学校に行かない選択をした子と、お家でどの様に過ごすと良いでしょうか。不登校で不安が強く、繊細な発達障害、自閉症スペクトラム(ASD)の小学生のお母さんに、お家でお子さんの才能をグングン伸ばす秘訣についてお話をうかがいました。 |
【目次】
1.学校に行かない選択をした子のママがお家でやった発達支援とは?
①家の中で運動!?
②学習面のこと
③好きなことを伸ばす
④身体を使うことが苦手な子でもできるお片づけ法
2.川本さんが伝えたい、発達障害自閉症スペクトラム(ASD)タイプの子どもを育てるママの不安を解消するためのヒント
①発達科学コミュニケション(以下発コミュ)の対応って?
②対人関係・コミュニケーション力の不安について
③学習・勉強面の不安について
④将来トライしたいこと
1.学校に行かない選択をした子のママがお家でやった発達支援とは?
発達科学ラボのトレーナーとして活動している川本さんの息子さんは現在小学4年生です。
自閉症スペクトラム(ASD)でアスペルガーの孤立型と言われています。
前回の記事では、川本さんが息子さんの不登校を受け入れ、親子のよい関係を築くための工夫をしたことで、息子さんは自信が回復してきました。
前回記事はこちらです。
ここでは川本さんが行った、ご自宅での発達支援の方法をご紹介します。
◆①家の中で運動!?
――お家の中の過ごし方で工夫していることやアイディアをお聞かせください。
「息子は低緊張(※)で体力もないですし、もともと運動するのも嫌なので、なんとか家のなかで楽しめることがないか考えました。
そこで思いついたのが卓球です。テーブルに取り付けて出来る卓球セットを買ってみんなでやっています。」
※低緊張とは:自分の体を支えるための筋肉の張りが弱い状態のこと。
――お子さんは楽しんで参加していますか?
「最初は参加しなかったのですが、他の家族がピンポンやっているのを見ていて、ラケットを渡したら挑戦する気になったようです。
今でも本人が興味を持ったタイミングで家族の輪に混じって卓球を楽しんでいます。」
◆ポイント解説
川本さんはお家の中で楽しく息子さんが活動できるよう工夫されたのですね。
さらに、他にも色々な工夫をされているのだそうです。それはどのようなものなのでしょうか?
このあとも川本さんがご家庭で取り入れた工夫をどんどん紹介します!
◆②学習面のこと
――学習に関してはお家で何かサポートされていますか?
「進研ゼミのチャレンジのタブレット学習をしています。
タブレットの方がうちの子には理解しやすいみたいです。本人はそれでわからないところはないみたいです。
私としては勉強が7、8割わかっていればいいと思っています。
勉強ばかりをさせようとすると、本人にも負担になると思うので、今は、気分転換に1日1回、勉強の時間をとっています。」
◆③好きなことを伸ばす工夫
――他にどんな取り組みをしているかもう少し詳しく教えていただけますか?
「長男は工作が大好きなんです。
パソコン操作を教えて色んな工作の情報が検索もできることを伝えました。
すると、工作のページを自分で検索をして、作りたいものを探して取り組んでいます。
牛乳パックの工作にはまっていた時期もありました。 ロボットを作ってみたり、自動販売機を作ってみたりしていますし、段ボールで工作をしたりもしていますね。
今は電池ボックスとか、電球とか、モーターが欲しいと言っているので、そういうのを使った工作にチャレンジしたいと考えているみたいです。
自分でやるとなると計画を立てて、必要なものを買わなきゃいけないし、予算があるし、段取りが必要になるし、いい経験だなと思います。
割と遠慮して言えないタイプなのですが、工作になるとこれが欲しくて、いくらかかるのだけれどという交渉が必要になってくるので、いいことだと思ってみています。
低緊張があって、疲れやすくてあまり長い時間はできないのですが30分くらい集中して座れます。
パソコン操作で机に向いて椅子に座る時間も作れるのでいいなと思っています。」
◆④身体を使うことが苦手な子でもできるお片づけ法
――その他、お家で頑張って取り組んでいることはありますか?
「2つのお手伝いを決めて、やってもらっています。
1つが、洗濯して乾燥したものを朝、仕分けをするということ。
もう1つは床をクイックルワイパーで拭くということです。
1つ目の洗濯の仕分けは、家族人数分のかごがあって、それらを決められたところにしまう、というものです。
5分くらいで終わる作業です。
「5分で終わる」「片づけたら終わる」というのがわかりやすいので、取り組みやすいようです。
それほど難しくないので本人への負荷も少なく、役に立てるというのがポイントかもしれません。
もう1つの床掃除は、本人にアレルギー体質があって、将来に向けて、ほこりを気にする習慣を身に着けてほしくて取り組んでもらっています。
仕上がりはうるさく言わずに、習慣化することを目標にしてやってもらっています。」
――いいですね!お手伝いのメニューはどうやって決めましたか?
「最初はあれこれ提案してみましたが、全部やりたくないと言われました。
でも、やってほしい理由や思いを伝えて、本人の確認を得てやってもらっています。
時々、しんどい時もあるみたいなので、ママへのヘルプ要請もOKにしています。
洗濯物の場合『7時20分までに言ってくれたら手伝えるよ』と伝えてあるので、その時間に『一緒にやってほしい』と言ってきたら、半分ずつやって負荷の増減をしています。
どうしてもやりたくない日もあるので、その時は見ないふりして仕事に行き、帰ってきたときの元気さをみて、声かけを選んでいます。
元気に工作などをしている時は、声をかけてお手伝いの続きをやってもらいますし、本当にしんどそうなときは、そのままスルーします。」
◆ポイント解説
お子さんも役割があると、家族の役に立っているという実感があって自信につながっていきますね。
川本さんは、お子さんの様子をみて、対応を決めているそうです。
お家でもお子さんの行動力がUPするよう、様々な工夫がされている様子が伺えました。
次からは、不登校で、発達障害の子を持つお母さんの、不安を解消するためのヒントをお伝えします!
