算数の文章問題が苦手な発達障害の子は読解力がないのでしょうか?読解力をつける方法を知りたいです【お悩み相談室】

小1の息子は発達障害で、算数の文章問題が大の苦手です。文章読解力が低いのか、問題文の意味自体も分かってなさそうです。全然解けずに固まっている姿を見るとこの先不安でたまりません。

 

小学1年生・男の子のママ

計算はすごく得意なのに、文章問題になると手が止まってしまう。こんなお子さんは発達障害かどうかにかかわらずたくさんいます。お子さんのつまづきを理解して、分かりやすく楽しく取り組める方法をご紹介します。

 

発達科学コミュニケーション
リサーチャー 丸山香緒里

 

【目次】

 

1.算数の文章問題が苦手な発達障害の息子…読解力がない?

 
 
算数で計算問題はよくできていても、文章問題が苦手で全然解けない。お子さんのこんな様子を見ると心配になりますよね。
 
 
特に相談者さんのお子さんは小学校1年生。学習の土台でつまづいているのではないか?と不安になられるのも当然です。
 
 
私の息子は発達障害・自閉症スペクトラムの小学校1年生。宿題や通信教材で少しずつ文章問題が出てきていますが、毎回手が止まって助けを求めてきていました。
 
 
もちろん1年生ですから、文章問題と言っても
 
 
「みかんが1つあります。お友達がもう1つくれました。全部でいくつでしょう」
 
 
というような、とても簡単なもの。このレベルで分からないの!?発達障害だから読解力がないの?と正直焦りました。
 
 
 
 
相談者さんのお子さんも発達障害の診断があるということですが、「発達障害」といっても、子どもによって得意・不得意が全く異なりますし、特性もそれぞれです。発達障害だから読解力がないということでもありません。
 
 
学習障害を疑うケースもありますが、大切なポイントは
 
・この子がどこでつまづいているのか?
・どうやったらスムーズに理解できるのか?
 
ということ。
 
 
まだ1年生、学習のペースもゆっくりですから、子どもに合った方法を見つけるチャンスでもあります!
 
 
 
 
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2.文章問題の読解力をつけるために必要なプロセスとは?

 
 
どうして文章問題が苦手なのでしょうか?まず、文章問題の読解力をつけるためのプロセスを考えてみたいと思います。
 
 
① 問題文を読んで意味を理解する。
②問題を解くためのプランを考える。
③プランを実行する。
 
 
この3つのプロセスすべてにおいて、子どもが苦手とするポイントが隠れています。
 
 
それぞれ、文章問題を回答する際のどの部分にあたるのか、発達障害のお子さんの苦手と併せて解説していきます。
 
 

◆① 問題文を読んで意味を理解する

 
 
問題文の意味が分かっていないと、何を問われているのかも分かりません。文章の意味が分かっていない、という点でこれは国語力がカギになります。いわゆる「文章読解」の問題ですね。
 
 
発達障害のお子さんで、
 
・イメージする力が弱い
・ワーキングメモリに課題がある
 
という場合、問題文の内容から何を求めたらいいのか連想することが苦手だったり、問題文の前半の内容を忘れてしまい、問題の意味が理解できなかったりします。
 
 
 
 

◆② 問題を解くためのプランを考える

 
 
これは問題の内容に応じて、算数のどの要素を使って解くのか考えることです。
 
 
つまり、
 
 
たし算なのか?
ひき算なのか?
かけ算なのか?
わり算なのか?
組み合わせなければいけないのか?
どんな順番で計算するのか?
 
