子どもが「宿泊学習に行きたくない」と言ったら心配ですよね?私の発達障害の息子も「行きたくない」と言い出し、私は間違った対応をしていました。帰宅後も元気がなく、楽しくなかった宿泊学習。その後のアフターケアでいい思い出に変えることができたのでご紹介します!
【目次】
1.息子の「宿泊学習に行きたくない」「楽しくなかった」発言に困惑
2.子どもの「宿泊学習に行きたくない」発言の親のNG対応
①説得&質問攻撃をしていた
②子どもの本音を聞いていなかった
3.ネガディブ記憶が残るといけないワケ
4.楽しくなかった記憶をポジティブな記憶に変えることができる3つの秘策
①カウンセリング:リラックスした環境で心を落ち着かせる対話をす
②アルバム作りを一緒にしてポジティブな意味をつけていく
③ビルディングメモリー:家族に見せて「新しい記憶」で「いい記憶」を増やす
1.息子の「宿泊学習に行きたくない」「楽しくなかった」発言に困惑
子どもが「宿泊学習に行きたくない」と言ったら親としては心配ですよね。
私には発達障害の小学5年生の息子がいます。5年生の1学期に宿泊学習がありました。
学校での説明会も終わり、準備を始めていたころです。
息子が「宿泊学習に行きたくない」と言い出しました。
私の中では小学校の楽しかった思い出上位にあった宿泊学習。「どうして行きたくないの?」と不思議でした。
「どうして行きたくないの?」と矢継ぎ早に聞いてしまい、息子の答えは「行きたくないから!」と言うだけでした。
それからも「宿泊学習、行きたくない」と時々こぼしていましたが、私はその度に楽しいそうなことを伝えていました。
「スタンツ(出し物)楽しみだよね」
「ダンスの練習してるの?」
「誰と同じ班になったの?」
と聞いていました。
私としては「行ったら『楽しかった!』って帰って来るに違いない!」と思っていました。
そして当日は、息子は特に何も言わずに出発していきました。私は一安心。
ところが帰宅後、「どうだった?」「楽しかった?」「何したの?」「ご飯美味しかった?」と聞くと「カレー美味しくなかった」「楽しくなかった」「忘れた」と何があったかをほとんど話してくれませんでした。
「本当は楽しかったけど、普段から学校のことをほとんど話さないから言わないだけかな」と思いながら、それ以上は何も聞きませんでした。
宿泊学習が終わり、学校で写真選びがありました。親も選べるので写真を見させてもらうと、笑顔のない息子の写真ばかりがありました。
楽しいはずの宿泊学習に我が子に笑顔がない…正直つらい気持ちになりました。
その時やっと、息子は本当に宿泊学習に行きたくなかった、行っても楽しめなかったんだと理解しました。
2学期になり写真を持ち帰っても息子は封筒から出す事もなく、写真をそのままにしていました。
2.子どもの「宿泊学習に行きたくない」発言の親のNG対応
私は宿泊学習というイベントで2つのNG対応をしていることに気づきました。
◆①説得&質問攻撃をしていた
私は自分の考えだけで、宿泊学習には楽しいはず!だから楽しそうなことを伝えようとしていました。
自分の楽しかった思い出を語ったり、小学6年生の子が行った時の様子を聞いて「こんなことをしたんだって」と一方的に伝えていました。
その結果「行った方がいいよ」と息子に説得する形で伝わっていました。
帰宅後は息子が答えたくないのに、矢継ぎ早に質問攻撃をしていました。
息子は嫌な記憶を思い出すことを拒否し、さらに何も語らなくなってしまいました。
◆②子どもの本音を聞いていなかった
発達障害・注意欠陥多動性(ADHD)タイプの息子は元気いっぱいで、日頃から、私とさらっとした会話が多かったのです。
そのため、じっくりと子どもの話を聞くような会話をしていませんでした。
今回も息子のことばを深く考えず、本音を聞かないままに対応していました。
3.ネガディブ記憶が残るといけないワケ
発達障害の子どもはネガティブな記憶が残りやすい傾向があります。
ネガディブ記憶が多いと、いい記憶を想起しづらくなり、さらにモチベーションにもつながりにくなります。
自己肯定感が下がってくるといったことも起こります。
嫌な記憶をそのままにしておくことで、その記憶が残りやすく変えにくく、ネガティブにしか考えられなくなるのです。
そのネガディブ記憶はさらに頭の中で嫌なこととして、グルグルと巡りやすくなります。
すると、自信ややる気が起こらなくなってしまうという悪循環につながってきます。
ネガディブ記憶を減らし、ポジティブ記憶を増やして、ポジティブな解釈が出来るようにしてあげることが必要です。
4.楽しくなかった記憶をポジティブな記憶に変えることができる3つの秘策
宿泊学習のネガティブ記憶をそのままにしていてはいけない、息子の本音を聞いて、宿泊学習の嫌な思い出をポジティブな思い出にしていきたいと考えました。
そのために宿泊学習の後に3つの対応をしたのでご紹介します!
