「うるせー」「黙れ」「死ね」。
わが子からそんな言葉を向けられると、
お母さんの心は一瞬でこわばりますよね。
親に向かってその言い方はないでしょ。
今ちゃんと言わなきゃ。
放っておいたら
もっとひどくなるかもしれない。
そう思って、
つい正しいことを伝えたくなります。
「そんな言い方しないで」
「人が傷つく言葉は言っちゃダメ」
「ちゃんと話しなさい」
言っていることは、
親として何も間違っていません。
それなのに、なぜか
言えば言うほど子どもは荒れる。
説明すればするほど
「うるせー」が返ってくる。
最後はお母さんの方が
言葉に詰まって、黙ってしまう。
私も、息子の暴言に
苦しんだ時期がありました。
「うるせー」「黙れ」「死ね」が
飛んでくる毎日の中で、私は
「私が何か言わないとこの子は動かない」
と思い込んでいました。
このまま続いたらどうなるんだろう。
止め方もわからなくて不安で
たまりませんでした。
そのときの私は、これを
「反抗期だから」で片づけていました。
中学生だから。
思春期だから。
反発する時期だから。
そう思って耐えようとしていました。
けれど、あとから気づいたんです。
私は、見る場所をまちがえていた、と。
私が見ていたのは、
暴言の言葉そのものでした。
本当に見るべきだったのは、
その言葉が出る前に、
子どもの脳がどんな状態なのかでした。
私が見ていたのは、暴言の言葉だけでした
あのころの私は、
息子の言葉と態度ばかり見ていました。
ひどい言い方。
荒い態度。
無視。
反発。
物に当たる。
何度言っても動かない。
目に見える行動だけを見ると、
親としては直したくなります。
親にそんな口をきいちゃいけない。
ルールは守ってほしい。
ゲームばかりじゃ困る。
学校のことも心配。
どれも、親として大事なことでした。
けれど、問題は
そこだけじゃなかったんです。
大事なのは
「私の言葉が正しいかどうか」
ではなく、
「今この子は、その言葉を
受け取れる状態だったか」
でした。
私は、ここを見ていませんでした。
そんなこと、考えたこともありませんでした。
どんなに正しい言葉でも、
子どもが受け取れる状態でなければ
入りません。
それどころか、
「責められた」
「否定された」
「またか」
「どうせわかってもらえない」
そんな感覚だけが
強く残ることがあります。
そして、その防御反応として
暴言が出ることがあるんです。
つまり、暴言は
「性格が悪いから」「反抗心があるから」
だけで片づけられないことがあります。
正論が届かない子は、聞く気がないのではありません
子どもが暴言を言うと、
親はこう感じます。
聞く気がない。
わざと反発している。
親をなめている。
性格がきつくなった。
たしかに、そう見える場面もあります。
でも、たくさんの親子を見てきて思うのは、
正論が届かない子は
「聞く気がない」のではなく
「聞ける状態じゃない」ということです。
学校でがんばっている。
友達関係で緊張している。
家では注意されることが増えている。
好きなことまで否定される。
失敗が重なっている。
自分で選べる余白がない。
こういう状態が続くと、
子どもは親の言葉を落ち着いて
受け取る前に、
まず自分を守ろうとします。
親は「大事なことを伝えている」つもり。
子どもは「また責められた」と感じている。
ここにズレが生まれます。
このズレに気づかないまま言い続けると、
負のループが強くなっていきます。

このループを止めるには、
言い方を変えるだけでは足りません。
見る順番を変える必要があります。
暴言を見る前に、状態を見る。
言葉を正す前に、受け取れる状態かを見る。
ここが、親子関係を立て直す入口です。
中学生の暴言は「わかってほしい」の裏返しのことがあります
ここは誤解してほしくないところです。
暴言を許す話ではありません。
人を傷つける言葉は、
望ましいものではありません。
家族だから何を言ってもいい、
という話でもありません。
けれど、暴言の言葉だけに反応していると、
その奥にある子どもの
状態が見えなくなります。
外ではいい子なのに、
家では荒れる子がいます。
学校ではがんばっている。
塾でも問題ない。
先生からも
「特に困っている様子はありません」と
言われる。
それなのに家では、
ゲームをやめる声かけひとつで爆発する。
ドアを蹴る。
物に当たる。
お母さんにだけ強い言葉をぶつけてくる。
この時、お母さんは思います。
なぜ私にだけ?
私が甘いから?
なめられているの?
