発達障害・アスペルガーの5歳の息子がいます。なにかにつけて「こうでなくてはならない」という考えが強すぎて、ちょっとでも意にそわないと癇癪ややり直しを要求してきて、正直子育てが辛いです。どうしたらいいでしょうか?
5歳・男の子のママ
発達障害・アスペルガーの子どものこだわり、大変ですよね。意にそわないと癇癪をおこされる、やり直し…本当に辛いですよね。そこで、今回は同じように、こだわりが強い息子に悩まされた私が、こだわりとの付き合い方や私がしたことをお話します。
発達科学コミュニケーション
リサーチャー 愛川まいこ
【目次】
1.生まれた頃から育てにくかった息子
発達障害・アスペルガーの子どもは、なんらかの「こだわり」を持っていることが多いと言われています。うちの息子は、生まれた頃からとても育てにくく、ずっと泣いていたり、寝なかったり、とても大変でした。
言葉はとても早かったので、発達の遅れが特に気になることもありませんでした。健診でも発達について、何も言われることはありませんでした。ただ、私は「何かおかしいな」と違和感をもちながら子育てをしていました。
初めての子どもだったこともあり、育児相談に何回か行ったのですが「大丈夫ですよ」と言われ、「子どもってこんなものかな?」「本当に大丈夫なのかな?」と腑に落ちない気持ちを抱えたまま子育てをしていました。
けれど、なんとかやっていけたので、そのままにしていました。しかし、子育ては楽になるどころか、どんどん大変になっていきました。
2.こだわりが強い息子に疲れ果てていた過去
日常生活でとても大変だったのは、こだわりが強いことでした。
・必ず、○時○分に家をでないといけない
・必ず、○時○分に幼稚園に着かないといけない
・必ず、このルートを通らないといけない
・この道を通るときは「○○○○」と絶対に言わなければならない
そんなことから、靴を履くとき、玄関を出るとき、車に乗るとき降りるとき、お風呂に入るとき出るとき、電気をつけるときなど、私より息子が先でなければならないという、いわゆる「一番にならないと気がすまない」というこだわりも見られました。
当時は、負けるのが絶対に許されないために、じゃんけんもできなかったり、ゲームをしたとしても、負けそうになると機嫌が悪くなったり、カードを投げたりぐちゃぐちゃにしたりと楽しいはずのゲームもできない状態でした。
また、いつの間にか勝手に、独自のこだわり…いわゆる「マイルール」を決めていました。昨日まではよかったことが今日はダメで、いきなり癇癪が始まったり…ということも数知れません。
「え、こんなことで!?」ということも多いので「そんなこと聞いてないよ!いいかげんにして!」とイライラして大声をだすことも日常茶飯事でした。
マイルール通りにいかないと、尋常でないほどの癇癪をおこしたり、やり直しを求められ、毎日が本当に辛かったです。だから、相談者さんのお気持ちよくわかります。
わたしは、当時、発達障害の知識もなかったし、「発達障害かも?」とも思っていませんでした。「しつけているのに、なんで言うこと聞かないのだろう…」と思い、しつけが足りないのかなと、どんどん厳しくしていきました。
しかし、厳しくすると、ますます息子も言うことを聞かなくなって、癇癪もひどくなっていきました。こだわりもさらに強くなっていったのです。
3.発達障害・アスペルガーの子どものこだわりが強い理由
では、どうして発達障害・アスペルガーの子どもには、こだわりがあるのでしょうか?実は、生まれ持った脳の特性が関係していています。
変化や変更を受け入れることが苦手だったり、一度こうだと決めたり、思い込むとそれをなかなか変えることができないという特徴があります。
また、このようにこだわる最大の理由は、本人が「安心」を得るためなのです。 自分で決めたことをこなさないと、どうにもこうにも安心できない状態になってしまうのです。
こう考えると、むやみに辞めさせたり、叱ったりしても意味がないことがわかりますね。それどころか、発達障害・アスペルガーの子どものこだわりを否定するということは、彼らにとっては、生命を脅かすほどの一大事くらいに思ってもいいかもしれません。
毎回毎回こだわりに付き合うのは、正直難しいです。でも、今思えば、子どもが安心を得るためにやっていると知っていれば、もう少し余裕をもって穏やかに子どもに付き合ってあげたり、見守ることができたのではないかと思います。
4.こだわりについての考え方と息子の成長
