「周りはみんなiPhoneなのに!」
「どうしてうちはAndroidなんだよ!」
「オンボロイドって馬鹿にされる!」
これは、中学生だった長男から
何度も言われた言葉です。
ゲームの動きが遅いと怒り、
コントローラーをぶつけることもありました。
「PlayStationじゃダメだ!」
「ゲーミングPCが欲しい!」
「そんなのも買えねえのかよ!」
次から次へと出てくる要求。
中学生になると
行動範囲も交友関係も広がり、
欲しいものも増えていきます。
とはいえ、何でも買い与えるわけには
いきませんよね。
断ればキレる。
理由を説明しても納得しない。
当時の私は、何とか息子に
わかってもらおうと必死でした。
けれど、説明すればするほど
親子バトルになる。
今振り返ると、
私が変える必要があったのは、
息子を納得させる言葉では
ありませんでした。
息子が自分で考えられる
脳の状態をつくるための、
私自身の関わり方だったんです。
買うか買わないかが、親子の力比べになっていた
当時の私は、
欲しいと言われるたびに
買い与えていたら、
子どものためにならないと
思っていました。
今あるものを大切にしてほしい。
何でも思い通りになるわけではないと
知ってほしい。
そんな親としての思いがありました。
ところが、息子は納得しません。
私も、
「そんな言い方をするなら
絶対に買わない!」
と意地になっていました。
私は息子の考えを知ることよりも、
「どうしてわかってくれないの?」
という思いでいっぱいだったんです。
けれど、今になって思うのは、
息子も同じ気持ちだったのかもしれない
ということです。
私は、家庭には
できることとできないことがあると、
わかってほしかった。
息子は、なぜそれが欲しいのか、
自分の気持ちをわかってほしかった。
物は本当に欲しい。
けれど、親子バトルを大きくしていたのは、
物の問題だけではありませんでした。
お互いに
「わかってほしい」という思いが強くなり、
相手の話を聞く余裕が
なくなっていたんです。
正論より先に、子どもが自分で考えられる脳の状態をつくる
発達科学コミュニケーションを学んで、
私が知ったのは、感情と脳の働きの関係です。
感情の脳がイライラで
いっぱいになっているとき、
冷静に考えたり判断したりする
前頭前野の働きは鈍くなりやすくなります。
そんな状態で正論を重ねても、
子どもには届きにくいんです。
まず大切なのは、
「自分の気持ちをわかってもらえた」と
感じられるコミュニケーションです。

感情が落ち着いてくると、
脳にも考えるための余白が生まれ、
今できることと、できないことを
判断しやすくなります。
そこで私は、
息子が欲しいものを口にしたとき、
すぐに否定せず、
まずは話を聞くようにしました。
「それが欲しいんだね。どうしてそう思ったの?」
「そっか、あるとうれしいよね。
他にはどんなことをしてみたいの?」
「へぇ、そうなんだ。いいねぇ」
息子が何を楽しみにしているのかを
聞いたうえで、
「欲しい気持ちはわかったよ。
教えてくれてありがとう」
と伝えます。
そして、私の考えも話します。
「あなただったらわかってくれると思う
から言うんだけど、
この携帯、機種変更できるタイミングは
決まっているんだ」
「欲しい気持ちはわかるよ。
それまでは今の携帯を
使ってもらえると助かるな」
「それまでに、次はどんな携帯が
欲しいか探しておいてね」
この
「あなただったらわかってくれると思うから」
という言葉は、
先に子どもの気持ちを受け止め、
そのあとで親の事情やお願いを伝える伝え方。
「それまでに、次はどんな携帯が
欲しいか探しておいてね」
最後は楽しみも持たせた上で
会話を終えます。
もちろん、
一度伝えただけですんなり納得するとは
限りません。
大切なのは、
子どもを納得させることではなく、
本人が落ち着いて考えられる状態を
育てることなんです。

買い与えることも、感謝を要求することも解決にはならない
我が家では、中学生の間は
iPhoneへの買い替えを待ってもらい、
高校生になってから購入しました。
欲しい気持ちを受け止めることと、
買うかどうかは別です。
子どもが怒るからと、
親が納得しないまま買い与えても、
お互いにしこりが残ることがあります。
また、強く要求すれば
欲しいものが手に入る経験を繰り返すと、
「ごねれば買ってもらえる」と
学習してしまう可能性もあります。
そして、もう一つ。
買ってあげたからといって、
感謝を要求するのも順番が違うんです。
