発達障害・自閉症スペクトラム(ASD)の子は、同じ出来事、場面をみていても、思考の偏りや、捉え方のズレにより、周囲の人から理解されず悩んでいることがあります。お母さんが一番の理解者となって、お子さんを生きやすくできる3ステップ対応をお伝えします。
【目次】
1.誰も自分の気持ちなんてわかってくれない!息子の悲痛な叫び
私には自閉症スペクトラム(ASD)の息子がいます。息子が小学校低学年のころから、自分の気持ちがわかってもらえないと悩んでいました。
行動や発言が周りと違うことを心配するあまり、子どもに対して
「ふつうはそうしないよね」
「ふつうの人は、まあいっかぐらいに思うよ」
と言う風に、「ふつうは」という言葉をよく使っていました。
こだわりが強く、過剰反応してしまうということが多い息子に、私は「ふつうはこうするよ」と“一般的な常識の範囲“を教えようとしていたんです。
ところが、それはうまくいきませんでした。
ある日の学校の授業でのこと。教科書に息子の同じ名前の子が出てきました。
するとクラスの何人かが「○っくん、○っくん」と同じ名前の息子に向かって言ってきたそうです。
「バカにされた」「呼ばれて嫌だった」と感じた息子は、教科書を机に叩き付けたそうで、教室の中はシーンとなってしまったそうです。
この話を聴いた私は、
名前をニックネームで呼ばれただけなのに…
周りの子は意地悪で言ったわけじゃあるまいし…
むしろ、愛嬌を込めて息子を呼んでくれたんじゃない?
と感じました。
「『そうでーす、僕が○っくんでーす』って返しとけば良かったんじゃない?ふつうは軽く流すことだよ」と伝えたのですが、それが息子は気に食わなかったのです。
このような私と息子の感じ方、捉え方の違いやズレが原因で、理解し合えない事が多くなっていきました。
すると息子は私の言葉に安心するどころか、反発する一方。癇癪も激しく、ついに「オレの気持ちなんてわからないくせに!」と言われてしまいました。
息子を思って、考えて、一緒に悩んでいるはずなのに、全ての努力が泡のように消えていく日々を過ごしていました。
2.発達障害の子は思考の偏り・捉え方のズレから傷ついています
これを読んでいるお母さん達の中でも、同じような事を言われ、心にグサグサと刺さった事がある方もいるでしょう。
発達障害、ASDの子の特性に、同じ出来事、場面を見ていても周囲の人と感じ方、捉え方にズレが生じているということがあります。
それを否定されることは、自分自身を否定されている気持ちになるのです。
そのため、学校や友達と過ごしている時に、感じたズレで傷ついていることがあります。
そのため「ふつうは」は息子にとってはNGワード、自分が否定されていると感じる言葉だったんです。
それに気が付かず使い続けた結果、私は息子から自信とやる気を奪ってしまっていました。
そして、感情の限界が簡単に来やすいことも、発達障害 ASDの子の特徴でもあります。
そのいっぱいになってしまった感情に耐えられず、癇癪を起こす。
自分でコントロールできない感情から、自分を守るために暴言を吐いたり、攻撃的になったりします。
そのため、その場の感情で言い合いになってしまったり、お子さんの気持ちを傷つけてしまわないためにも、お母さんが気を付けたいポイントがあります。
3.子どもに「ママが一番わかってくれてるよね」と言われるようになった会話術123
捉え方のズレから生じた会話の行き違いで、お子さんが癇癪を起こしそうになった時は、ステップを踏んで会話をすることで、自分と子どもの感情を落ち着かせ、穏やかな状況に早く持っていくことができます。
会話のステップはとてもシンプルです!
◆ステップ1:まずはママがクールダウン
子どもが感情がいっぱいいっぱいになって、癇癪を起こしたり、興奮状態の時には、ママ自身も3秒、または6秒、数えながら、感情を落ち着かせましょう。
◆ステップ2: 子どもの気持ちを受け止める
「さっき言われた事、嫌だったんだね」と、子どもが感じたことを認めます。
ママはあなたのこと理解できるよ、という気持ちを伝えるための準備です。これで子どもの聞く耳がママの方に向きます。
◆ステップ3:子どもに共感する
子どもが落ち着いてきたら、カウンセリングをしているように質問をしてみます。
「今日学校で何か辛かったの?」とか
「今日どんなことがあったの?」などと質問し、子どもからイライラの原因を探り出します。
子どもが話してくれた事に同意、共感します。
自分の思いとは違ったとしても、子どもの感じ方を認めてあげましょう。
そして、気持ちを落ち着けて話ができたことを褒めます。
「ママはわかってくれた」、「自分の気持ちをわかってもらえた」それが、子どもの安心や自信に繋がります。
すると、もっと色々な気持ちを話してくれたりします。
ここで、「ふつうは」などと言い出してしまうと、逆戻り!
また子どもの感情が興奮状態になってしまいます。
自分の気持ちを受け止めてもらえた、解ってもらえた、共感してもらえた、そのことが子どもの感情をすーっと落ち着かせます。
「そう思ったんだね」や、「その気持ち、ママわかるよ」の言葉はおまじないの様に、子どもに入っていくのを感じられると思います。
また同じ様な状況になった時に、これを繰り返していくことで、子どもも落ち着き方を覚えて行くことができます。
そして、その心地よさを分かった子と、お母さんの間に信頼関係ができて行きます。
実際息子には「ママは一番オレの気持ちをわかってくれてるよね」と言ってもらえる様になりました。
日々の悩みや苦労が報われた瞬間でした。
ぜひやってみてください。
ママと子どもの毎日を変えるヒントが届きます!
執筆者:五上亮子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)