「保育園に行きたくない…。」毎日不安そうに登園するお子さんの様子を心配しているママはいませんか?お子さんの登園しぶりはただのわがままではなく、発達の特性による困りごとが原因で起こっている可能性があります。本記事では、4歳の自閉スペクトラム症の息子の経験談と特性『不安』に寄り添った登園しぶりへの対応ををご紹介します。
1.「保育園行きたくない…。」毎日不安そうに登園する我が子が心配…。
もう何年も通っている保育園。なのに、毎朝の登園しぶりがなかなか治らない。
「保育園行きたくない…。」不安そうに毎朝登園する我が子の様子を見て
「いつになったら楽しく通えるんだろう?」
「他の子は笑顔で楽しそうに登園しているのに、うちの子だけいつも泣いている…。」
「なんで、こんなに登園を嫌がるんだろう?」
と悩んでいるママはいませんか?
お子さんの登園しぶりが長く続く場合は、なぜ登園を嫌がるのか、理由を考えてみましょう。
特に理由がなく、登園しぶりが続いているようであれば、お子さんの発達の特性が登園しぶりに関係しているかもしれません。
・初めてのことが苦手
・見通しがたたないことが苦手
・不安が強い
・ネガティブな記憶を残しやすい
上記のことが当てはまる場合、お子さんの登園しぶりはただのわがままではなく、発達の特性による困りごとが原因で起こっている可能性があります。
2.登園しぶりが続いた4歳の我が子の様子
私の息子は、自閉スペクトラム症(ASD)の傾向があり、発達障害グレーゾーンの子どもです。
息子は、小さな時から不安が強く、引っ込み思案で繊細な子でした。
「年齢が上がれば自然と軽減されるだろう」と思っていましたが、実際はその反対で、年齢を重ねれば重ねるほど、どんどん不安が強くなっていったのです。
息子が4歳になる頃、登園しぶりが毎日続くようになっていました。
前日の寝る前には、布団に入ると必ず「明日、保育園大丈夫かな?」と聞いてくる息子。
こちらが深刻に捉えている様子を見せると余計に不安をあおるような気がして
「大丈夫だよ。今日も大丈夫だったでしょ?」と軽いトーンで返答していましたが、
息子は不安そうな表情で「うん…。」と言うだけ。
朝も保育園に行くまでずっと「保育園、大丈夫かな?」「保育園行きたくないな…。」と不安な様子で…
私も、そんな息子を勇気づけようと「大丈夫だって!ほら、お友達もいるし!」と明るく返事をしていました。
今にも泣き出しそうな表情で教室に入っていく息子を見送りながら、不安を取り除いてあげることも元気づけることもできない自分を情けなく思っていました。
そして、「このままでは、保育園に行けなくなってしまうかもしれない…。」と悩んだこともありました。
3.自閉スペクトラム症(ASD)の発達特性
自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもは
・ネガティブな記憶を残しやすい
・先のことを見通す力が弱い
・感覚過敏がある
・こだわりが強い
という特性を持っています。
◆ネガティブな記憶を残しやすい
そもそも脳には、ポジティブな記憶よりもネガティブな記憶の方を残しやすいという特性があります。
「ここは危険な場所だったな」と記憶を残すことで、危険から身を守るための本能的な能力です。
自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持っている子は、この原始的な機能が敏感に働きやすいので、知らず知らずのうちにネガティブな記憶がたくさん残ってしまい、強い不安を抱えやすいのです。
また、一度定着したネガティブな記憶は、なかなか消すことができません。
過去の失敗体験をいつまでも忘れられないため、「またあんな風になってしまうかも…」と不安が募るのです。
◆先のことを見通す力が弱い
自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもは、『今』や『目の前』に集中しているため、見通しを立てたり、目に見えないものを想像したりすることが苦手です。
これから先にどんなことが起こるのかを予測することができないので、色々なことが突然起きたことのように感じてしまいます。
毎日、保育園では「どうすればいいの?!」と戸惑いながらも、「周りについていかなくちゃ!」と頑張っているからこそ、「明日もついていけるかな」と不安になってしまうのです。
◆感覚過敏・こだわりの強さ
自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもは、感覚過敏を持っている子が多いようです。
さらに、こだわりが強く、いろんなことに対して自分なりの正解を持っています。
そのため、「心地よい」と感じる幅が普通よりも狭いのです。
「なんか違うな」と感じる頻度、場面が多い上に、そういった違和感を「怖い」という感情に繋げて、より自分自身の不安をあおってしまいます。
4.自閉スペクトラム症の特性『不安』に寄り添った登園しぶりへの対応
発達特性による不安の強さから登園しぶりが起こっているようであれば…
自閉スペクトラム症の特性『不安』に寄り添った登園しぶりへの対応を心がけましょう。
ここからは、『登園しぶり』を改善する3つの関わりのポイントをご紹介します。
◆「大丈夫かな?」に対して「大丈夫だよ」はあまり効果はありません!