ここでひとつ、相談者さんにお伝えします。 こだわりは、脳が発達して柔軟な考えができるようになれば、だんだん減ってくるものです。今、息子さんのこだわりが強すぎて、毎日がしんどいと思いますが、ずっとこんなにひどい状態が続くものではないんだと思って安心してください。
私も当時は、子どもは可愛いけれど、子育てを楽しいと思ったことは、なかったです。「なんで、こんなに辛いんだろう…」と楽しそうな親子を見ては羨んだりしていました。
ストレスで全身に湿疹もできていました。自分ばっかり「大変だ、しんどいんだ」と思って疲れ果てていました。
しかし、息子の方が、実はものすごく大変でしんどかったのです。毎日毎日頑張っていたのです。園や学校へ行くことはあたりまえのことだと思っていた私は、もちろん園や学校に行くことに対し、褒めたりしませんでした。
そして、帰宅後も口やましくしていた結果、息子からは「なんで褒めてくれないんだよ!」「認めてよ」「ぼくは、頑張っているんだ!わかってる?」「ママは、いつも怒ってばっかり」「また、どうせ怒るんでしょ」と言われるようになりました。
そうこうしているうちに、頑張りすぎて疲れきった息子は、小学校1年生の終わり頃には「生きている意味が無い」「爆発しそうだ」と言いだし「学校に行きたくない」と不登校になってしまったのです。
ようやく、これではダメだと思い息子を助けるために奔走しました。本人の気持ちを大切にして、本人が頑張っていることを認めないといけないと思いました。こんな風に息子を追い込んでしまった自分を悔やみました。
いろいろありながらも、学校に行くようになってきた頃、発達科学コミュニケーション(以下発コミュ)に出会ったんです。ちょうど息子が新3年生になったころでした。
発コミュを学ぶ前は、あたりまえのことを「褒める」「認める」ということをせず、しつけと思って注意ばかりしていました。
振り返ると、できていないことに注目して、しつけのつもりで注意し続けている間は、息子は言うことも聞かないし、ちょっとしたことで癇癪をおこしたり、常に怒りっぽい感じでした。こだわりも強かったです。
常に戦闘態勢って感じでしょうか…。 なにか、私が口をひらこうとすると反射的に「また嫌なこと言われる」と思って聞く耳をもたず、少し注意するだけで「うるさい、うるさい、うるさ~い!」と、もはや普通に意思疎通することさえ難しくなっていました。
発コミュを学ぶ中で、こだわりが強すぎたり、癇癪がきつすぎるなど、お母さんが対応に困ってしまうような子どもは、実は本人が一番困っているということ知りました。
そして、その対応には、あたりまえのことを「褒める」「認める」というコミュニケーションが大切だということを学びました。
私は、できていることに注目し「褒める」「認める」を徹底しました。
「起きてきたんだね。おはよう!」
「歯磨きしてるんだね」
「おっ。服きがえたんだね!」
「学校お疲れさまだったね。よく頑張ったね」
のような感じです。
すると、少しずつですが情緒が安定していきました。10歳になった今は、あれほどまでにきつかったこだわりも、ほとんど無くなりました。
以前は、息子は完璧主義でプライドも高いため「こうでなければならない」という思考が強く、思い通りにならないと大変でしたが、今では「まあ、いっか~」と言えるようになりました。
また、視野がとても狭く、自分の考え以外聞き入れることができなかったのですが、最近は「そういう考えもあるな…」「そうとも言える」と他人の考えも素直に聞くことができるようになってきました。
今でも、疲れているときや、しんどいとき、嫌なことがあったり、情緒が不安定なときなどには、こだわりがでてきたり、癇癪もみられることがあります。
しかし、「今は、どうしてもこうでないと気が済まないから…。悪いんだけど…」と自分のことを理解している発言をしています。また、癇癪を起した後に、「何でさっきはあんな風になってたんやろう…でもスッキリした。もう大丈夫!」などという言葉もみられるようになりました。
だんだんと、自分で気持ちに折り合いをつけられるようになってきたんだなと成長を感じ、とても嬉しく思っています。
相談者さん、今はとてもお辛いと思いますが、無理やりこだわりをやめさせようとはせずに、見守りつつ、今できていることを「褒める」「認める」関わりを息子さんにしていってあげてほしいと思います。
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執筆者:愛川まいこ
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)