春休みの旅行を楽しみにしていたはずなのに、直前で「行かない」と崩れる不登校の子。その理由は気持ちの問題ではなく、先の見えない不安=予期不安にあります。脳の仕組みから親の関わり方を解説します。
1.不登校の子が旅行直前に「行かない」と崩れるのはなぜ?気持ちだけでは説明できない“不安の正体”
「行きたいって言っていたのに、どうして急に?」
不登校の子と旅行を計画したとき、多くのお母さんが直面するのがこの場面。
楽しみにしていたはずなのに、前日や当日になって突然「やっぱり行かない」と崩れる。
その姿を見ると、
本当は行きたくなかったの?
気分で言っているだけ?
また振り回されているの?
そんなふうに感じてしまうかもしれません。

でも実は、この「行かない」という言葉は、単なる気持ちの変化ではないことがあります。
その背景にあるのは、先の見えないことに強く反応する「予期不安」です。
そしてこの不安は、励ましや説得だけでは解消されません。
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2.不登校の子が直前で崩れるのは、やる気ではなく「予期不安」が強いから
予期不安とは、まだ起きていないことを先回りして不安になる状態のことです。
たとえば旅行の場合、
人が多いかもしれない
長く待つかもしれない
疲れるかもしれない
思い通りに動けないかもしれない
こうした「かもしれない」が積み重なり、脳が危険を感じてしまいます。
不登校の子は、これまでの経験の中で「予測できない状況」に多くのエネルギーを使ってきたことが少なくありません。
そのため、楽しいはずの旅行であっても、先が読めない状況が増えるほど不安が大きくなります。
このとき脳では、扁桃体というストレス感知センサーが強く反応し、
「危険かもしれないからやめておこう」
とブレーキをかけます。

つまり、「行かない」という言葉は、やる気がないのではなく、不安が大きすぎて動けなくなっているサインであることがあるのです。
3.「行かない」は本音じゃなかった|不安が落ち着いた瞬間に起きた変化
実際に、こんなエピソードがありました。
NicottoProject講座を受講中のHさん。
お兄ちゃんの卒業旅行で、家族でユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行く予定の前日。
夜に息子さんが突然こう言いました。
「明日は行かない!」
楽しみにしていたはずの旅行。
息子さん自身も「行きたい」と言っていたのに…
ここでやめるの?と戸惑う場面でした。
でも、お母さんのHさんはすぐに説得はしませんでした。
まず、手をつないで
「そう思っているんだね」
と気持ちを受け止めました。

そして、子どもが話し出すのを待ちながら、
不安を小さくするように、こう伝えていきました。
「お兄ちゃんと別々に行動してもいいよ」
「ドンキーコングは乗らなくてもいいよ」
「混んでいたらマリオカートに行こうか」
この関わりで意識したのは、ただ優しくすることではありません。
手をつなぐことで「ひとりじゃない」という安心
気持ちを受け止めることで「否定されない」という安心
選択肢を示すことで「どうなるか分からない」を減らす
つまり、予期不安を具体的に下げてあげたのです。
その結果、息子さんは30分ほどして眠りにつくことができました。
張りつめていた状態がゆるみ、脳が落ち着いていったのだと思います。
そして翌日、ユニバ本番の日を迎えることができました。
さらに、帰ってきた次の日には、息子さんの口から「楽しかったー」という言葉が聞けました。
その言葉を聞いて、お母さんは「連れて行ってよかった!」と思えたそうです。
ここで大事なのは、「頑張らせたから行けた」のではないということです。
不安が落ち着いたからこそ、動ける状態に戻れたのです。
▼この子が動き出したのは
特別な子だったからではありません。

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4.「行かない」と言われたときに親ができる、予期不安を下げる3つのステップ
では、同じような場面で親はどう関わればいいのでしょうか。
ポイントは、気持ちを変えさせることではなく、不安を下げることです。
① 安心を伝える
手をつなぐ、そばにいる、落ち着いた声で話す。
これは「ここは安全だよ」というサインになります。
② 気持ちを否定しない
「そう思っているんだね」と受け止めることで、
子どもは不安を隠さなくてよくなります。
③ 見通しを渡す
全部その通りにしなくてもいい
途中で変えてもいい
別の選択肢もある
こうして未来を小さく予測できる形にすると、
脳は安心しやすくなります。
大事なのは、「こうしなさい」と決めることではなく、
「こういう選び方もあるよ」と選択肢を渡していくことです。

まとめ:「行かない」は気持ちの問題ではなく、不安が大きすぎるサインかもしれない
不登校の子が旅行の直前で「行かない」と崩れると、
気持ちが変わったように見えるかもしれません。
でも実際には、楽しみな気持ちと同時に、
大きな不安が押し寄せていることがあります。
そしてその不安は、気合いや説得では動かせません。
今回のように、
安心できる関わり
否定されない環境
見通しが持てる選択肢
これらがそろうことで、不安は少しずつ落ち着き、
子どもはまた動ける状態に戻っていきます。
「行かない」と言われたとき、
それをそのまま受け取るだけでなく、
その奥にある「不安の正体」を見てみてください。
見方が変わると、関わり方も変わります。
そして、子どもが動き出すタイミングも、少しずつ見えてきます。
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執筆者:すずき真菜
(発達科学コミュニケーションアンバサダー)