不安な子どもに対する声かけとして、安心させてあげようと根拠なく「大丈夫だよ!」と親は言ってしまいがちですが…
自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもの不安には効果はありません。
むやみに「大丈夫だよ!」と返答すると、「面倒くさがっている」「気持ちを理解してくれない」と子どもが感じてしまうこともあるため、むしろ逆効果!
子どもが不安そうにしている時は、しっかり話を聞くところから始めましょう。
「何が不安なの?」と直接的に聞いて答えられるお子さんはそれでもよいですが、漠然とした不安を抱えている場合や、まだ上手く気持ちや考えを言葉にできない子は返答できないこともあります。
そういう時には、「何か助けてほしいことある?」、「ママから先生に伝えておいた方がいいことはある?」などと聞いてあげるとよいでしょう。
◆具体的なスケジュールを教えてあげる
わからないことが多いほど、不安は大きくなっていきます。
「わからない」を「わかった!」に変えてあげることで不安が軽減できるので、ママがわかる範囲で保育園での1日のスケジュールを教えてあげましょう。
もし、できるようであれば、先生と連携して大体のスケジュールを把握できるようにしておくと良いと思います。
特に、何が終わったらママがお迎えに来るのかを具体的に伝えておいてあげると安心でき、「それまで頑張ろう!」と思えるのでオススメです!
◆普段から肯定的なコミュニケーションを心がける
発達障害グレーゾーンの子どもは、独特の感性を持っていたり、少し不器用だったりするので、「自分だけみんなと違う」、「みんなができることが自分にはできない」と感じる場面が多いのです。
だからこそ、自分に自信を持つことが難しい傾向があります。
まずはママがありのままのその子を受け入れ、肯定してあげることが大切です。
できていないことには目をつむり、できていることをこまめに褒めてあげてください。
当たり前にしていることを一つ一つ褒めてもらえると、子どもは「できることがこんなにあるんだ!」と自信を持つことができます。
また、小さな成功体験を積むことで、ネガティブな記憶を薄れさせるという効果も期待できます。
5.発達特性に合った対応で不安が和らぎ、登園しぶりをしなくなった我が子の様子
毎晩、毎朝、「明日、保育園大丈夫かな…。」と口癖のように何度も言っていた息子でしたが、発達特性に合った対応をしていくと次第に不安が和らいでいきました。
今では、ほとんど不安を口にするということがなくなっただけではなく、「明日は〇〇をするんだって先生が言ってた!楽しみ!」と自分で見通しを持ちながら楽しんでいる様子も見られるようになり、大きな成長を感じています。
自信は安心できる環境でしか育ちません。
そして、自信を持つことでしか不安を根本から解消することはできないのです。
ママだからこそ、子どもに安心を提供し、自信を育ててあげることができます!
ぜひ、適切な対応を積み重ね、毎日不安な人生ではなく、毎日楽しい人生を選択させてあげてくださいね!
執筆者:中谷 そら
発達科学コミュニケーション トレーナー