毎日ゴロゴロ、ダラダラしてばかりのお子さんにイライラが止まらない!というママはいませんか?自閉スペクトラム症(ASD)の子どもがなかなか動かないのには理由があります。本記事では、その理由とそんな子どもが自分から「お手伝いする!」と行動したご褒美作戦をご紹介します。
1.ゴロゴロしてばかりのお子さんにイライラしていませんか?
ママからすれば、やらなければならないことはいくつもあると思うのに、ゴロゴロしてばかりで何もしようとしない!
「ひまだ〜。やることない…」 と言いながら、ダラダラとゲームやYouTubeで暇つぶしをしている…
そんな姿を見るとだんだんイライラしてきて我慢できない‼というママも多いのではないでしょうか。
ママがあれして、これしてと言わなくても自主的に考えて動いてくれたら、とてもうれしいですよね。
2.やればできるのにちっとも動かない子ども
私の息子も毎日ゴロゴロしてばかりいました。
起きてきたと思ったら、リビングで寝転んでYouTubeを見ながらゴロゴロしてばかり。
「朝ごはんにする?」「○○分になったら気がえようね」と声をかけても気のない返事が返ってくるだけ。
挙句の果てには、
「ママ~、リモコンとって~。着替え持ってきて~」
と何でも「ママやって〜」と言ってくるのです。
こっちはいろいろと忙しいのに、私だってやりたくない家事をやっているのに、少しは自分で動いたらどうなの!と私もイライラMAXになっていました。
そして
「自分で洋服取ってきて!」
「パジャマ片づけて!」
「ご飯できたよ!早く座って!」
とつい怒った口調で息子に指示をしていました。
しかし、私がカリカリすればするほど息子は頑として動こうとしません。
結局、自分が動いた方が早いので、私はぶつぶつ文句を言いながら着替えを取りに行き、脱いだパジャマをカゴに入れていました。
息子はいつも行動が遅いわけではありません。
自分の興味のあることに取り組むときはとてもテキパキと行動しますし、自分が行きたいところに出かけるときは、自分で着替えを出し、自分で脱いだパジャマも運び、身支度もむしろ素早いのです。
やればできるだけに、どうして普段はちっとも動かないんだろうと、私は息子のダラダラする姿にイライラしていました。
同時に、この先やりたくないことでもやらなければならないこともあるのに、どうすればよいのだろうと不安にも思っていました。
3.ASDの子どもが行動しない理由と行動することが大切な理由
息子には自閉スペクトラム症(ASD)の傾向があり、なかなか行動しない原因はその脳の特性が関係していたのです。
ASDの子どもには、興味の範囲が狭く、自分の興味のあること・好きなことにはすごい集中力や行動力を示す一方で、興味のないことにはなかなか取り組めないという特性があります。
さらに、ASDの子どもは敏感で、ちょっとした変化に気付くことに長けているので、言葉そのものだけでなく、ママの表情、声色、ジェスチャーなど、相手から発せられるイライラモードをフルでキャッチできてしまいます。
私のイライラした雰囲気を感じ取った息子の脳は、「これはイヤな話だな」と判断し耳をふさいでしまったのです。
また、まだ未熟な子どもの脳は大人よりも受け取った情報を理解するのに時間がかかります。
だから私が何度も強い口調で、矢継ぎ早に声をかけても、聞こえてはいるけど脳に届いていない、理解できない状態になっていたのです。
もともと興味のないことには取り組めないタイプなのに、これではなおさら動くことなんてできませんよね。
しかし、子どもの発達には『行動すること』は欠かせません。
というのも、発達障害に関わらず、人間の脳が発達していくためには
①グルコース(栄養)
②酸素
③脳を使う経験、情報
が必要と言われています。
脳を使う経験とは『脳を使って行動すること』です。
どんな時に脳を使う行動を多くしているかというと、楽しんだり、興味を持って行動しているときに、たくさん使われています。
