不登校・勉強嫌いな生徒のための学習塾に聞いた!興味のあることしかやらない子どもが学びに向き合う方法

興味のあることしかやらないタイプの子ども。親としては将来の進路やキャリアを考えると「苦手なこともやった方がいいのでは」と思いますよね。子どもがやりたい事を見つけ、学びに向き合うために必要なことを学習支援塾ビーンズ教室長山本さんに伺いました。

1.興味のあることしかやらないけれど、このままで大丈夫⁉

発達障害の特性がある子の中には、自分の興味のあることしかやらないタイプの子がいます。

進路を決める時期が近づいてくると、親としては

「このままで大丈夫?」「今、苦手なこともがんばっておいた方が将来の選択肢が広がるんじゃない?」

と感じてしまうのではないでしょうか?

我が家には、小学4年生の息子がいます。興味のあることには一生懸命取り組むのですが、苦手なことはなかなかやろうとしません

好きなことはプログラミングで、コンテストに応募する作品づくりに一生懸命取り組んだり、学校ではパソコン係を任され、自分の強みを活かすことで自信がついたように感じます。

最近は私に向かって「お母さん、聞いて聞いて!将来はこんな事がしたいと思っているよ」「あの会社で働きたいな」などと夢も話してくれます。

一方、字を書くことが苦手で、学校の漢字の宿題などは時間がかかり、なかなか進みません。

そんな息子をみていると、自分の強みが活かせる学校の方が合うのではないかと思い、本人が希望すれば、中学受験もいいかなと考えるようになりました。

しかし、息子に中学受験の話をなんとなく振ってみても反応はいまいち。

もし中学受験をするのであれば、配慮してもらえる学校を選ぶこともできるけれど、書字など苦手なことにも取り組んでおいた方が志望校の選択肢も広がるのではないかと感じてしまいます。

自分を知り、将来やりたい事を実現するために「今、これをがんばっておこう」と子どもが学びに向き合うようになるために、何が必要なのでしょうか?

今回は、不登校・勉強嫌いな生徒のための学習塾、学習支援塾ビーンズの教室長・山本浩貴さんにお話を伺いました。

前回のインタビューで頂いたアドバイスは、子育ての中でとても役立っています。ニュースを見ながら親が独り言をつぶやくという方法で、息子と自然に会話ができています。

学習支援塾ビーンズさんの前回のインタビュー記事はコチラ

「勉強した先にこんなに明るい未来が待っている」と生徒が感じられることを大切にされている学習支援塾ビーンズさんの取り組みのお話を、発コミュリサーチャー滝が伺ってきました。

2.自分はどんな人間で何がやりたい?なぜその学校に入りたい?

ーー本日は、よろしくお願いします。
学習支援塾ビーンズさんでは自己分析を大切にされているとお聞きしたのですが、自己分析はどんな生徒さんを対象にされているのでしょうか?

「おもに中3・高3の受験期の生徒です。まずは講師と信頼関係を築いていって、子どもがチャレンジできる段階になったら『志望校を考えようか』『勉強しようか』ということになるので、そのファーストステップとして自己分析をする感じです。」

ーー実際、どのように自己分析されているのか教えていただけますか?

「まず自己分析を担当するのは、トレーニングを積んだ講師です。

私たちがやっている自己分析は特殊で、生徒が生まれた時からさかのぼります。それこそ『どこの幼稚園に通ってた?』『誰と仲良かった?』ということまで生徒に聞いていきます。

生徒が話したことは、講師がメモしていきます。生徒にはとにかくストレスフリーに自由に話してもらうことが大切です。

生まれた時にさかのぼって、どこまでやるかというと、60年後どうなっていたいのか?ということまで聞いていくのです。

そのため、通常の自己分析よりも時間はかかりますね。」

ーー通常の自己分析というと、たとえば大学受験だったら、高校3年間でがんばったことを振り返って書くというイメージですが、ビーンズさんの自己分析は生まれた時から、さかのぼるのですね!

