1 高IQなのにうまくいかないのは、自分を守っているから?
話せば、ちゃんと分かる。
大人が驚くようなことを知っている。
好きなことなら、ものすごい集中力を発揮する。
「そこまで考えているの?」と驚かされることもある。
なのに——
ちょっとしたことで、ものすごく怒る。
ゲームや好きなことを始めると、何度声をかけてもやめられない。
やればできそうなのに、「無理」「できない」と最初から動こうとしない。
失敗しそうなことには挑戦しない。
一度「こうする」と決めたら、頑として変えようとしない。
「これだけ分かっているのに、どうして?」
高IQの子を育てていると、そんな矛盾に戸惑うことがあります。
「分かっているなら、やればいいのに」
「そんなに怒ることじゃないって、分かるでしょ?」
「ゲームはあとでまたできるんだから、今はやることをやろうよ」
「ちょっと、我慢すればいいじゃない。」
そう言いたくなることもあると思います。
だけど、もしかしたら、
「分かっているのに、やらない」んじゃないのかもしれません。
「やりたいのに、できない」
「やった方がいいと分かっているのに、動けない」
そこには、その子なりの理由があることがあります。
怒るのも。
ゲームから戻れないのも。
「無理」と動かなくなるのも。
一見、バラバラに見えるこうした行動の奥に、
「自分を守ろうとしている」
という共通する姿が見えることがあるんです。
私は、この状態を**「防衛モード」**と呼んでいます。

2 「困った行動」の奥には、自分を守ろうとする理由がある
この記事では、宿題をめぐって激しく怒っていた男の子のお話をしました。
外から見れば、
「なんで、そんなことで怒るの?」
と思うような行動でした。
けれど、本人の中にあったのは、
「先生に怒られたら、僕は傷つく」
という思いでした。
表面では「怒る」という行動になっていても、その奥では自分が傷つかないように必死に考えていた。
私はこれまで、たくさんの親子の変化を見ていく中で、こうした姿に何度も出会ってきました。
怒る。
動かない。
フリーズする。
好きなことから戻れない。
自分のやり方を変えない。
人の意見を聞き入れない。
へりくつ・言い訳ばかりしている。
失敗しそうなことを避ける。
一見すると、まったく違う行動です。
けれど、その奥を見ていくと、
傷つきたくない。
失敗したくない。
否定されたくない。
これ以上嫌な思いをしたくない。
そんな子どもなりの思いが隠れていることがあります。
だけど、ここで一つ考えてみてほしいんです。
「もし、自分のことを守らなくてもよくなったら?」
たくさん考えられるその賢さを、“自分を守るため”ではなく、ほかのことに使えるようになったら?
その子は、どんなことができるようになるでしょうか。
その話をする前に、まずは、なぜ賢さが「自分を守るため」に使われるようになるのかから、紐解いていきましょう。

3 高IQの子の賢さが「自分を守るため」に使われるとき
実際に、こんな男の子がいました。
小学2年生で、WISC-IVの全検査IQは124。
とても考える力のある子でしたが、間違えることを強く嫌がっていました。
ひらがなの練習では、お手本と少しでも違うと、何度も消してやり直す。
算数では、たった1問間違えただけでも、
「全部できていない」
と捉えて荒れてしまう。
道徳や自由な絵、工作のような、「正解が一つに決まっていないもの」も苦手でした。
ゲームでうまくいかなければ、物を叩いたり蹴ったりする。
そして小学2年生の9月から、学校にも行けなくなっていました。
この子を見ていると、
「考える力がないから、できない」わけではないんです。
むしろ、たくさん考えられる。
だからこそ、
間違えたらどうしよう。
うまくできなかったらどうしよう。
正解が分からなかったらどうしよう。
そんな風に、「できない自分」や「間違える自分」にならないために、たくさんの力を使っていたのかもしれません。
けれど、ママの関わり方が変わっていくと、この子にも少しずつ変化が現れました。
「嫌だ」と言いながらも、勉強に取り組む。
言われなくても、自分から動く。
友達との間で困ったことがあったときには、攻撃するだけではなく、ママに話す。
嫌なことが、嫌じゃなくなったわけではありません。
ここが、私はとても大事だと思っています。
「嫌だ」「失敗したくない」と感じても、それでも自分で一歩動けるようになっていったんです。
私は、こういう変化を見ると、
この子の賢さそのものが変わったわけではない
と思うんです。
変わったのは、その賢さを何のために使えるようになったか。
それまでは、
「間違えないため」
「失敗しないため」
「傷つかないため」
にたくさんの力を使っていた。
だけど少しずつ、
「嫌だけど、どうしたらやれる?」
「困った。じゃあ、どうしたらいい?」
という方向にも、その力を使えるようになっていったように、私は感じています。
高IQの子は、考える力があるからこそ、先のことまで考えます。
その力が、
「どうしたらやれる?」
ではなく、
「どうしたら失敗せずに済む?」
「どうしたら傷つかずに済む?」
に向かっているとしたら。
「賢いのに、なぜうまくいかないの?」
という一見矛盾した姿にも、理由が見えてくるんです。