そう感じるのは自然なことです。
けれども別の見方をすると、
家でしか崩れられない子もいます。
外で頑張って、家で感情があふれる。
言葉にできない不安や疲れが、
暴言として出てくる。
本当はわかってほしいのに、
うまく言えない。
そんな状態の子どもに、
さらに正論を重ねると何が起きるか。
「わかってほしい」が、
「もうわかってもらえない」に
変わっていきます。
だから、見るべき問いは、
この子は反抗しているのか。
だけではありません。
「この子は今、受け取れないくらい
いっぱいいっぱいなのかもしれない」
この問いを持つだけで、
親の反応は変わります。
親が最初にやめる3つ 説明・反省・勝ち負け
ここでも誤解してほしくないのは、
お母さんが伝えてきたことが全部間違いだった、
という話ではないことです。
ズレていたのは、内容ではなく順番です。
受け取れない状態の時に正論を重ねると、
正しさではなく
「責められた感じ」だけが残ることがあります。
だから最初に整えるのは、
言葉の中身より、届ける順番です。
暴言が出た時、
親が最初にやめることは3つです。
その場で反省させようとすること。
「何が悪いかわかっているの?」
「謝りなさい」
「親に向かってその言い方は何?」
そう言いたくなる場面ほど、
子どもは受け取れる状態ではないです。
説明し続けること。
わかってほしい。
伝えないともっと悪くなる。
このままでは困る。
だから、親は説明します。
受け取れない状態の子に説明を重ねると、
内容よりも「圧」だけが残る
ことがあります。
言い負かそうとすること。
親が勝とうとすると、
子どもも負けまいとします。
親子の会話が、
いつの間にか勝ち負けになります。
ここで大事なのは、
親が負けることではありません。
勝負から降りることです。
たとえば、
「そうなんだね」
「今はそのくらい嫌なんだね」
「話せる時でいいよ」
このくらいで止める。
短く切る。
その場で決着をつけない。
これは何もしないことではありません。
順番を変えているのです。
そして、ここでもうひとつ、
私自身が振り返って
気づいたことをお伝えします。
なぜ私たちは、
こんなにも子どもを正そうとしてしまうのか。
それは、「親の不安」を減らそう
とする関わりだったのだと思います。
子どもの不安を減らそうとする関わりが
「過保護」だとしたら、
親の不安を減らそうとする関わりは
「過干渉」。
過干渉は
子ども思いのお母さんほど陥りやすい
関わり方なのです。
私自身、子どもが心配と言いながら、
実は子どものことを
信じきれていませんでした。
だから、正そうとし続けていました。
関わり方の順番がちがうだけだったのです。
正す前に、状態を見る。
説明する前に、受け取れる状態かを見る。
動かす前に、親の反応を整える。
ここから、親子関係は変わり始めます。
親子関係立て直しは「悪化しなかった」から始まります
関わりを変えても、次の日から
暴言がゼロになるわけではありません。
ここで多くのお母さんが焦ります。
また言われた。
やっぱり変わらない。
私のやり方がちがうのかな。
そう感じる日もあります。
でも、現場でずっと見てきて思うのは、
どのご家庭も、
いきなりバトルがゼロにはならない
ということです。
ならないんですけど、
よく見ると、ちゃんと変わっているんです。
前は2時間続いたバトルが、
30分で終わっている。
先週は3日続いたのが、
今週は2日空いている。
お母さんが、最後まで言い返さずに
止まれている。
子どもが、自分の部屋に行って
落ち着けるようになっている。
翌朝、何事もなかったように
話しかけてくる。
ご本人は気づいていないことが多いです。
「まだ暴言があるんです」と
おっしゃることもあります。
でも、よく見ると、
長さが短くなっている。
間隔が空いている。
お母さん自身の止まり方も変わっている。
私はこれを
「悪化しなかった成功体験」と呼んでいます。
大きく良くなることだけが
前進ではありません。
負のループを強めなかった。
親が言い返さずに止まれた。
子どもが戻ってくる余白が残った。
そこに、大きな意味があります。
「悪化しなかった日」に
気づけるようになると、
子どもを見る目が変わります。
「まだ暴言がある」ではなく、
「前より短く終われた」
「今日は私が言い返さずに止まれた」
「この子は、戻ってくる力を残していた」
そう見えるようになっていきます。
「反抗期だから仕方ない」
「そのうち落ち着く」と、
ただ耐えるだけでは、
親子関係がさらに
こじれていくことがあります。
暴言を止めることだけを、
最初のゴールにしないでください。
まず見るのは、言葉のひどさではなく、
今この子が受け取れる状態かどうかです。
正す前に、状態を見る。
説明する前に、親の反応を整える。
この順番に変えることが、
立て直しの最初の一歩です。
完璧にできなくて大丈夫。
迷う日があっても、
立ち戻る場所さえあれば、
親子関係はゆっくり変わっていきます。
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