発達障害(自閉症スペクトラム)の娘は人との会話が苦手です。嫌なことがあっても言葉で表現できずひどく落ち込んでいたりします。医師からは引きこもりやすいタイプなので気を付けるようにと言われたのですが、このままでは、ますます引っ込み思案な子どもになるのではと心配です。
7歳女の子のママ
発達障害の子どもは、うまく会話ができなかった経験が積み重なるとますます人とのコミュニケーションを避けようとして心配ですね。お子さんも言いたくても言えない気持ちを家まで持ち帰っているのでしょう。今回はそんな発達障害の子どもが自分の気持ちを表現しやすくなる、お家での対応法をお伝えします。
発達科学コミュニケーション
リサーチャー 井上喜美子
【目次】
1.発達障害の娘のこんな様子に困っていました
2.なぜ?ますます引っ込み思案な子どもになる負のループ
3.わが家で実践してみた!かんたん対応法
◆自然に会話する量を増やす
◆肯定的な反応をする
4.見えてきた変化と娘が自分を表現する方法
1.発達障害の娘のこんな様子に困っていました
発達障害、特に自閉症スペクトラム(ASD)の子は、引っ込み思案で会話がうまくいかないなど意思疎通で困ることが多いのではないでしょうか。
私にもASDの小学4年生の娘がいますが、やはり人との会話は苦手なようです。
小さいころから話ができないわけではないけれど、こちらの質問にはきちんと答えられず、グズっては何に困っているのかよく分からないことがよくありました。
美容院で好みの長さを聞かれているのに、恥ずかしがって答えなかったり、お友達にばったり会って、話しかけられているのに私のそばから離れられずグズグズ…。
学校でも自分の思いをきちんと言えないことで、勘違いをされたり、思うようにいかないもどかしさから学校へ行き渋ることもありました。
そんな様子を目の当たりにするたびに、なんでちゃんと言わないの!言わないと分からないでしょ!とイライラしたことも数えきれません。
2.なぜ?ますます引っ込み思案な子どもになる負のループ
発達障害、なかでも自閉症スぺクトラムの子どもは、多動や衝動性が特徴のADHDタイプの子どもと比べると、症状が目立ちにくいことがあります。
例えば、周りに合わせて行動できたり、分からない話にも「うんうん」とニコニコしていられる場合には、周りから発達障害があると気付かれないこともあるのです。
そのため、たとえASDでこだわりがあったり言葉の発達がゆっくりであったとしても大人しい、ただ引っ込み思案な子どもなんだなと思われてしまいがち。
はっきり言わないから…と親や周りの大人も本人の気持ちをくみ取ることが当たり前になってしまいます。
子どもも人と会話をしなくてもなんとかなるわけですから、会話に自信が持てないまま、ますます引っ込み思案になってしまいますね。
わが家の娘も自分の意に沿わないことがあっても、どうして欲しいか自分の言葉で説明するのではなく、グズる、すねるという方法で済ませていたようです。
口下手で奥ゆかしいというのは、これからの時代にはとても通用しません。自分が思う人生を歩むためには、自分の言葉で表現する力が絶対に必要だと思います。
わが家でも苦手で済ませてしまうのではなく、少しで自分の気持ちを言葉で伝えられるようになればと思い、子どもに対して実践した対応法を今回ご紹介したいと思います。
3.わが家で実践してみた!かんたん対応法
◆自然に会話する量を増やす
私がおススメするのは、まず普段から意識して親子の会話量を増やすことです。
最近の家庭事情では核家族が主流で、学校から帰っても1人という家も少なくありません。
この状況では会話を増やすには大変かもしれませんが、だからこそ毎日、子どもに気持ちを向けて話をする時間を意識的にもってほしいのです。
会話は、1人ではできませんから、まずはお母さんからたくさん話しかけてみてください。
わが家では、お風呂に一緒に入った時か寝る前のゆったりタイムなど、気持ちが落ち着いている時にしっかりと向き合う時間を持つようにしました。
そして、今日あった「良かったこと」を順番に話すのです。
これは今日のことを振り返って考えてみる、そして自分の言葉で表現するという脳を使う機会になるのです。
また、会話を増やすことで日常的にお母さんが話す言葉をたくさん聞き、こういう場合にはこんなことをしゃべるんだ、という当たり前の会話を自然に聞くことができます。
お母さんとの会話は、うまく言えなくてもだれも困りませんよね。
お母さんからの言葉のシャワーをたくさん浴びて子どもが自分の気持ちを話す抵抗感を低くしていって下さいね。
◆肯定的な反応をする
仕事や家事、育児で忙しい毎日を送っているお母さんはつい、
「早く○○しなさい!」
「まだ○○やってないの?」
「まだ○○やってないの?」
といった、指示や注意を促す言葉が多くなっていないでしょうか?
もしそうだとすると、子どもはお母さんの声掛けにいいイメージが持てなくなっているかもしれません。
「また何か怒られるかな」「何を注意されるのかな?」と身構えてしまうようでは、親子の会話を増やしていくことが難しくなります。
まずは、子ども自身が話をしたいと思えることが大切です。
そのためには、子どもの話の内容がどうであれ、まずは一度受け止めて話を聞くという態度でいてあげてください。
「そうだったのね」
「大変だったね」
「よく頑張ったね」
「大変だったね」
「よく頑張ったね」
と、肯定的な言葉かけをすることで、お母さんが自分のことをよく分かってくれているという安心感を持ち、また話を聞いてもらおうという気持ちになってきます。
4.見えてきた変化と娘が自分を表現する方法
自分の気持ちを表現することが苦手、特に困っていることを伝える場面では固まって何も言えなかった娘。
しかし、家で話をする機会を増やしていくうち、最近では学校でも何かあれば自分から相談してくることが増えてきたと、担任の先生から伺いました。
スムーズにはなかなか伝えられない気持ちも、自前のノートに書いてそのノートを持って話をするという方法も取り入れているようです。
周りから見るとちょっとした変化かもしれませんが、少しでも自分の気持ちを表現しようとする娘の姿を見て、涙が出るくらいうれしく感じました。
もちろん、まだうまくいかずソファに突っ伏したりする日もあります。
ですが、こうした変化をきっかけに、少しずつでも人との会話に自信をつけながら成長していってくれたらと期待してやまないのです。
引っ込み思案の子どもは自分の気持ちや考えを自分の言葉で話すのはとてもハードルが高く、急な成長とはいかないかもしれません。
けれども、家庭での関わりや会話を工夫することで、自信がついてくるとだんだんと自分の気持ちも表現できるように変わってきますよ。
継続して取り組んでもらえたらうれしいです。
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執筆者:井上喜美子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)