極度の怖がりで「不安が強い」発達障害・自閉症スペクトラムタイプの子どもたち。「〇〇が怖い!」が多くどう対応すればいいのか分からない…と悩むこともありますよね。そこで今回は怖がりな子どもが自分で不安を解消する対応をお伝えします。
【目次】
1.極度の怖がりなタイプが多い発達障害の子どもたち
2.発達障害・自閉症スペクトラムの子が怖がりの理由
◆感覚過敏がある
◆嫌なことを記憶しやすい
◆見通しが持てないことが苦手
3.怖がりな子どもが不安を解消する2つのコミュニケーション
◆見通しを持たせてあげる
◆スモールステップで成功体験を増やす
1.極度の怖がりなタイプが多い発達障害の子どもたち
苦手なことやできないことが多い発達障害・自閉症スペクトラム(ASD)タイプの子どもたち。
・少しの光でも眩しがる、偏食が多いなど感覚が過敏である
・会話が成立しない、1人遊びが多いなど言葉やコミュニケーションに苦手がある
・相手の気持ちが分からないなど想像力が弱い
・マイルールが多い、勝ちにこだわるなどこだわりが多い
・運動が苦手だったり手先が不器用である
などいろいろな特性を持っていますよね。そんな中でも、
・特定の音を極端に怖がる
・「〇〇が怖い!」が多い
・怖がりすぎてパニックになってしまう
こんなお子さんの様子に悩んでいませんか?
「なんでこんなことで怖がるの!?」
「大丈夫って言ってるじゃない!」
とついイライラしてしまうこともあるかもしれませんね。
実は私もその1人でした。我が家の息子は不安が強いタイプです。そんな人一倍怖がりな息子が抱えていたのは「犬が怖い!」という問題でした。
我が家の周りは犬を飼っている方が多いため、道で犬に出会うことがしょっちゅうあります。しかしその度に「怖い!」とパニックを起こし、走って逃げる…ということを繰り返していたのです。
こんな風に極度な怖がりの発達障害・自閉症スペクトラムの子どもは、他の子どもと比べて不安が高く、特定のものに異常な怖がりを示すことがよくあります。
つまり、発達障害の子どもの「〇〇が怖い!」には脳の特性が大きく関係しているため、無理強いをすると余計子どもの恐怖心を悪化させたり、自尊心を傷つけてしまうだけなんです。
とは言え、不安が強い状態だと他人と接する機会が少なくなる、新しいことにチャレンジできないなど成長の場が減ってしまうことにもなります。
行動しなければ「できた!」と言う自信はつきませんし、脳も発達しません。その結果さらに不安が強くなってしまうと言う悪循環に陥ってしまうのです。
そこで今回お伝えするのは、極度の怖がりな発達障害の子どもに怖いものを克服させるというよりは子どもが落ち着いて対処できるようになるための対応策です。
怖がりな子どもの不安を解消する上で大事なことは、本人の安心できる環境を尊重すること。
発達障害の子どもの不安の強さは理解されにくい傾向がありますが、実は一番困っているのは子ども本人です。
なんとかして怖がりを克服させようとすると、二次障害を起こしてしまうこともあります。
ですから「怖いものは怖いよね。でもパニックを起こすのは危険なこともあるから、自分で落ち着いて行動できるようにしてあげよう」というスタンスで読んでくださいね。
2.発達障害・自閉症スペクトラムの子が怖がりの理由
ではどうして発達障害の子どもは怖がりで不安が強いのでしょうか?ここでは主な原因を3つ紹介します。
◆感覚過敏がある
発達障害・自閉症スペクトラムの子が持っている特性の1つに感覚過敏があります。
感覚過敏というのは、脳で刺激をうまく処理することができないために、音や光などに敏感に反応してしまうことです。
自閉傾向がある子どもは
・人混みが苦手
・耳鼻科で吸引の音を嫌がる
・ジェットタオルの音が嫌でトイレに行けない
というケースもよくありますが、実はこれらには全て感覚過敏が関係しています。
つまり外からの刺激を必要以上に強く感じ取ってしまうために、「なんでこんなものに?」と私たちが感じるようなものを怖がってしまうんです。
◆嫌なことを記憶しやすい
恐怖心というのは、情報をどんな風にインプットしたのか?に大きく影響されます。
発達障害の子どもは脳の発達が未熟なために、嫌なことを記憶しやすいという特性があります。そのため、一度怖いと思ってしまうとその気持ちをうまく処理することができずに、どんどん不安を強めてしまうのです。