「生徒が将来一番やりたいことって、直前の中高3年間を振り返っただけではわからないことがほとんどです。本人も気づいていない場合が多いのですが、だいたい小学校時代とかに意外ときっかけがあったりします。

私たちが考える自己分析のゴールとは、3つの問いに対して答えを持っている状態です。
3つの問いとは、①自分はどんな人間か? ②将来何がしたいのか? ③なぜその進路先に行きたいのか?です。

それがあって、はじめてエントリーシートを書けるようになっていきます。」

ーーなるほど。自分がどんな人間で将来何がやりたいのかがわかっていて、学校を選んだ理由を語れる状態が自己分析のゴールなのですね。

3.家庭を絶対安心の場にするために◯◯をゆるす!

ーーお話を伺っていて、とても丁寧に時間をかけて自己分析をされていることが伝わってきました。

ビーンズさんでされているような自己分析を家庭でするのは難しいのですが、子どもが進路・キャリアを考えるために、親子の会話の中でできることってどんな事があると思いますか?

「子どもが絶対できないようなこと、実現できないような夢を語ることをビーンズでは『放言』と呼んでいます。そういった無責任な発言ができているということは、すごくいいことです。

まずは、ご家庭で子どもの放言をゆるしましょう

たとえば子どもが『YouTuberになりたい』と言ったとして、それを正論で『稼げるのは一部の人よ』とか言わない。

やりたいっていう気持ちが続いていけば、子どもは色々調べるわけです。そして、機材を買うところから始まり、収録・編集の壁など、いくつかの壁をクリアしていってYouTubeに投稿する。

…と、やっていく中で『こういう苦労があるんだったら、YouTuberはいいや。』と子ども自身が途中で気づいてやめたら、また違うところで放言させてあげたらいいです。」

ーー親がそんなの無理とわざわざ言わなくても、子どもは自分で気づいて新たな道を見つけるのですね。

「保護者は何も言わずに見守る、それが家庭で唯一できることです。

将来の夢があるなら、効率のよいルートに導いてあげないと、と思うかもしれないけれど、それはやらなくていいです。

保護者が進路を『正しく』導いてあげなきゃと一生懸命になるほど、鬼の形相になってしまいます。

将来それをやりたいのなら、このワークをやりなさい、このルートでやりなさいと怖い顔で言ってしまう。

すると、子どもには『お母さん、進路についてしゃべると、すごい表情するな』ということがインプットされるわけです。

そして次に何が起こるかというと、重大な決断をする時にも、子どもは親に進路について相談してくれなくなります。

親として導いてあげたいと思うかもしれないけど、保護者家庭でできることは“ご家庭を絶対安心の場にする”ということです。

そもそも家庭が絶対安心の場じゃないと、子ども達は夢を語れないので、滝さんのご家庭のように『お母さん、僕の夢を聞いて!聞いて!』って言えるのは幸せなことだと思います。

『絶対安心の場にする』というのを簡単に言うと、子どもには、進路とか勉強のことをなるべく言わないでください、ということです。

中学生・高校生になると、親がいくら正論を言ったとしてもそれは伝わらなくなります。

一方で無条件に愛するということは、親にしかできません。

保護者さまに『親は何をすればいいの?』と聞かれた場合、まずお伝えするのが『子どもへの期待値を下げてください』ということです。

どのぐらいまで下げればいいかというと『子どもは生きていてくれさえすればOK』というところまでです。」

ーー無条件に受け入れてもらえるという感覚を子どもが感じられていること、とても大切ですね。

受験が近かったり、進路を決めないといけないタイミングだと親も焦りますが、親が子どもに対してできることってどの時期でも変わらないのでしょうか?

「変わらないですね。家庭を絶対安心の場にすること、放言をゆるすこと。

進路決定は子どもに任せてあげて、その前の段階の『こんな学校あるよ。この学校面白いんじゃない?』などという提案をやっていただければと思います。

ただ提案してみて、子どもの顔が暗くなって、心のシャッターが閉じたり、急に会話が成り立たなくなったら、すぐに話題を変える…ということは覚えておいてください。

そこに気をつけていただければ、『この学校いいんじゃない?』とどんどん提案していいと思います。」

ーー親子の会話ができて、子どもが受け入れられる状態であれば、親が学校の情報を伝えてあげてもいいのですね。他に進路を決める時期までにやっておいた方が良いことってありますか?

