1.「子どもから離れたい」とすら思った日々
思春期は親子関係が難しくなる時期。とくに男の子の暴言・暴力を伴う反抗にはお母さんが精神的にも体力的にも追いつめられてしまうことが少なくありません。
このような大変な時期を乗り越え、お子さんとふたたび良い関係を築くことができた発コミュトレーナーにお話を伺いました!
上坂さんの息子さんは、1人っ子で中学1年生。とても仲が良く、理想的な親子関係を築かれているように見えますが、実は今のような関係になるまでに大変な時期もありました。
大変だった頃のお話を伺っていきます。
――息子さんはどんなタイプのお子さんですか?
息子は、好奇心旺盛で明るい子です。友達も多くて、毎日のように家に友達が遊びに来ています。
その反面、自分の気持ちを相手に伝えるのが苦手なところがあります。
――子育てではどのようなことに悩まれてきましたか?
小学校1年生の頃に「余計なことを言ってしまうことがある。いつも一言多い。」と担任の先生に言われたことがありました。
私も対応しなければと思って、学校のスクールカウンセラーのところに通って箱庭療法をしてもらいました。他にも、大学病院に行ったり、民間のカウンセリングに行ったりと、色々やりましたね。
たまたま、クラスのお母さんから「WISC を受けると子育てしやすくなるよ。」と言われたことがきっかけで検査を受けました。
※WISC 検査とはIQ(知能指数)と「言語理解」「知覚推理」「処理速度」「ワーキングメモリー」の 4 つの指標を数値化する検査のこと
――WISC 検査を受けられたのですね?検査ではどのようなことがわかりましたか?
息子の場合、知能指数が高く、どの値も平均より髙いのですが凸凹がありました。自治体で受けたのですが、「席は前の方にする」というコメントだけで検査結果について説明はありませんでした。
スクールカウンセラーにも検査結果を見せたのですが「これは大変ですね…」と言われただけで、どこからも詳しい説明をしてもらうことはできませんでした。
だから私も、検査を受けたものの息子に対してどう接していけば良いのかわからないままだったんです。
息子は家では言うことも聞くし、とくに困ったこともなかったので、私も療育に通わせる意味や、それをすることで息子がどうなるのか、わかっていないまま時が過ぎていった感じです。
――1番大変だったのは、いつですか?
小学校4年生の時の担任が気難しいタイプの先生でした。ベテランなのですが、校長先生の指示にも従わないような我が道を行くタイプの先生でした。息子とも相性が合わなくて…。
息子の方も授業中に「それ、さっきも言った」 「同じことばかり言わないで先に進んでよ」と言ってしまったり。
毎日先生との言い合いが続 き、4年生の最後、先生と激しく衝突してしまい、気持ちを抑えられなくなって暴言を吐きながら椅子を蹴るなど学校で暴れてしまいました。
そのことをきっかけに、家でも暴言を言ったり、壁を蹴ったり物にあたるようになっていきました。新築したばかりの家の壁に穴が空いたこともあります。学校に行けない時期もありました。
中学校受験を考えていたのに、勉強もしなくなり塾にも習い事にもいかなくなり、どう接して良いのか全くわからず、その頃は息子の将来に不安しかありませんでした…。
家では壁に向かってずっとヘッドフォンをしながらパソコンをしていて、まったく会話にならない状態で。
これには私も参ってしまって、私自身も過呼吸になったり体調に異変があらわれ始め、息子と⼀緒に過ごすのが⾟い、子育てやめたい、なんてことまで思ってしまっていました。
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2.親子関係がガラッと変化した秘訣は「会話」にあり!
上坂さんのお話から、お母さんも息子さんも、ともに辛い思いをされていた様子が伝わってきました。
その状況からどのように親子関係を改善していったのかお話を伺っていきます。
――本当に苦しい状況でしたね…。その状況から抜け出せたきっかけはありましたか?
コロナが流行り始めて、塾や学校に行かなくて良い状況になった時に、息子が学校に行くのかどうなのか気になってソワソワしていた私の気持ちが落ち着き始めたんですよね。
息子のため、ということもあり、保護犬を飼うことを決めたり、前向きに物事を考えられるようになりました。
そのうち「息子をこのまま見てみぬふりしてはいけな い」という気持ちになって、インターネットで検索したところ、発達科学コミュニケーション(発コミュ)を知りました。
そこから徐々に息子の家での様子も落ち着き始めました。
――発コミュを始めて、上坂さんの息子さんへの対応はどのように変わりましたか?
まず、ガミガミ言うことが減りました。以前は、ふり返ってみると、私の息子への声かけは、指示や注意がほとんどだったなと思います。
勉強ができる子だったこともあり、私もできて当たり前という意識でいて、テストで 90 点とってきても、できなかった問題を見て「なんで、これができないの?」と言ってしまっていました。
息子は、本当は「90 点もとったんだね!」と言って欲しかったんですよね。
発コミュを学んで、息子のようなタイプの子に具体的にどうすれば良いのかがわかったことが助けになりました。
あとは、息子が自分の気持ちを言葉にするのが苦手だったので、会話する中で気持ちに名前をつけてあげるようにしていました。
――気持ちに名前をつけるって、どんな感じでされていたのですか?
