嫌だったことばかり思い出し、「今日は嫌な日だった」「また嫌なことがあるかも」と考えてしまう子どもに悩んでいませんか?寝る前に「今日のいいこと」を親子で振り返る習慣を続けたことで、息子に起きた変化と、家庭でできる声かけをご紹介します。
1.ネガティブ思考が強い子を見て、心配になっていませんか?
- 嫌だったことばかり思い出して、いつまでも引きずってしまう
- 一つ嫌なことがあると、「今日は嫌な日だった」と落ち込んでしまう
- 「また嫌なことが起きるかも」と悪い方へ考えてしまう
そんなお子さんの姿を見て、心配になっていませんか?
「そんなに悪いことばかりじゃなかったよ」
「楽しいこともあったでしょ?」
そう伝えても、本人にとっては嫌だった出来事の印象が強く、そのことばかりに意識が向いてしまうことがあります。
実は、寝る前の会話を少し意識するだけで、嫌だったことだけでなく、「楽しかった」「嬉しかった」という出来事にも意識を向ける習慣をつくることができます。
この記事では、ネガティブな出来事を引きずりやすかった息子との経験をもとに、脳と記憶の仕組みを活かした、寝る前にできる親子の声かけをご紹介します。

2.嫌なことばかりが残っていた息子
自閉スペクトラム症(ASD)グレーゾーンの息子が、小学生だった頃の話です。
息子は刺激に敏感で、周りの人が気にならないような音やにおい、人からの視線などにも強く反応することがありました。
学校で嫌な経験をすると、「きっとまた嫌な思いをするから行きたくない」と話すことがありました。
家でも、嫌な出来事があると「もう嫌だ!」と泣き、布団をかぶって出てこなくなることもありました。
そして、出来事そのものは終わっていても、息子の中ではなかなか終わりません。
体育座りのままうなだれ、長い時間動かないこともありました。
嫌だったことを思い出すたびに、そのときの嫌な気持ちまでよみがえっているように辛そうにすることも。
「大丈夫だよ」
「気にすることないよ」
そう声をかけても、気持ちはなかなか切り替えられず、ひたすら待って見守っても、励ましても、立ち直るまでにはとても時間がかかりました。
「一体いつまで待てばいいの?」
「いつになったら回復するの?」
途方に暮れることもしばしばでした。
嫌だったことはいつまでもよく覚えているのに、その日にあった楽しかったことや嬉しかったことには、なかなか意識が向いていないように見えました。

3.なぜ嫌なことの方が残りやすいの?
そもそも人の脳は、嫌だったことや危険を感じたことに注意を向け、記憶に残しやすい特徴があります。
これは、同じ危険を避け、自分を守るために必要な働きです。
刺激に敏感な子や不安が強い子は、危険や嫌なことにより注意が向きやすく、つらかった出来事の印象が強く残ることがあります。
これは性格の問題でも、甘えでもありません。
子ども自身も好きで嫌なことを思い出しているわけではありません。
脳が自分を守ろうとする働きが関係しています。
嫌だった記憶は「考えないようにしよう」としても、簡単には切り替えられないことがあります。
だからこそ、嫌な記憶をなくそうとするのではなく、日常の中にある「楽しかった」「嬉しかった」「安心できた」という経験にも目を向けられるようにしていくことが大切です。
次は、わが家で続けてきた、寝る前にできるシンプルな習慣を紹介します。

4.息子と始めた寝る前の新習慣
わが家で始めたのは、寝る前にその日の「よかったこと」を親子で話すことでした。
私たちの脳は、眠っている間にその日に経験したことや学んだことを整理し、記憶として定着させていきます。
そこで、一日の最後に「楽しかったこと」「嬉しかったこと」「安心できたこと」などに意識を向けてから眠る習慣を作りました。
息子には、「今日、ちょっといいことあった?」と聞きました。
すぐに出てくる日もあれば、なかなか思い浮かばない日もありました。
本人が話してくれたら、「そうなんだ」「教えてくれてありがとう」と、受け止めました。
いくつも思い浮かばない日は、一つだけでもいいことにしました。
思い浮かばない時は、
「今日、〇〇できたよね」
「~のとき、楽しそうだったね」
と、その日の出来事を思い出すきっかけを渡すこともありました。
「〇〇がおいしかった」
「〇〇が楽しかった」
「〇〇ができた」
そんな小さなことを一緒に見つけていきました。
大切にしていたのは、一日の中にあった「いいこと」に息子自身が気づくことでした。
嫌だったことを「考えちゃダメ」とするのではなく、嫌だった気持ちも受け止めた上で、
「ほかには、どんなことがあったかな?」
と、一緒に一日を振り返っていきました。

5.少しずつ変わっていった息子の言葉
最初の頃、「いいこと」がなかなか出てこない日もありました。
それでも、寝る前に一緒に振り返ることを続けました。
すると、少しずつ息子の言葉に変化が出てきました。
ある日は、「今日は悪いことがあった。いいことは特にない」と話しました。
ところが、そのあと少しすると、
「でも、〇〇は楽しかった」
「そういえば、〇〇はよかった」
と、自分からいい出来事を思い出すようになっていったのです。
嫌なことがなくなったわけではありません。
けれど、一つの嫌な出来事だけで一日全部を「嫌な日」と捉えるのではなく、
「嫌なこともあった。でも、いいこともあった」
と、一日の中にある両方の出来事に目を向けられるようになっていきました。
さらに、この変化は寝る前だけではありませんでした。
日中にも、「今日、こんないいことがあったよ」「これ、できたよ」と、嬉しかったことやできたことを自分から話してくれることが増えていきました。
そして以前は、嫌なことがあるとうなだれて長い時間動けなくなることがありましたが、少しずつ落ち込んでいる時間が短くなり、次の行動へ切り替えるまでの時間も早くなっていきました。
私自身にも変化がありました。
息子と一緒に、「今日のいいこと」を探すことで、私も自分のできたことや、よかったことに目を向けられるようになっていったのです。
この時間は子どもだけでなく、私自身にとってもほっとできて、心を整える時間になっていきました。
ポジティブ思考というと、「いつも前向きに考えること」のように感じるかもしれません。
けれど、嫌だったことを無理に「よかったこと」に変えるのではなく、
「嫌なこともあった。でも、いいこともあった」
そうやって、今まで見えにくかったもう一つの面にも目を向けられるようになることが大切なのだと思います。
寝る前の親子の会話を続けることで、息子は少しずつ、自分で日常の中の「いいこと」を見つけられるようになっていきました。
まずは1つ。
寝る前に、「今日、何かいいことあった?」と聞くところから始めてみませんか?

執筆者:たかなし りら
発達科学コミュニケーション トレーナー





