「板書を写すのが苦手」という発達障害の子どもによくある学習のつまずきです。板書を写すことができるようになれば学習も楽になります。ここでは、楽しくワーキングメモリーを鍛える板書トレーニング「探し物ドリル」が無料でダウンロードできますよ!
【目次】
1.勉強嫌いの原因は板書を写すのが苦手かも?
2.発達障害の子どもがノートを書けない理由はコレ!
3.ワーキングメモリーを鍛える発達障害の子におすすめの「探し物ドリル」とは?
4.板書トレーニングの効果を高める秘訣
◆お母さんの対応でハードルを下げる
◆見本をしっかり覚えさせる
◆できたところにだけ注目する
◆板書を写す力を格段に伸ばす裏技
1.勉強嫌いの原因は板書を写すのが苦手かも?
「うちの子、勉強嫌いで困っているのよね…」と悩むお母さんは多いですよね。
発達障害グレーゾーンの子どもは苦手なことが多いため、
・集中力が続かない
・文字の形を覚えることができない
・読み飛ばしが多い
など、勉強のつまずき方には様々なケースがあります。
勉強嫌いな発達障害の子どもへのサポート方法はこちらでお話ししています。
中でも最近増えているのが「板書を写すのが苦手」「ノートが書けない」と言うタイプです。
実は板書を写すのが苦手だと
・ノートを書くのに精一杯で授業についていけない
・時間内に書けないことで自信を失う
・理解のない先生だと「やる気がない」と評価されてしまう
など、困りごとが大きくなりやすい傾向があります。そのため、できるだけ早く適切なサポートをしてあげることが大事です。
板書を写すのが苦手な発達障害の子どものサポート方法としては
・黒板が見やすいように席を前の方にしてもらう
・プリントを用意してもらい、手元の見本を見ながら書く
などがありますよね。
ただし、これらはあくまでサポートです。
実はサポートにプラスして適切なトレーニングを行うことで、「板書を写すのが苦手」「ノートが書けない」と言うつまずきを解消することができるんです!
そこで今回は、板書を写すのが苦手な発達障害の子どもにおすすめの板書トレーニング「探し物ドリル」を紹介します。
2.発達障害の子どもがノートを書けない理由はコレ!
板書を写すのが苦手な発達障害の子どもによく見られるのは
・時間が足りなくて書けない
・黒板とノートを交互に見ているうちに、どこを書いているのか分からなくなる
・板書を写すので精一杯で先生の話を聞くことができない
などと言う様子です。実はこれらの困りごとには
・不器用
・読み書きが苦手
・不注意傾向があるために、マルチタスクができない
・視線を素早く動かすことが苦手(跳躍性眼球運動)
など様々な発達障害の特性が大きく関係しています。
中でも板書を写すのが苦手になってしまう原因とも言えるのが、「ワーキングメモリの弱さ」です。
ワーキングメモリとは一時的に情報を記憶し、その情報を使って作業をする働きのことです。
板書を写すときは
①黒板を見て、書いてあることを一時的に覚える
↓
②視線をノートに移して、記憶したことを書く
↓
③再び黒板に視線を戻して、新しい部分を覚える
と言う作業の繰り返しですよね。
ところが発達障害の子どもはワーキングメモリが弱いために
・単語や文をまとまりで覚えるのが苦手
・黒板からノートに視線を動かした瞬間に、覚えた情報を忘れてしまう
などの問題を抱えています。
そのために一文字ずつ書き写すことになり、ノートを書くのに時間がかかってしまうのです。
さらに不注意傾向があるため、黒板からノートに視線を動かすときに周囲に関心が向いてしまい、集中して板書を写すことが難しい場合もあります。
つまり、発達障害の子どもの板書を写すことが苦手な部分にアプローチするには、ワーキングメモリを鍛えて一度に記憶できる情報量を増やしてあげるトレーニングが必要なんです。
3.ワーキングメモリーを鍛える発達障害の子におすすめの板書トレーニング「探し物ドリル」とは?