 
ということです。
 
 
問題文の意味が分かっていればプランも考えられる!と思ってしまいがちですが、問題文の状況がどう計算に置き換わるのかを分かっていない場合もあります。
 
 
例えば、
 
・「あわせて」、「全部で」=足し算
・「残りは」、「違いは」=引き算
 
などのキーワードに気づけているのかも、文章問題を解くうえで大きなヒントになります。
 
 
 
 

◆③プランを実行する

 
 
問題文の状況も分かって計算式もできた!だから正答する、というものではありませんよね。
 
 
そう、計算ミスです。
 
 
文章題は、1つの問題に対して3つのプロセスがあるように、たくさんの作業が求められます。そして、算数の文章題は、この3つのプロセスに正答しないと問題は解けません。
 
 
発達障害やグレーゾーンの子どもたちは、最後の計算でつまづくことが意外に多いんです!疲れて集中力を失うとミスも増えます。
 
 
これから学習が進むにつれて、
 
 
・繰りあがり・繰りさがりを間違えてしまう
 
・筆算が必要な計算で数字がていねいに書けかけていないことが原因で、行を見間違えてしまう
 
 
という風に、最後の最後でつまづいて誤答する可能性が高くなります。
 
 
プロセスは合っているだけに、とてももったいないですよね!
 
 
 
 
お母さんがお子さんの文章問題をサポートするとき、まずこの3つのプロセスのうち、どこでつまづいているのかを把握してください。
 
 
問題文の意味が分かっていない子に「計算をていねいにしなさい」「しっかり見直しなさい」といっても解決しません。
 
 
実は、文章問題が苦手な場合、問題文の意味の段階から分かっていないというケースがとても多いのです。
 
 
相談者さんのお子さんのように、問題文を読んだまま固まってしまうという場合は、問題文が理解できるようにサポートするというのが正解です!
 
 
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3.発達障害の子も読解力をつける!苦手な文章問題を攻略する3つの工夫

 
 
文章題の問題文が分かっているか、これが最大のポイントです。ただ数字だけ抜き出して計算式を組み立てていても、その場しのぎにしかなりません。
 
 
お子さんが問題文を理解できるように、お母さんができる工夫が3つあります。
 
 

◆①問題文を音読する/お母さんが読み上げる

 
 
子どもが問題文を理解できているかをチェックするのに便利なのが、問題文の音読です。
 
 
問題文の意味が分からずに読んでいる場合、読み方がたどたどしかったり、文節の切り方が違ったりすることがあります。
 
 
お母さんと一緒に読みながら、意味のまとまりを整理するだけでも理解しやすくなります。
 
 
また、お母さんが問題文を読んであげるのも効果的!読んで理解できなくても、聞いて理解できる子もいます。
 
 
単純に読むのがめんどくさくて頭に入らない、読むのに必死で意味まで考えられていない、という可能性もありますね。
 
 
「自分で読みなさい」と促すよりも、まずお母さんが読んであげる方がスムーズですよ!
 
 

◆②問題文のイラスト化・図式化

 
 
一緒に問題を読みながら、イラスト化・図式化して理解を促すものオススメです。
 
 
例えば、 「Aちゃんはチョコレートを3つ持っています。Bちゃんに1つあげたら、残りはいくつですか?」 という問題を図式化してみましょう。
 
 
A ○○○
  ↓
B ○
 
 
単純化するとこのようになります。子どもに一文ずつ説明しながら、図を書いていきましょう。
 
 
子どもが具体的なイメージを持つためには、言葉でかみ砕いて説明するよりも、イラストや図を使って視覚的に伝えた方が有効です。
 
 
おはじきやビーズなど、具体物を使用するのもおすすめです!
 
 
せっかくお母さんと一緒に取り組むなら、文章問題をロールプレイングして「あげた」「もらった」を体験的に学ぶのも効果的です。
 
 
これは、文章問題が簡単な低学年でしか通用しないので、やるなら今です!
 