2.川本さんが伝えたい、ASDタイプの子どもを育てるお母さんの不安を解消するためのヒント
◆①発コミュの対応って?
――発達科学コミュニケーション(発コミュ)を知って、どんな変化があったか教えてください。
「肯定的な声かけって意識しないと難しいんです。
具体的な声かけの方法を知って、それを繰り返していくことで、子どもにも変化が出るし、私自身も習慣化できました。
そうやって肯定を常に意識することができるようになりました!
特に講座の中での、具体的な場面を想定した声かけのトレーニングは参考になりました。
具体的に絵を見て『褒めポイント』を探すのですが、最初はダメなところばかり目について、褒めるところを見つけられなかったのです。
そのトレーニングで、
『否定的なポイントに注目しない』
『褒めポイントの発見方法』
を知り意識を変えることができました。」
――肯定の量は以前よりも増えましたか?
「長男に対しては肯定の量はすごく増えました。
長男は悪目立ちするタイプではないので、声かけが少なくなってしまいがちでした。
今では、不安なそぶりがあるときはすぐに気づくことができていますし、『どうした?なんかあった?』と言ってあげられています。
いっぱい声をかけてあげられた日は子どもの様子も安定しています。
あとは、子どもがゲームをやっている時にもポジティブな関わり方ができるようになりました。
私は、ゲームばかりするのが嫌だと思いつつも長男にとっては、わりと現実逃避みたいな位置づけだったので、『やめさせたいけど、やめさせられない』というジレンマがありました。
ところが発コミュをやって、ゲームをやっている時にどんな声かけをすればいいかもわかり、肯定的に関わっていったら、ゲームに傾倒する時間も減っていったので驚きました!」
◆②対人関係・コミュニケーション力の不安について
――学校に行かないことで、対人関係・コミュニケーション力に対しての不安はありませんでしたか?
「以前は学校に行かないと対人関係がなくなると思い不安に感じていました。
でも、今考えてみると、コミュニケーションでの成功体験を積んでいない子が、いくら学校に行っても、いきなりうまくできるわけではないと気づきました。
いきなり『コミュニケーション頑張っておいで』と放り出すのではなく、一番身近な存在の私とのコミュニケーションで『うまくできた!』という体験を積ませてあげる方が先決だと気づいたのです。
我が家は兄弟が3人いるので兄弟間のやり取りも含めると、安心した環境の中で、コミュニケーションの練習ができています。」
◆③学習面・勉強面の不安について
――学習・勉強に対する不安はありませんでしたか?
「長男は周りの刺激が強すぎると集中できない、気が乗らないなどの特性があります。
以前は、学校でのノートやプリントをごちゃごちゃに書くこともあって、学習障害を疑ったこともありました。
ところが今、家で学習に取り組む様子をみると、落ち着いて取り組んでいますし、字もスムーズにかけています。
落ち着いた環境・刺激が少ない環境なら、勉強もスムーズにできると分かりました。
なので、学校で無理に勉強をさせるよりも、息子に合った環境で頑張れることのほうが大切だと、前向きに捉えています。」
◆④将来トライしたいこと
――最後にお子さんの良さを伸ばすために将来に向けてトライしてみたいことはありますか?
「息子はプログラミングが得意で、ロボット教室にも通っています。
最近は、難しいことをやり遂げる力がついてきているので、そういうところを生かして仕事ができる道を、親として考えてあげられるようになりたいと思います。
もう1つは、私が、発コミュのトレーナーとしてトライして、起業について学びたいです。
私が起業についての知識を持っていれば、子どもがもし社会でうまくいかなくても、進路の選択肢を示してあげることができると思うんです。
会社で働く以外の方法で、世の中に貢献する方法があると知るステップの1つとして、背中を見せてあげるためにも、まずは私が経験したいと思います。
このパステル総研を立ち上げた吉野加容子さんの『自分を上手に発達させられる人は子どもを上手に発達させられる』という言葉が、心に残っています。
私が成長して、子どもの将来のことを考えようと思う原動力になっています。」
◆ポイント解説
発コミュを学んで気づきを得た川本さん。子どもを見る視点が変わり、家庭で子どもの良さを伸ばせるサポートを実施されています。
不安症状が強い息子さんが積極的に物事に取り組むようになったのは、お母さんが息子さんのペースを大事にし、相手に伝わる肯定を積み重ねてきたことがポイントだったようです。
不安が強いASDでアスペルガータイプのお子さんは、環境の変化についていくことが難しかったり、自分の気持ちをうまく表現できなかったりすることがあります。
そういうお子さんはまず、家庭が安全基地になることを感じてもらい、安心して過ごせる場所だと思ってもらうことが大切です。
安心できる環境の中で、自信をつけていくと様々なことにチャレンジすることができるようになります。
また、お母さんが新しいことにチャレンジし、イキイキする姿が子どもたちにとても良い刺激となっていて、とても素敵だなと感じました。
皆さんはお子さんが「学校にいきたくない」となった時にどのように感じますか?
きっと不安になると思います。
ですが、お母さんがお子さんの特性を理解し、お子さんのペースを大事にして、肯定していくなら、お家でお子さんの隠れた才能を引き出し、将来をワクワクして過ごせるようになりますよ。
今回の川本さんのインタビューが発達障害グレーゾーンの子で、不登校に悩むお母さんの家庭での子育てのヒントになると嬉しいです。
執筆者:山田さとみ
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)