ですから子どもの発達を促すためには、私たち大人がいかに子どもの行動を引き出せるか、いかに子どもに楽しい、興味があると思わせるかが鍵になります。
4.子どもが進んでお手伝いするようになったママのご褒美大作戦
♦子どもの行動を引き出した『ご褒美大作戦』をご紹介
ある日、息子がほしいもの(カードゲームのカード)があるけどお小遣いが足りないと相談してきました。
これは息子の「行動のきっかけ」のチャンス!と思い、私はある提案をしました。
それは、『お手伝いをいっぱいやってお小遣いGET大作戦』です。
パジャマを洗濯カゴに自分で入れたら〇円
食事の時に配膳をしたら〇円
お皿洗いをしたら〇円
庭の水やりをしたら〇円…
といった感じで、息子と一緒に、できそうなお手伝いや私がやってほしいことをいくつか挙げて金額を決めました。
これは簡単にできそうだなと思うものは安く、 これは少しハードルが高そうだなとか、やってもらえると私がとても助かるなというものは高めの金額にしました。
息子からもどんどん出来そうなお手伝いが出てきて、
「いいね!それやってもらえるとママすごく助かる!」
「う~ん、それはちょっと簡単すぎるな~。これとセットならどう?」
などとワイワイ楽しくルールを決めていきました。
ASDの子どもは、自分の興味のあることや、自分にメリットがある、やる意味があると思ったことにはすごい行動力を発揮するので、
子どもを巻き込み一緒に決めて本人の納得感を得ることがとても大切です。
♦お手伝いをしてくれた時は褒め褒めチャンス
ご褒美はママの肯定的な声掛けとセットで行うことが重要です。
そして実際にお手伝いをしてくれた時は絶好の褒め褒めチャンスタイム!
「お皿洗いやろうかな」と言ったとき、立ち上がったときなど、特に行動しはじめた時にすかさず「やってくれるの?ありがとう!!ママ嬉しいな」と声を掛けます。
お手伝い中にも「丁寧にお皿運べたね」と褒めたり、「どう置いたら乾きやすそうか考えて置いてみたの?」などと工夫したポイントを聞いたりしました。
すると本人も嬉しそうに「これの次にこれを置くと、すき間もできるし安定するんだよ」と自分で気づいたことを教えてくれました。
鋭いASDの息子には、「すごいね」「さすがだね」といううわべだけの褒め言葉よりも、些細なことでも良いので具体的に言う方が喜びました。
だから私もお手伝い中にいくつ褒めポイントを見つけられるか、ゲーム感覚で楽しみました。
ママからしたら、もうちょっとこうしてほしいなと思うこともあるかもしれません。
しかしそれには目をつむり、できているところはないかな、本人が工夫していそうなところはどこかなと観察するのがおススメです。
そして、お手伝いが終わったら「ありがとう、助かったよ。」「一緒にやってくれたから早く終わったよ。ママ嬉しい!」と感謝の言葉をたっぷりと伝えてあげましょう。
ハイタッチやハグをしてもいいですね。
また、本人が「やらない」と言ったときは、「OK!じゃあ今日はママ洗っちゃうね〜」と受け流すようにします。
せっかくお手伝いが楽しいことになっているので、それが義務にならないように気を付けましょう。
5.ゴロゴロしてばかりの子どもには「モノ」+「言葉」のご褒美で行動のきっかけを!
このご褒美作戦をやり始めてから、ゴロゴロしてばかりの息子とは思えないほど、テキパキと自分から進んで、とても楽しそうにお手伝いをしてくれるようになりました。
そして、とうとう目標金額を貯めることができたのです!
最初はお小遣いを稼ぐためにお手伝いをやり始めた息子ですが、だんだんと私や家族が喜んでくれるのを嬉しいと感じているようでした。
今では、ご褒美を決めていないお手伝いも自分で見つけてやってくれるようになりました。
なかなか動かない子どもには、まずは「やってみよう」と思われることがファーストステップです。
ぜひお子さんの好きなこと・興味のありそうなことと絡めた『ご褒美作戦』を「行動のきっかけ」にしてみてくださいね。
執筆者:よしみつ りこ
発達科学コミュニケーション リサーチャー