色違いを着回するしか手が無いのです。
周りの子は制服にランドセルですが体が受け付けず、学校に相談して今の形に落ち着きました。
3.触覚過敏とは?
三姉妹を育てて実感した他の子と反応が違う…何が起きてるの?
なんでこの子だけこんな反応なの?と謎だった行動の秘密がわかりました。
触られるのが苦手な娘の反応を専門的な言葉で『触覚防衛反応』と言います。
『触覚防衛反応』は脳の本能的な触覚機能が暴走して起こる反応です。
『触覚過敏』と言われたりもします。
聞きなれない言葉だとは思いますが、発達障害やグレーゾーンの子に多く見られます。
では、体の中で「攻撃を受けたら致命傷になりやすい場所」はどこでしょう!
ライオンが獲物をしとめるときに狙う場所と想像してみてください。
それは、「首筋まわり」「顔」「頭」「脇腹」です。
また、「噛みつく、ひっかく」は本能的な攻撃形態となります。
その時に使っている体の部位が「口やその周囲、爪の生え際」ですね。
これらの体の部位に接触刺激を感じると本能的な触覚機能の暴走によって
「やめて!そんなことしたら死んじゃう!」と感じるくらい生理的に拒否してしまうのです。
そして、この場所をそーっと触られることを苦手とします。
「散髪」「耳掃除」「仕上げ磨き」「爪切り」をするときに触られるのが、上記に挙げた体の部位と一致するところです。
本人にはどうすることもできません。
本能的に体が拒否していることがおわかりいただけましたか?
4.触覚過敏は遊びの中で改善される!
「触覚防衛反応(触覚過敏)」は脳の本能的な触覚機能の暴走でしたね。
本能ですので、「慣れたら大丈夫」「我慢すれば良い」というものではありません。
アレルギー反応と同じように考えてくださいね。
花粉症の方に「慣れれば治るよ」と杉林に連れて行きはしませんよね。
触覚には「本能的な働きをするもの」と「知的な情報を処理する働きを持つもの」に分けられます。
触覚はこの2つのバランスを保つことで成り立っています。
本能が暴走している場合、後者を育てることで感覚を改善することができます。
「皮膚から入ってくる触覚情報に注意を向けて、素材や形、大きさを識別する」
脳にこのような回路が育ってきたときに本能の暴走に抑制がかかります。
これらを育てるには遊びの中で獲得するのが最善策です。
①背中に書いたものを当てようゲーム
背中など見えないところにわかりやすいマークや文字を書いて当てるゲームです。
ある程度大きく、力を入れて書いてください。
そーっと書くのは嫌がる子が多いので注意が必要です。
②袋に何が入っているか当てるゲーム
いちいち目で見なくても触れたものの「素材」「形」「大きさ」を当てるゲームです。
袋でなくても、砂の中やポケットの中から探す方法でもOKです。
遊びの中に取り入れて触覚を刺激していきましょう!
5.発達障害・グレーゾーンの子 みんなと違ってもそれで良い!
現在小6の次女は成長するにつれて経験値が増え、子どもの中で折り合いをつけられるようになったことから、癇癪を起こすまで嫌がることはなくなりました。
自分の感じていることを言葉にできるようになったり、そのおかげで対処することができています。
学校と情報を共有し、できないことは無理させないでほしいこと。
本能的なことなので「慣れさせたら」「頑張れば」できるようにはならないことを伝えています。
他の子は制服とランドセルで登校する中、次女は堂々と私服とリュックで登校しています。
みんなと違うことを負い目に感じず、「私は私!」と堂々としている次女は強くなったな〜と感心する日々です。
執筆者:田中 さくら
発達科学コミュニケーション リサーチャー