息子の気持ちが苛立っているように見えるときに「今、目が怒ってるように見えるよ。イライラしているのかな?」とか息子が感じている気持ちを私が代わりに言葉にしていきました。
息子のようにイライラして感情的になってしまう子は、自分の気持ちをどう伝えて良いのかわからないことが多いんですよね。
会話をする中で息子の感情を、私が代わりに言葉にして教えてあげるということをくり返ししてきました。
――なるほど。息子さんの気持ちをお母さんが言葉にしてあげたんですね!息子さんはどのように変化していきましたか?
私の対応が変わったことで、息子は徐々に言葉で気持ちを伝えられるように変わってきました。
以前のつらかった時のことも「あの時は、こういう気持ちだったんだよ。お母さんが、ああだこうだ、言ってくるからイヤだった。」とか過去のこともふり返って話してきたり。
「僕はね、こういう風に言って欲しいんだよ。これは言われると傷つくから、こう言って欲しい。」とか、自分がして欲しい対応をちゃんと言葉にして私に伝えてくるように変わりました。
――すごい変化ですね!親子関係もガラッと変わりましたよね?
以前は、私はまったく子育てを楽しめていませんでした。
でも、今は息子との会話が楽しいですよ!成長したこともあると思いますが、語彙が豊富になってきて、こちらが何か言った時に息子が返してくる言葉がホントにおもしろいんです!
パソコンが得意なので、私がパソコンのことで困っていると助けてくれたり優しくなりました。
以前はイライラしてそれを私にぶつけてくることが多かったのですが、それもなくなって、協力して欲しい時は、私が説明すると状況を理解して力を貸してくれるようになりました。
あとは、家の中ですれ違いざまに、わざとドーンとふざけてぶつかってきたり、なんだか甘えん坊になった感じですね。
――「子育てが楽しい!」と思えるのは素晴らしいですね。思春期の親子関係で悩んでいる方にアドバイスありますか?
まずは子どもをまるっと受けとめてあげることが大切だと思います。
例えば、お子さんが学校に行けない状況だったとしても、子どもは自分でも行った方がいいということは充分わかっているんですよね。
そこで、お母さんが「どうして行かないの?ダメじゃない?」と言うと、子どもも「お母さんはわかってくれない」と否定されたように感じてしまいます。そんな時はお子さんに「どうしたいの?」と聞いて気持ちを言葉にする手伝いをしてあげると良いと思います。
語ってくれた言葉から、なぜ学校に行きたくないのかを紐解いていく感じでしょうか。
あとは今になって思うのが、親が干渉し過ぎないこと、笑顔でいることが本当に大切だなと思います。
――子どものことが心配で親はついあれこれ言ってしまいがちですが、干渉し過ぎないことも大切なポイントですよね。
それでは、上坂さんのこれからの夢を教えてください。
思春期になると、親子関係もうまくいかない時期を積み重ねてきていて、親子ともに辛い思いをいっぱいしているケースが多いと思います。
私も辛い気持ちはわかるので、自分の経験を生かして、悩んでいらっしゃる方のお力になれたらいいなと思います。
――息子さんには、将来どのような大人になって欲しいと思いますか?
息子には「これだけは人に負けない」という得意なものを早く見つけて、そこを磨いていって欲しいですね!
自分だけの強みを見つけて、息子らしく生きていって欲しいと思っています。世間で言われる“普通”には私はまったくこだわってないです。
――上坂さん、貴重なお話をありがとうございました。
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3.思春期からでも、子どもの感情コントロール能力は親子の会話で育ちます!
上坂さんのお話から、お子さんが思春期になって、うまく気持ちを言葉にできず黙ったままだったり、時にそのイライラを暴言という形で表してしまったり、大変な状況だったことが伝わってきました。
しかし、そこから上坂さんはあきらめずに、お子さんの気持ちに寄り添って共感してあげるコミュニケーションを続けて、親子関係を改善されてきました。
自分の気持ちを相手に適切に伝えられる力は、社会の中で生きていく上で必要な力です。
この力が育っていないと、ネガティブな感情を自分の中に閉じ込めてストレスを抱えたままになってしまったり、ときに暴言・暴力という不適切な形で出てしまうこともあります。
自分の気持ちを相手に伝わるように表現できるようになるためには、子どもの一番近くにいる親が「悲しかったんだね」「くやしい思いをしたんだね」などとネガティブな感情も否定しないで言葉にして共感してあげることが大切です。
親子関係が悪化してしまった思春期の難しい時期からでも、会話の中で子どもの気持ちを表現する力を伸ばし、なんでも話せる親子関係を築いていけるのだと上坂さんのお話から学ばせていただきました。
今、お子さんが思春期で難しい状況にいらっしゃる方も、あきらめずに親子のコミュニケーションを続けて頂きたいと思います。
すぐには状況が改善しないように思えても、親が自分の気持ちを否定しないで共感してくれた体験は、かならず子どもの力になっていきます!
上坂なおこさん、facebookページはコチラ
執筆者:滝麻里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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