最近知られるようになった感覚過敏に対してあまり知られていない感覚鈍麻。痛みの感覚が鈍いということに気がつかず、骨折を見過ごしてしまった経験からの注意喚起と、本人も気がつかない痛みから生じるミスコミュニケーションを防ぐためにできることについてお伝えします。 |
【目次】
1.夏でも冬でも半袖、骨折にも気づかなかった息子の話
2.骨折にすら気づかない!?感覚鈍麻とは
3.周囲の理解が得づらい!ADHD×感覚鈍麻の子どもたち
4.子どもの心と体を守るためにママが周囲との懸け橋になろう
1. 夏でも冬でも半袖、骨折にも気づかなかった息子の話
私には、痛みの感覚が鈍い感覚鈍麻の息子がいます。
息子は小学6年生。先日、バスケットの練習中にジャンプをした際、足を痛めました。
数日たっても「なんかまだ痛いんだよね…」と痛みを訴えていたので、病院に行ってみると、なんと骨折していました。
注意欠陥多動性障害(ADHD)グレーゾーンの息子は、昔からちょっとした怪我がとても多い子です。ですから、またいつもの怪我と軽く考えていました。
しかし、骨折すら気付かないのは、今回で3回目。私、やっと気がつきました。
この子は、痛みの感覚が鈍いのかも…!と。
振り返ってみると、痛みのほかにも、息子の感覚が私と異なると感じることがたくさんあると思い当たりました。
・夏も冬も基本半袖で、長袖は好まないこと。
・セーターを断固拒否すること
・洋服のタグを嫌がること
・強い光が苦手なこと
マスク着用が義務付けられている昨今、感覚過敏について話題にのぼることが増えました。
そうです。息子は感覚過敏と感覚鈍麻、両方を併せ持っていると気づいたのです。
2. 骨折にすら気づかない!?感覚鈍麻とは
人によって感覚の受け取り方には個人差があります。感覚が敏感な人もいれば、鈍感な人もいます。
全体的にすべての感覚が敏感だったり鈍感だったりする人もいれば、ある感覚は敏感で、ある感覚は鈍感など、感覚によって受け取り方が異なる人もいます。
感覚鈍麻とは、感覚過敏の逆で感覚の受け取り方が鈍いということです。
程度の差はありますが、痛いことに気がつかなかったり、大きなけがなのにあまり痛みを感じなかったりします。
「これぐらいなら我慢できる」と様子を見ているうちに症状が悪化してしまったり、時には命の危険に気がつかなかったりすることもあるそうです。
痛みは、怪我の程度の指標のひとつです。
痛みが軽いときは、休んだり、薬を飲んだりして様子を見る。
痛みが強くなったら、病院に行ったり救急車を呼んだりすることを検討する。
子どもが痛みを訴えてきた時も、何かしらの対応しますよね。
しかし、本人が痛みをはっきり伝えることができないと、周囲には伝わらず適切な対応をとることができません。これが感覚鈍麻の難しいところです。
一見、我慢強い子に見えるかもしれませんが、痛みに気がつかないことは大きな危険性をはらんでいるのです。
3.周囲の理解が得づらい!ADHD×感覚鈍麻の子どもたち
このように、感覚鈍麻の子は正しく痛みを受け取れず、周囲の人にうまく伝えることができません。
運動中にジャンプをして足を痛めた息子。ちょっと捻ったのかな?くらいの感覚だったそうです。
コーチにも痛いから休みたいと伝えたそうなのですが、運悪くそのときは辛いダッシュ練習直前。サボりとみなされてしまい、認めてもらえなかったそうです。
これが、ADHDタイプの息子によく起こるトラブルです。
伝えるタイミングが悪い
伝え方が下手
サボりたいと勘違いされる
と言う、ミスコミュニケーション…いつものパターンです。
痛みは本人だけが感じるもの。特に出血や腫れなどを伴わない場合、苦手なこと嫌いなことはしたくないのか、本当にけがをして痛いのかを周囲の人が判断することはできません。
普段から、キツイ練習前後に文句を言って注意されていると、周囲の人も「サボりたいんだな」と勘違いしてしまっても無理はありません。
おまけに、本人も痛みを感じているものの、歩けないという痛みでもないので、言葉にも説得力がありません。
痛いと言っていても、結局ダッシュ練習には参加できていたし、友達と楽しそうに遊んでいる。やっぱり痛くなかったんだね!と思われても仕方がないのです。
このように、普段から余計な一言が多いADHDタイプのお子さんは、周囲の人の理解をますます得にくくなってしまうのです。
そして、子ども側も「痛いと言ったのに休ませてもらえなかった」と、人間関係にひびが入ってしまう可能性もあります。
4.子どもの心と体を守るためにママが周囲との懸け橋になろう
今回、整形外科の先生からは、「子どもは痛みに正直」とアドバイスを頂きました。先生のご経験から、子どもは痛みに正直で、嘘は言わないそうです。
だからこそ、子ども本人が少しでも「痛い」と言った時は、何かある!と、無理をさせず、対処することが必要だそうです。
そもそも、本人が「痛い」と言っているのに、たいしたことない・嘘だ・サボりだと決めつけるのは、周囲の人間の勝手な解釈です。
私自身も、どこかで「どうせ大したことないだろう」と思っていたことを反省しました。
感覚鈍麻の子は周囲にうまく痛みを伝えられない分、親が周囲との橋渡しになる必要があります。
万が一けがをしてしまった時に適切な対応が受けられたり、サボりと勘違いされないように理解を求めておいたり、けがをする前から対応しておくことが大切だと気づきました。
そうすることで、子どもと周囲の人たちの信頼関係をしっかり築いていくこともできるはずです。
子どもの心と体を傷つけない!まずは子どもの小さな訴えを正面から受け止めることから始めてほしいと思います。
我が家の経験が参考になれば幸いです。
執筆者:後藤優子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)