一般的な板書を写すトレーニングは、見本を見て図形や言葉のまとまりを覚え、記憶をもとに書き写すというタイプが多いですよね。
ところが、板書を写すのが苦手な発達障害の子どもを持つお母さんにお話を聞いたところ、
・字を書くことは苦手ではないが、板書を写すのは苦労している
・机に向かってワークに取り組むことを嫌がり、トレーニングが思うようにできない
ということが判明しました。
そこでパステル総研では、書き写すという作業をなくし、
・見る力を伸ばす
・記憶力を高める
ということに焦点を当てて、板書を写すが苦手な発達障害の子におすすめの板書トレーニング「探し物ドリル」を開発しました。
こちらのドリルは、見本を見ながらもしくは見本を覚えて、指定されたものを探すトレーニングです。
さらに今回の教材はプリント教材ではなく、パソコンやタブレット、スマホで取り組む教材ですので、ゲーム感覚でトレーニングができます。
ワーキングメモリが弱い発達障害の子どもにとって、記憶力を鍛えるトレーニングは負荷が高く、嫌がる可能性もあります。
ですから今回は、「子どもが楽しみながら取り組める」ことをテーマに
・イラストではなく写真を使うことで子どもの興味を引きやすい
・ブロックや食べ物、文房具など身近な素材を使用
・不注意傾向がある子どもでも安心の、上下に問題を記載
などの工夫がされています。
さらに、見本が写真のものと言葉のものがあるのは
・写真→じっくり観察することで「見る力」を鍛える
・言葉→単語や文をまとまりとして覚える練習をする
と言う狙いがあります。
初級は問題(見本)と課題(全体像)が同じページに、中級と上級は問題と課題が別々のページに記載されており、記載順に難易度が上がっています。
ただし、ブロックが好きな子、食べ物が好きな子など子どもによって関心があるものは違いますので、お子さんのやりたいところから取り組んでいただいて大丈夫ですよ。
4.板書を写すトレーニングの効果を高める秘訣
板書トレーニングの効果を高めるためには
・楽しみながら取り組むこと
・お母さんの対応で「できた!」と言う成功体験を積むこと
が大事です。
ですからまずは、普段の親子のコミュニケーションがスムーズにすることが必須です。
ここでは板書を写すのが苦手な発達障害の子どもにおすすめの、ドリルの取り組み方を4つお伝えします。
◆お母さんの対応でハードルを下げる
1つ目は、お母さんの対応でハードルをぐんと下げてあげることです。
先ほどもお話ししたように、ワーキングメモリが弱い発達障害の子どもは
・覚えること
・たくさんの情報の中から大事なものを探すこと
に苦手意識を持っていることが多くあります。
ですから、お母さんの声かけで「ちょっとやってみようかな」と思わせることが大事なんです。
例えば
「これ、お母さんもなかなかできなかったんだけどね…」
「これ難しいから、できたらすごいやつなんだけど…」
などと一言付け加えてあげましょう。
また、2つ以上の見本を同時に覚えたり探すのが難しい場合もあると思います。
そんなときは「まずはこれを覚えようか」と1つずつ取り組むのもOKです。1回で完璧に覚えようとせずに、忘れたら見本のページに戻って大丈夫ですよ。
◆見本をしっかり覚えさせる
2つ目は、見本をしっかり覚えさせることです。
発達障害の子どもはじっと見ることが苦手です。また、スマホの操作を子どもがやりたがる場合、きちんと覚えていないのにすぐにスクロールしてしまうこともあるかもしれません。
と言っても「ちゃんとよく見なさい!」と叱ってしまっては、トレーニングが台無しです。
そこでパッとしか見本を見ない子どもには、「この写真は何かな?」「ここに何て書いてあるかな?」と問いかけることで、問題を声に出させましょう。
「赤い花」「黄色いバス」などと口に出すことで見本の色や形に注目して観察したり、覚えることにつながりますよ。
お母さんが代わりに読んであげても大丈夫です。
また、「正方形」がわかりにくい場合は「小さい四角」「真四角」など子どもがわかりやすい言い方に変えてあげてくださいね。
◆できたところにだけ注目する
そして3つ目は、できたところにだけ注目してしっかり褒めることです。
完璧にできなくても、1つでも見つけられたら「もう見つけたんだね!」「よくできたね!」としっかり褒めてあげてくださいね。
また、「がんばったね!カード」にシールを貼ったり色を塗るのもおすすめですよ。
◆板書を写す力を格段に伸ばす裏ワザ
4つ目は、パソコンとスマホのダブル使いで板書を写す力を伸ばすことです。
最初にお伝えしたように、板書を写すのが苦手な場合には黒板とノートの間で視線の移動がうまくできないことが大きく関係しています。
ですからパソコンとスマホのダブル使いで、視線を大きく動かすトレーニングを行うと効果的なんです。
以下の方法が使えるのは、問題(見本)のページと課題(全体像)のページが分かれている中級編と上級編です。
やり方は
①パソコンとスマホのそれぞれに教材をダウンロード
②お母さんがスマホの画面で、問題(見本)のページを見せる
③子どもがパソコンの画面で、課題(全体像)のページから指定されたものを探して指差しする
という方法です。
詳しい取り組み方はこちらの動画で紹介しています。
こんな風に取り組むと、実際の板書を写す場面で必要とされる「視線の移動をスムーズに行う力」を格段に伸ばすことができるんですよ。
いかがでしたか?
板書を写すのが苦手な発達障害の子どもにおすすめのドリルの取り組み方は
・お母さんの対応でハードルを下げる
・見本をしっかり覚えさせる
・できたところにだけ注目する
・スマホとパソコンのダブル使いでトレーニングを行う(中級・上級)
この4つです。
コツを覚えて、親子で楽しみながら取り組んでくださいね!
執筆者:森あや
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)