◆①カウンセリング:リラックスした環境で心を落ち着かせる対話をする
まずはカウンセリング (保留・受容・理解・共感)&心の安定の土台を意識した会話をします。
リラックスした状態の時に、宿泊学習の写真を時系列に並べて一緒に見ながら、2人っきりで会話をしました。
まずは息子に質問してもOKか確認するために「宿泊学習のこと、聞いてもいい?」と了承を得ました。
会話の内容は体験したイベントごとに、「カレー作りしたんだね」「グループでダンスしてるね」と事実のみ話すようにしました。
息子から特に反応や返事がなければ、保留して様子を伺い、受容(ありのままを受け入れる)します。
「あんまり面白くなかった」「先生にああしろって言われるのが嫌」などネガディブな言葉を発したら「そうなんだね」と共感します。
「先生に言われるのがつらいんだね」と否定せずに、気持ちを言語化し、理解しているよ、こう感じているんだねと伝えました。
すると息子が本音を語ってくれました。本音は「学校の先生と一緒に行くのが嫌。家族で行きたい。その方が楽しい」でした。
アマゴつかみ取りをしたことだけは、「面白かった!」と言っていたので、写真を見ながら「アマゴ獲れたんだね、すごいじゃん」「捕まえるの大変そう!」と楽しかったことを客観的に見て、ことばで伝えました。
「すぐに捕まえれたよ。もっと大きい魚を、○○君と釣りに行った時に獲ってるし。あの時の魚はめちゃくちゃ大きかった~…」と語り始めたら、口を挟まず最後まで話を聞いて安心できるようにしました。
すると「10時くらいまで起きてたけど、朝は4時に起きた」「僕と○○君はグランドゴルフのボールがよく飛んだ」とポツポツと今まで語ってくれなかったことを語ってくれるようになりました。
意外と嫌な記憶がそぎ落とされて、楽しかった情報だけが残っていきました。
◆②アルバム作りを一緒にしてポジティブな意味をつけていく
次に「この写真で一緒にアルバム作りをしてみない?」と提案しました。
「まあ、いいけど」と了承してくれたので、一緒にお店に行き、アルバムの台紙を購入しました。息子は「自分で作ってみる」と言ったので、一人で取り組みました。
完成したものを私と一緒に眺めながら、再度カウンセリングで話をしていきます。
前回のように「面白くなかった」とネガティブな記憶はあまり想起されずに、「○○は楽しかった」と語ってくれるようになりました。
記憶はゆっくり変わっていく、語る度に「作り直している」ので、何度か語り直されることが重要です。
「ボールがよく飛んだんだね!」「朝ごはん全部食べたんだ」「友達と早起きしたんだね」「アマゴつかみ取りは楽しかったんだね」とポジティブにフィードバックしてあげる会話を大事にしました。
◆③ビルディングメモリー:家族に見せて「新しい記憶」で「いい記憶」を増やす
記憶は基本的には新しい意味が加わると、全く違う印象になるというのは人間の持っている性質です。
そこで本人の了解を得て、アルバムを家族に見せました。
妹達に見せることで「楽しそう」「私も早くいきたいな」「朝ごはん多いね」「誰と同じ部屋になるんだろ~」「さかな獲るの怖そう」と言われ、「魚は誰でも獲れるよ。大丈夫だよ」「女の子も獲ってたよ」と話をしていました。
パパにアルバムを見せることで「アルバム作り、センスある!」と褒められました。
宿泊学習の体験に、家族の会話という新しくていい記憶が加わり、違う印象になってきました。
「パパに褒められてよかったね」と言語化し、笑顔でハイタッチして一緒に喜びながら記憶に入れました。
宿泊学習は楽しくない記憶だったけれど、終わった後にいろんな意味が加わり楽しい記憶が増えていい記憶になりました。
今も机に置いてあるアルバムを見て、「アルバム上手に作ったよね。パパに褒められたよね」と楽しいコミュニケーションを大事にしています。
楽しくなかったという過去の嫌な記憶自体は消えません。
アルバム作りをした、家族と話をした、妹達が楽しそうに見てた、アルバムをパパが褒めてくれた、という新しい記憶が増えたことで、小学校の宿泊学習が成功体験になってくれたようです。
宿泊学習の私の体験が参考になってくれると嬉しいです。
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執筆者:石井花保里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)