発達障害の「好奇心いっぱいだけど不安が強いタイプ」の子は、大人が思うより慣れない場所や体験に緊張を感じるかもしれません。ですが、サポート次第でせっかくのお出かけを憂いなく楽しめますよ。息子がサーカスに初めて出かけた時の体験談をご紹介します。
【目次】
1.「行きたいけど行けないかも」好奇心旺盛だけど実は不安の強かった息子
2.発達障害で不安が強い子どもが行ったことのない場所に行きしぶる理由
3.親が背中を押すべきかどうかの判断基準
4.初めての体験が苦手な子のお出かけ正攻法
1.「行きたいけど行けないかも」好奇心旺盛だけど実は不安の強かった息子
一見平気そうなのに、実は初めての場所にお出かけしたり体験することを不安に感じるお子さんはいませんか?
我が家には旺盛な好奇心と不安の強さを持ち合わせる小学生3年生の息子がいます。
発達障害ASD(自閉症スペクトラム症)/ADHD(注意欠陥多動性症候群)の傾向がある息子は、小さな頃からいろんなものに興味関心が強くて気持ちも動きも止められません。
明るくお喋りな様子に、不安という言葉がイメージできませんでした。
ですが、おしゃぶりや安心毛布を好んだり、お出かけの時に、
・行きたいと言っていたのに直前に迷い始める
・いつも以上に落ち着きのなさが目立つ
・トイレに行く回数が増える
こんなことはありました。
行けば楽しめる、我慢ができるレベルですし、そもそも落ち着きがなかったのでうまく気づいてあげられなかったのですが、実は、
・初めての場所や体験は不安
・大きな声や人混みが苦手
なのだと、小学生になった息子との会話を通して初めて知りました。
不安よりも好奇心が大きい時は迷いなく行動できますが、高い緊張の後はどっと疲れてしまいます。
「ディズニーランド、面白かったけど何が起こるかちょっと怖かったな」
こんな風に、親が思う以上にストレスがかかっていたことに早く気づいていれば、心から楽しめたことが沢山あったのかな…と申し訳なく思います。
息子の不安の強さを知ってからは、本人がやりたいことであっても、慣れない体験をする際にはストレスを和らげる対応を心がけるようになりました。
そこで、先日息子と初めてサーカスに行った体験談を通じてその方法をご紹介したいと思います。
2.発達障害で不安が強い子どもが行ったことのない場所に行きしぶる理由
発達障害の子どもの不安の強さはどこから来るのでしょう?
◆感覚過敏がある
感覚過敏とは、音や光、匂いなどの刺激を脳内でうまく処理できず過剰に受け取ってしまう特性です。
・大きな音や高い音、ハンドドライヤーなど特定の音を不快に感じる
・蛍光灯、太陽の光や真っ白な紙などが眩しくて見ていられない
など、日常の何でもないと思えるような刺激がストレスになっていることがあります。
苦手な刺激が多い子どもは、初めての経験に対して尻込みしてしまうかもしれません。
息子にも思っていた以上に感覚過敏があり、体調や天候によっても感じ方に変化があるそうです。
◆見通しを立てられない
見えないものをイメージすることが苦手で、言葉を聞いただけでは頭の中で具体的な想像ができません。
初めての体験に行く時には、よく分からない場所で何が起こるんだろう、その時にどうしたらいいんだろう?と不安が膨らみます。
そして、予期せぬことが起こると頭の中が不安でいっぱいになり、考えることができなくなります。
見通しの立たない不安から、いつもより落ち着きのない行動が見られることもあります。
◆嫌なことを記憶しやすい
発達障害の子どもは、うまくいかなかったり、嫌な気持ちになったことが記憶に残りやすい特徴があります。
外出先で注意された過去の体験、お出かけの前や後に起きたアクシデントの記憶も、行動にブレーキをかけてしまう原因になるかもしれません。
3.親が背中を押すべきかどうかの判断基準
不安の強い子にとって慣れない場所や経験は、大人が思う以上にハードルが高いのですね。
無理に挑戦した記憶や失敗体験が重なると、不安が高まりやすく、行動しづらくなってしまいます。
脳は行動することで成長するので、
・本人がやりたいことか
・親がサポートできるか
この2つのポイントをクリアできる時だけ、チャレンジをしていきましょう!
4.初めての体験が苦手な子のお出かけ正攻法
ここで、息子が初めてサーカスに出かけた時のサポート方法をご紹介します。
サポートのコツは色んなお出かけに応用できますので、お付き合いくださいね。
友達家族からサーカスのお誘いを受けた時のこと。
息子は、授業で『サーカスのライオン』という単元を学習したことを思い出し、
「行きたいけど、行ったことないからちょっと心配。特にピエロは不気味で怖い」
と言いました。
そこで、不安を軽くするために「いつ、どこに、誰と、何のために何をしに行くのか」見通しを立てられるように準備をしました。
◆当日のイメージトレーニングをしておく
カレンダーに予定を書いて、1週間前に確認した後、3日前からカウントダウンして心づもりをしていきました。
また、ネットでサーカスの映像を一緒に見たり、問い合わせをしてプログラムの内容を確認しました。
息子はブログで知った子どもの体験談から、自分も楽しめそうなイメージが湧いたようです。
席は、ステージに近すぎない中央エリアの正面席を指定して取りました。
本人の考えで、におい対策にマスク、音や光の演出対策には騒音を消してくれるノイズキャンセリングイヤホンを持参することに決定。
ピエロは道化役だということを説明して、嫌になったらノイズキャンセリングをして目を閉じることにしました。
◆ワクワクできるポイントを作る
好奇心旺盛なタイプは、気分の上がる楽しみがあると不安な気持ちが和らぎます。
会場に到着したら急に緊張が高まっていたので、
・友達が来るの楽しみだね!
・売店で好きなもの買っていいよ♪
・終わった後〇〇くんと遊びに行こうね!
と声をかけると表情が明るくなりました。
本番では、オートバイが球体の中を回転するショーなどもノイズキャンセリング機能をうまく使って楽しむことができました。
火吹きのマジックでは拍手喝采を送り大興奮。最後は、
「ピエロはやっぱり不気味だけど、サーカスって思っていたよりずっと楽しかった!」
不安だったお出かけが成功に終わり、自信に満ちた笑顔で語ってくれました。
「ヘッドフォン使いこなしてたね、いいね!」
「行ってみたら、楽しめてよかったね。」
「準備して行って正解だね」
と、できたことを会話にして成功体験の記憶を残すことができました。
このように、一見キャラじゃないけど実は不安の強い子の初めて体験は、出かける前の準備とシミュレーション、そして楽しいことをセットにするのがおすすめです。
お母さんが不安に備えてあげることで、思いきり楽しんだ記憶をたくさん作ってあげたいですね。
発達障害で不安の強いお子さんの子育てが楽になる、実用的な情報をお届けしています。
執筆者:山中寧子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)