実は、我が家の息子は小さい頃に子犬に飛びつかれそうになった経験があります。元々は動物が大好きなのですが、その体験が原因で犬を極端に怖がるようになってしまったのです。
こんな風にインパクトが強ければ恐怖心は簡単に植え付けられてしまいます。さらに子どもは、恐怖心を消したくても消すことができずに辛い思いをしているのです。
◆見通しが持てないことが苦手
発達障害・自閉症スペクトラムタイプの人は、急な予定変更や見通しの立たないできごとに対して不安が強い傾向があります。
私たちの脳には危険を察知するために、未知のものを警戒する働きが備わっています。
ところが発達障害の子どもは脳の発達が未熟なために、「何が起こるか分からない」ということに必要以上に強い恐怖心を抱いてしまうのです。
さらに、不安が強いタイプの子どもはあれこれ考えてどんどん不安を強くしている場合が多くあります。
例えば息子の例だと、散歩中の犬を見ると
「飼い主がハーネスを離すかもしれない」
「犬が強くひっぱったらハーネスがちぎれるかもしれない」
「そしたら追いかけられて噛みつかれるかもしれない」
など、大人からすれば「どれだけ心配性なんだよ!」と思うくらい、いろいろな可能性を考えていたんです。
つまり、極度な怖がりの発達障害の子どもが不安を解消するためには、こういった発達障害の脳の特性をしっかり理解して対応することが必要なんです。
3.怖がりな子どもの不安を解消する2つのコミュニケーション
では、極度な怖がりで発達障害の子どもの不安を解消するために必要なこととは何でしょうか?ここでは2つの対応を紹介します。
◆見通しを持たせてあげる
まず1つ目は見通しを持たせてあげることです。
発達障害・自閉症スペクトラムタイプは決められたことをこなすのは得意です。そのため、根拠や解決策を伝えてあげれば、ちゃんと納得して対応することができるのです。
伝え方のポイントは
・予告をきちんとする
・取るべき行動を具体的に伝える
・別の選択肢も伝える
という3つです。例えば、犬を怖がっていた息子の例では
「飼い主だって他人に迷惑をかけたくないからハーネスを離すようなことはしない」(予告)
「犬に会ったら道の端に寄って通り過ぎるまで待つ」(具体策)
「どうしても怖かったら他の道を使えばいい」(別の選択肢)
ということを伝えました。
◆スモールステップで成功体験を増やす
2つ目にやってほしい対応は、小さなことから「大丈夫だった!」という成功体験を増やすことです。これは不安が強い発達障害の子どものネガティブな記憶を少しずつ減らしていくことが目的です。
成功体験が増えれば、子どもの恐怖心もだんだん和らいでいくのです。
ここで大切なことは、スモールステップで少しずつできることを増やし、褒めることです。
私は犬を怖がる息子にまずは「犬が何メートルも先にいる状態でも落ち着いて歩けたら褒める」ということから始めました。
どれだけ遠くに犬がいても「あそこに犬がいるけど落ち着いて歩けたね!大丈夫だったね!」と少しでもできていることを褒めてあげたのです。
するとだんだん犬を見つけても騒がなくなり、ある程度広い道であれば犬とすれ違えるようにまでなりました。
今では、道路で犬に出会っても全く動じません。
もちろん先ほどもお伝えしたように、他の道を使うという逃げ道を用意することも正解です。ここではあくまでも子どもに怖いものを克服させることが目的なのではなく、子どもが落ち着いて行動できるようになることが目的です。
どうすれば我が子が安心できるのか?を一番に考えて対応してあげてください。
いかがでしたか?極度な怖がりの発達障害の子どもの不安を解消するコツは、
・見通しを持たせてあげる
・スモールステップで成功体験を積ませる
この2つです。
子どもの恐怖心は、大人がしっかり安心と安全を確保して気長に取り組めば、だんだん解消されていきます。
お母さんの適切な対応で、子どもが落ち着いて行動できるようにしてあげてくださいね!
また、不安が強い子どもに効果的な対応はこちらの記事でも紹介しています。合わせてチェックしてくださいね。
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執筆者:森あや
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)