 
特に発達障害やグレーゾーンの子どもは、言葉で説明するよりも視覚的な情報の方が分かりやすい場合があります。
 
 
学校の授業は、先生の口頭説明が中心。学校の授業が理解しにくいなら、おうちでは学校とは違うアプローチで学ぶことを意識してください。
 
 
息子の担任の先生によると、低学年のうちは、図式化してもいいし、おはじきやブロックなどの具体物を動かしてもいいし、指を使ってもいいそうです。
 
 
たくさん動かして数量を把握することが大事とのことですので、「指を使わない!」と指導されているならストップしてくださいね。
 
 

◆③理解しやすい状況に置き換える

 
 
「Aちゃんはチョコレートを3つ持っています。Bちゃんに1つあげたら、残りはいくつですか?」
 
 
この問題、お子さんは楽しんで取り組めるでしょうか?
 
 
Aちゃん、Bちゃんって誰?知らないし!
チョコレート?別にいらないし!
 
 
こんな風に興味が持てないと、ますます問題文が分からなくなります。理解する必要性を感じない、というところでしょうか?
 
 
興味がないことにはなかなか取り組めないのが、発達障害・グレーゾーンの子どもの特徴ですよね。
 
 
そこで、問題文に出てくるものを適宜お子さんの好きなものに置き換えてみてください。
 
 
「けいすけ君はポケモンカードを3枚持っています。だいき君に1枚プレゼントしたら、残りは何枚ですか?」
 
 
問題文の構成や答えは同じですが、こちらの方が楽しく取り組めますよね!
 
 
これは状況を理解するための作戦ですので、今後ずっと置き換えないといけない、というものではありません。
 
 
まずは子どもが状況をイメージしやすいような工夫をしていきましょう!
 
 
食べたくもないチョコレートよりも、大好きなポケモンカードが増えたり減ったりするのは、子どもにとって死活問題です!具体的な状況がイメージしやすくなりますよ。
 
 
ただし、あまり身近な人や大好きなものに置き換えると、「けいすけ君はポケモンよりも遊戯王が好きだし!」と設定に注文がつくこともあります。こうなると、逆になかなか進まなくなってしまいます。
 
 
お子さんが望むように状況設定してあげるか、好きでも嫌いでもないけれど子どもがイメージしやすい、ほどほどの距離感のものに置き換えるかがおすすめです。
 
 
今のところ、息子の宿題や学習は私がつきっきりで対応している状態ですが、この3つのポイントをすべて使うとスムーズに進むようになりました。
 
 
今では、まず自分で問題文を読んで、えんぴつで○を書きながら取り組んでいます。私は見守るだけで大丈夫ですので、かなり楽になりました!
 
 
また、息子の学校では、「あわせて=足し算」などのキーワードに着目した解き方を教えているようです。
 
 
キーワードを覚えてからは、息子は自分で問題文を読みながら「違いだから…引き算!」とキーワードを見つけて取り組んでいます。
 
 
最近は学年末ということもあり、問題が大量に出される計算プリントよりも文章問題を好むようになってきました!
 
 
文章問題は計算力だけでなく、国語力やイメージ力なども必要で総合的な能力が必要です。発達障害のお子さんだけでなく、「学習」そのものに慣れていない1年生にとってはなかなかのハードルです。
 
 
こうしたキーワードをしっかり使いこなすのも、子どもの理解を促す上で大切なことだと思います。
 
 
 
 
いかがでしたか?発達障害の有無に関わらず読解力をつけることはこれから学年があがり、授業科目が増えていく上でとても大切になって行きます。
 
 
ここで、相談者さんに覚えておいていただきたいことあります。
 
 
それは、小学1年生の算数の文章題は、小学1年生の読解力・語彙力や常識の範囲で解ける問題しか出ない、ということ。
 
 
文章題が苦手、手が付けられないということは、単純に算数だけの問題ではなく、他の教科にも影響している可能性があります。
 
 
まずは、文章題のどのプロセスでつまづいているのか見極めながら、文章題を克服するとともに、国語のつまづきはないか?をスクリーニングするきっかけにしていただければと思います。
 
 
国語力を鍛えるための方法についてはこちらで解説しています!併せてお読みくださいね。
 
 
 
 
 
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執筆者:丸山香緒里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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