「こんなにしてあげたのに、ありがとうもない」
「私は子どもの頃、こんなことしてもらえなかった」
そう思いたくなる気持ちは、
私にもありました。
けれど、子どもは
「買ってもらったらありがとうと言う」
ことを知らないわけではありません。
知っていることと、
感謝の気持ちが自然に湧いてくることは
別なんです。
自分の気持ちをわかってもらえず、
苛立ちでいっぱいのときは、親も子も
相手の事情まで考える余裕がなくなりがちです。
だからこそ、親の方から
まずは子どもの気持ちを受け止め、
考えるための余白をつくる。
そうすることで、
相手の立場にも目を向けやすくなります。
感謝させるために、
気持ちを受け止めるのではありません。
買うか買わないかは、
親が自分の判断軸で決める。
そして、買うと決めたなら、
感謝や素直な態度を見返りとして求めない。
親子の関係を取引にしないことも、
大切なんです。
毎日のコミュニケーションを変えたら、息子の怒り方も変わった
私がもう一つ変えたのは、
息子がイライラしているときの反応です。
例えば、
一生懸命ゲームをしている最中に
通信が途切れたとき。
「何とかしてよ!」
と怒る息子に、
以前の私は、
「物に当たるくらいなら、
ゲームやめたらいいのに」
と思っていました。
息子が何にイライラしているのかよりも、
イライラした結果、
何をしたかにばかり注目していたんです。
考えてみれば、
私だって、記事を書いている最中に
パソコンが固まったらイライラします。
そんなとき、
「イライラするよね」
と言ってもらえたら、
気持ちをわかってもらえたと感じます。
「そんなこと言っても仕方ないでしょ?」
と言われても、イライラは収まりません。
そこで、息子にもまず、
「それはイライラするよね」
と伝えるようにしました。
もちろん、
物や人に当たる行動を
認めるわけではありません。
けれど、怒った行動ばかりを
注意するのではなく、
その前の気持ちを見るようにしたんです。
息子が好きな動画やゲームも、
正直、私の趣味には合いません。
けれど、私まで好きになる必要はないし、
だからといって否定する必要もありません。
親子であっても、
好きなものや感じ方は違うんですよね。
息子が話しかけてきたら、
「へぇ、そうなんだ」
と、まず話を聞く。
こうしたやり取りを、
一度や二度ではなく、
日常の習慣になるまで
積み重ねていきました。
なぜなら、
子どもを動かすための
声かけテクニックではなく、
親子のコミュニケーションだからです。
「こんなにしてあげているのに、
どうしてわかってくれないの?」
そう思っているうちは、結局、
子どもに自分の期待した反応を
求めています。
私自身、
そこを手放す必要がありました。
そして、
息子が不機嫌なときも、
私まで引きずらない。
お互いに感情的になりそうなら
物理的に距離を取り、
落ち着いたら、
ため息や落胆した態度を見せずに
素知らぬ顔で過ごす。
食事の時間になれば、
「ご飯できたよ」
と、普段どおりに声をかける。
こうした関わりを続ける中で、
スマホの使い方についても
親子で話せるようになり、
息子がキレることは大きく減っていきました。
もちろん、
ゲームに負けて怒ることはあります。
けれど、以前のように物や人に
当たることは減っていきました。
私は、そこに大きな成長を感じました。
怒らなくなることが
ゴールではありません。
怒ったときにも、自分で考え、
行動を調整できる力を育てること。
そのために必要なのは、
子どもを納得させる言葉ではなく、
日常のコミュニケーションを整えることでした。
なお、物を投げたり、
人を殴ったりするほど興奮しているときは、
話し合える状態ではありません。
説得や言い返しで刺激を増やさず、
まずは安全を確保して物理的に距離を取りましょう。
危険が続く場合は、
専門機関の支援も頼ってください。
もし今、お子さんの
要求や暴言に悩んでいるなら、
まずは何かを要求された場面以外で、
お子さんの好きなことや興味のある話を
一つ聞いてみてください。
自分の意見を伝える前に、
相手が何を感じているのかに関心を向ける。
そして、
一度で変わることを期待せず、
習慣にしていく。
子どもが自分で考え、選び、
動ける脳の状態を育てること。
それが、私が子育ての中で
たどり着いた答えです。
「一つ要求に応えても、また次の要求が出てくる」
そんなとき、子どもの中では
何が起きているのでしょうか。
要求が繰り返される背景については、
こちらの記事で詳しく解説しています。