4 自分を守る方法は一つじゃない——「怒る・戻れない・動けない」3つの防衛モード
では、防衛モードになると、どんな行動が現れるのでしょうか。
私は、子どもたちの姿を見ていく中で、大きく3つの現れ方があると感じています。
たとえば——
🔥 怒る・爆発する
注意されると、ものすごく怒る。
思い通りにならないと暴言が出る。
「違うよ」と言われただけで、激しく反発する。
失敗や否定から自分を守ろうとした結果、怒る・反発する・攻撃するという形で現れることがあります。
🎮 好きなことから戻れない
ゲーム、動画、読書、工作、研究、好きな遊び。
一度入り込むと、何度声をかけても戻ってこない。
「あと5分」と言ったのに、やめられない。
次にやるべきことが分かっていても切り替えられない。
安心できる好きな世界にとどまることで、嫌なことや不安なことから距離を取ろうとしているように見えることがあります。
🛑 動けない
「やりたくない」
「無理」
「できない」
「どうせ失敗する」
そう言って、最初の一歩を踏み出さない。
学校へ行けない。
宿題を始められない。
初めてのことに挑戦できない。
一見すると、やる気がないように見えるかもしれません。
けれど、失敗することや傷つくことを避けるために、最初から動かないことで自分を守っているように見えることがあります。
同じ「自分を守る」でも、
怒って守る子もいる。
好きな世界にとどまって守る子もいる。
動かないことで守る子もいる。
そして、一人の子に一つだけとは限りません。
場面や時期によって、現れ方が変わることもあります。
だから、表面の行動だけを見て、
「この子は怒りっぽい子」
「ゲーム依存の子」
「やる気のない子」
と決めてしまう前に、
「この子は今、何から自分を守ろうとしているんだろう?」
という視点を持ってみてほしいんです。

5 「何から自分を守っている?」が分かると、わが子の見え方が変わる
たとえば、子どもがゲームをやめられないとき。
「どうやったらゲームをやめさせられる?」
だけを考えていると、
時間を決める。
ルールを厳しくする。
ゲームを取り上げる。
というように、「ゲームをやめること」に意識が向きやすくなります。
けれど、
「なぜ、この子はゲームから戻れないんだろう?」
と考えると、見えるものが変わってきます。
ゲームをやめたあとに、何が待っている?
何か避けたいことがある?
ゲームをしているとき、この子はどんな状態でいられる?
怒っている子なら、
「怒らせないためにはどうする?」
だけではなく、
「この子は、何を守ろうとしてこんなに怒っている?」
動けない子なら、
「どうやったら動かせる?」
だけではなく、
「この子にとって、一歩踏み出すことの何が怖い?」
と見ていく。
すると、
「困った行動をする子」
だったわが子が、
「自分なりの方法で、必死に自分を守っている子」
に見えてくることがあります。
見え方が変われば、かける言葉も、関わり方も変わってきますよね。

6 「自分を守る」から「どうしたらできる?」へ、賢さを使えるようになる
ここで、私が一番伝えたいことがあります。
防衛モードという言葉は、
「この子は防衛モードだから、しょうがない」
と、できない理由を増やすためのものではありません。
むしろ逆です。
なぜ、怒るのか。
なぜ、戻れないのか。
なぜ、動けないのか。
その理由が見えてきたら、
次に考えられるからです。
「じゃあ、どうしたらできる?」
傷つくことが怖いなら、どうしたら安心して挑戦できる?
失敗が怖いなら、どんな小さな一歩なら踏み出せる?
好きなことから戻れないなら、どうしたら次の行動へ切り替えやすくなる?
できない理由は、
未来を諦める理由ではなく、攻略するための手がかり
に変えることができます。
私は、高IQの子どもたちの賢さを、
失敗しないため。
傷つかないため。
嫌なことを避けるため。
自分を守るためだけに使ってほしくありません。
その頭を、
「これ、やってみたい!」
と思ったことに向かって、
「今はできない。じゃあ、どうしたらできる?」
と考えるために使ってほしい。
そして、
「こうしたら、やれるはず!」
と、自分の未来をつくるために使えるようになってほしいと思っています。

7 あなたのお子さんは、今どんな風に自分を守っていますか?
ここまで読んで、
「怒るのは、うちの子に当てはまる」
「ゲームから戻れないのもある」
「うちはむしろ、最初から『無理』って動かなくなる」
と思った方もいるかもしれません。
大切なのは、
「うちの子は何タイプ?」と決めつけることではありません。
今、この子にどんな防衛モードが強く現れているのか。
そして、その行動の奥に何があるのか。
そこを知ることが、わが子への関わり方を変える最初の一歩になります。
そこで、
「うちの子は、今どの防衛モード?」
を見つけるためのチェックを用意しました。
怒って爆発するのか。
好きなことから戻れなくなるのか。
「無理」と動けなくなるのか。
まずは、今のお子さんの姿からチェックしてみてください。
「なんで、この子はこうなの?」
と思っていた行動が、
「そういうことだったのか」
に変わるきっかけになるかもしれません。
→ 「うちの子は、今どの防衛モード?」チェックはこちら
(発達科学コミュニケーショントレーナー)