「その時期までにできれば“伴走してくれる大人”に出会っているといいんじゃないかと思います。」

ーー伴走してくれる大人ってどんな人のことでしょうか?

「親以外の大人で、それは塾の先生でも習い事の先生でも近所のお兄ちゃんでもいいです。

悩みを無条件に聞いてくれる人、子どもの存在を認めてくれる人、そして時々正論を伝えてくれる人です。」

ーー伴走してくれる大人からのアドバイスであれば、子どもも受け入れやすいということですね。ただ、そういう人に出会うことってなかなか難しいですよね。

「保護者さまは、子どもがそういう大人に出会えるまで、機会を与え続けてあげて欲しいです。塾でも習い事でもいいので。

保護者さまのよくあるお悩みで、『習い事すぐやめちゃいます』というお悩みがありますが、100個やって1つあたれば充分に元はとれます。そのぐらい子どもの興味って難しいし、そこでいい大人に出会うのもさらに難しいので。

子どもが学びに向き合うために、『4階構造』と呼ばれる環境を整える必要があると、私たちは考えています。

1階が『絶対安心の場である家庭』、2階が『伴走してくれる大人』、3階が『青春経験』、4階でようやく『挑戦と努力』になって学びに向き合えるようになる。1・2階がちゃんとしていないと、3階・4階がぐらついてしまうわけです。」

※学習支援塾ビーンズさんが考える4階構造。くわしいお話は、こちらをお読みください。

ーーなるほど。順番にしっかりと積み上げていく必要があるのですね。受けとめてくれる家庭があることで、子どもは安心して家族以外の人と関わることができますよね。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

4.家庭では子どもが外の世界でチャレンジできる土台をつくろう

山本さんのお話いかがでしたか?

おだやかにお話してくださる中にも、熱い想い、ブレない信念をしっかりと持っていらっしゃることが伝わってきました。

息子は今、興味のあることや将来やりたいことをイキイキ話してくれている状態です。お話を伺って、そのことがまず良い状態であるということを知って安心することができました。

「将来の選択肢が増えるように苦手なこともやらせなければ…」という自分の中の思い込みが和らいだ気がします。

子どもを導こうと力を入れ過ぎず、子どもが自由に好きなことを発言できる環境を家庭の中につくっていきたいと思いました。

息子に「今、プログラミングとかパソコン係の仕事、楽しそうにやってるよね?そういう勉強がたくさんできる学校あるけど、今度お祭りとか行ってみる?」と提案したところ、「行こっかー」と明るく返事が返ってきました。

学校の紹介だけしてあげて、あとは子どもが自分から気持ちを話し出すのを待とうと思っています。

また息子の場合は、塾の先生、習い事の先生と現在良い関係が築けているので、これからも親以外の信頼できる大人と関わることができるようにしてあげたいと感じました。

親は子どもが進路やキャリアを決めるタイミングになると、良かれと思って「ちゃんと考えてる?」「これやっておいた方がいいんじゃない?」などと言いたくなるものですよね。

しかし学習支援塾ビーンズさんにお話を伺って、子どもが外の世界に向かってチャレンジしていく土台になるように、家庭を子どもにとって安心できるものにすることがまず親に求められているのだと感じました。

その土台があるからこそ、子どもは外の世界で人と関わり、現実的に自分の将来を考えることができるようになるのだと思います。

教室長:山本浩貴さんプロフィール
中学では不登校を経験されながらも、 高校では一転、生徒会長を務め、 大学時代はマレーシアのストリートチルドレンを支援する海外ボランティアに熱中。 大学卒業後大手メーカーに就職するものの、教育への熱い想いを捨てきれずビーンズへ。講師の採用育成企画に従事する傍ら、教室長として生徒・保護者対応の総責任者を務められています。
山本さんの経歴やお仕事への想いはこちら

学習支援塾ビーンズホームページ
学習支援塾ビーンズ|不登校・勉強嫌いの専門塾【新宿区・飯田橋】 (study-support-beans.com)

※療育を専門としていないので、お子様の状況によっては入塾できない場合がございます。まずはご相談ください。

執筆者:滝麻里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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