発達障害の学習に影響する「不注意」とは? <その2:集中>

「不注意」の症状は、注意欠陥多動症(ADHD)に強く生じる症状。 自閉症スペクトラムや学習障害(LD)のお子さんにも見られます。今回は「不注意」について紹介し、症状を目立たなくする方法をお伝えします。 今日のキーワードは「集中」です!
 

【目次】

 

1.発達障害・グレーゾーンの“不注意”でよく言われる、「注意」と「集中」の違いは?

 
 
発達障害・グレーゾーンの「不注意」の対応をシリーズでお伝えしています。 今日はその2、キーワードは「集中」です!その1、「注目」も併せてお読みくださいね!
 
 
発達障害・グレーゾーンの「不注意」の症状について触れるとき、「注意」という言葉と、「集中」という言葉の2種類が使われます。
 
 
この差を説明するのは難しいのですが、
 
 
・注意=1つの対象物に意識の焦点を合わせること
 
・集中=その注意を持続し続けること
 
「注意」は、「注目」と言い換えた方が分かりやすいでしょう。
 
 
集中とは、やるべきことが終わるまで、注目をずーっと向け続ける状態です。
 
 
例えば、誰かと会話をしているとき。普通なら、相手に注意を向けてさらに相手が話し終えるまでその注意を持続します。
 
 
しかし、相手が話し終わるまで注意を持続することができなかったら…?
 
 
そう、「相手の話に割って入る」おなじみの不注意症状ができ上がります。一瞬注意を向けるのは簡単ですよね。でも、一度向けた注意をずーっとキープするのは大変です。
 
 
特に、その対象に興味がない場合や、もっと別に面白そうな物を見つけたときはすぐに注意がそれてしまいます。
 
 
集中とは、「注目をキープすること」なんです!
 
 
※ 注目をキープしています…。
 
 
では、集中できないとどうなってしまうのでしょうか?
 
 
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2.不注意の症状のある人が「集中」できないと、どうなる?

 
 
集中できないと、どんな困ったことが起こるのでしょうか?
 
 
一番多いお悩みから言えば、話を聞こうと注意は向けたけど、話の最後まで注意をキープできない。
 
 
結局、話の一番大事なところを聞いてないから、やることが分からなかったり、忘れ物をしてしまったりします。
 
 
あるいは「お手本やってみるから見ててね」という場面で、最後までずっと見れないということも。断片的にしか見ていないから、いざやるときは自己流になってしまう…。注意の切り替えがすごく速いんですよね。
 
 
キョロキョロと視線が切り替わるたびに、注意も途切れていると思って良いです。
 
 
実は不注意の問題は、脳の機能の土台関わります。ですから、もっと脳の高次な機能にも影響を与えてしまいます。
 
 
 
 
例えば記憶思考。そもそも注目して見たり聞いたりしていないことを、きちんと覚えられるはずがないですよね?
 
 
ですから不注意の症状が強いと、学習がうまく積み上がらず、何度も何度も言うハメになりがちです。
 
 
思考の場合も同じ。一瞬のヒラメキなら、その思考に短時間しか注意が向かなくても可能です。しかし、思考をまとめ上げるような場合には、思考に注意をキープしなければ最終的な成果物ができませんよね。
 
 
例えば、作文や文章題。長く考え続けなければでき上がらない課題を、最後までやり遂げることが難しくなってしまうのです。
 
 
ちょっと目を離すと、訳がわからない状態になっていることも…(笑)
 
 
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3.脳を発達させ、注意をキープするための3つ取り組み

 
 
ところで、不注意の子どもでも夢中になれるものってありますよね!
 
 
夢中になると言うことは注意を持続しているということ。ですから夢中になれる遊びを徹底的に遊びつくすことは、不注意のお子さんにはとても大切です。
 
 
遊び感覚で、集中やすい体質になる取り組みをご紹介します。
 
 

◆その1 キープゲーム

 
 
不注意の改善には、「行動の抑制」を覚えさせることが必要です。行動の抑制とは、自分のしたい行動を思いとどまって、行動しない選択ができること。
 
 
注意の移り変わりが速い子は、刺激に誘発されるように行動を繰り出します。
 
 
・引き出しがあれば、開けてみたくなる。
 
・物が置いてあれば、触ってみたくなる。
 
そんな行動を抑えることができたら、一気に不注意は改善していきます。
 
 
自分の行動を抑えることを覚えるには、「体の動きを止めること」を遊び感覚で取り組むのが効果的です。
 
 
例えば「だるまさんがころんだ」の遊びは、鬼が振り返っている間は動きを止めなければなりませんね。その間、ずーっと行動を抑制しています。
 
 
つまり、体を動かさずにキープできる時間が長くなれば長くなるほど、集中する力がついてきているという目安になります。
 
 
遊びに発展させると、例えば
 
・まばたきしないゲーム
 
・目をそらしたら負けゲーム
 
・動いたら負けゲーム
 
など、簡単に考えつく遊びにできます。
 
 
・視線を動かさない
 
・体(特に手指)を動かさない
 
この2つができるようになると、行動抑制の力がつきます。
 
 

◆その2 カウントゲーム

 
 
視線や体の動きを制御できるようになったら、次は思考を制御できるようにしましょう!
 
 
そのためには、
 
・目をつぶって
 
・体を動かさずに
 
・数をゆっくり数えさせること
 
が有効です。
 
 
小学校低学年なら、20〜30くらいでいいでしょう。もっと年齢が上がれば、50とか100でもいいですね。
 
 
思考をキープできなければ、「あれ?どこまで言ったっけ?」と途中で混乱します。注意がそれてしまった証拠です。
 
 
すごく単純な取り組みですが、案外ガラッと変わるお子さんが多いです。できるようになったら難易度をアップさせていきましょう。
 
 
① 声に出して数える
(最初はお母さんが手を繋ぎながら一緒に数えてあげてもOKですよ)
 
② 声を出さずに数える
(お母さんは声を出してOKで、子どもは心の中で一緒に数えます)
 
③ カウントダウンにしてみる
(50からカウンドダウンに変える)
 
引き算にしてみる
 (100から3ずつ引いていく、7ずつ引いていくなど。引けなくなるまで続けます)
 
 

◆その3 指示の出し方を工夫する

 
 
子どもがゲームに熱中する理由は色々とありますが、こまめに「クリア(達成)」があると、子どもも大人も楽しく取り組めますよね。
 
 
思考をキープさせ続けるには、「考えることをフォーカスさせる」ことが大切です。あれこれ考えさせてしまうと、不注意タイプの人は収集がつかなくなっていきます。
 
 
例えば、大人の発達障害の方に「この仕事、お願いね」と指示を出しても、「その仕事は?あの仕事は?」と別のことに意識が向きがち
 
 
「い〜から。まずはコレやってちょうだい」と言いたくなってしまいますよね。不注意タイプの人には、思考が取り散らからないように、優先順位を意識させることが大事です。
 
 
そのために「1つ指示を出したら、1つOKを出すまで待つ」を繰り返す。
 
 
単純なことですが、スモールステップで指示を出すと、思考や行動への集中をキープしやすくなります。
 
 
「クリア」できれば、次の指示を出す。これがポイントです!
 
 
不注意の問題って実は奥が深いんです。今後も不注意改善の対応について、シリーズで解説していきますよ!
 
 
 
 
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執筆者:吉野加容子
(発達科学コミュニケーショントレーナー、学術博士、臨床発達心理士)
 
 
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