目が合わない、質問したことに答えが返って来ない。幼児期の子どもの発達障害の特徴として聞いたことがあるかもしれません。コミュニケーションが苦手、だけでは済まされない本人たちの苦悩が隠されています。今日はそんな子どもの困った!を解説します。 |
【目次】
1.発達障害の子どもの目が合わない理由
目が合わない、返事をしない、オウム返し…発達障害の子どもは幼児期のコミュニケーションにおいて、こういった困りごとが特徴としてよく挙げられます。
なぜ目が合わなかったり、返事をしなかったりするのでしょうか。
それは、発達障害の子どもの脳の特性が関係しています。
特に幼児期には、言葉の習得が未熟であり、また何かをしながら何かをする、と言った2つのことを脳内で同時に処理することも苦手です。
会話をするときに「相手の目を見て話しましょう」と言われますが、これは彼らにとっては難しいということを理解して欲しいです。
幼いころ、お絵かきで人を書き始めてすぐのころは、まずは〇の中に目や口だけのものだったりしませんか?
当然、人は人を認識するときに、視覚としては顔を最初の情報として受け取ります。 成長するにつれて、鼻や耳、手足をつけて表現するようになってきます。
人の顔というのはたくさんの情報を与えてくれるので、 発達障害の子どもが話を聞くときに、その情報が邪魔することがあります。話を聞こうと集中するからこそ、視線を外しているのです。
2.返事をしない、のは無視しているのではありません
うちの息子は、自閉症スペクトラムの診断が出ている5歳の男の子です。「〇〇くん」と呼んでも返事をしないことも1年くらいまでは頻繁にありました。
テレビや遊びに集中しているときはもちろんですが、ただぼーっとしているようなときに呼んでみても返事をしないことがあったのです。
このぼーっとしている、がポイントで…これ、脳内の情報を処理している時間なんです。
発達障害の子どもは、私たちよりたくさん外部刺激を受けて生活しています。感覚の敏感さがあると、光、音などが苦痛の種になっていることもあります。
また、コミュニケーションが苦手なため、お友達ともうまく行かなかったりと、人間関係でも必要以上に辛い思いをしていることもあります。
感じ方、受け取り方の違いから、より多くの刺激や情報が入ってくるのです。私たちも同じ環境の中で生活していますが、知らず知らずのうちに、必要な情報だけを自動的に入れているのです。
例えば、今、あなたはお皿を洗っていますがTVは付けっぱなしです。音楽、ニュース、情報番組で何やらにぎやかな声は聞こえています。けれど、流しているだけで特に聴いていない。
そんなときに、「天気予報をお伝えします」と流れて来ました。水を止めてテレビに意識を向けます。
こんなことって、ないですか?
それまで流れていた情報は耳には届いているけれど、聞き流しています。けれど、天気予報、という言葉には反応できるんです。
それは、必要なことにアンテナを張っているから。人は知らず知らずのうちにこうやって不要な情報は遮断して、必要な情報だけをインプットしようとするのです。
でないと、情報過多で脳が疲れてしまいます。発達障害の子どもの中にはこの遮断ができずに、情報や刺激が入りすぎて苦しんでいる子も多いのです。
我が家の自閉症スペクトラムの診断が出ている5歳の息子も、光や音にとても敏感です。
(そうかと思えば、痛みや体調の変化には鈍感です)
(そうかと思えば、痛みや体調の変化には鈍感です)
息子もふとしたときに、「ぼーっ」としていることがあります。ほんの短い、ちょっとした時間なのですが、脳を整理している大切な時間と思って、声をかけずにそっとしておくようにしています。
また別のケースで、何かに集中しているときは、単に声が届いていないだけ、ということもあります。その場合には、本人の視界に入って声をかけるようにしてあげてください。
声をかけるときには、ちょっと、や、ねぇねぇ、などではなく、名前で呼びかけてあげてくださいね。自分の名前と視界に入ったママの顔で、気付きやすくなります。
3.「発達障害の子は1人が好き」のウソ
発達障害の子ども、特に自閉傾向のある子は集団行動が苦手で、1人で遊ぶのが好き。そんな誤解をされているケースがあります。「自閉」という言葉の印象もあるかもしれません。
集団行動が苦手なのは、みんなと同じ行動をする理由が本人の中になかったり、他のことに興味があるからです。
そして、それだけではなく、皆と関わると傷つくため、あえて1人でいる場合も…
言葉をストレートにしか受け取れず、周囲からすると「空気の読めない子」と思われてしまったり、反対に悪意があってわざと相手の意図を無視したり、ストレートな物言いをしたりしているように誤解されることもあります。
その態度が自分勝手とか横柄な子どもと、みんなから避けられてしまうことも。
けれど、本人は誤解されて傷つき、本当はみんなと一緒に遊びたいけど遊べない。そして、衝動的にたたいてしまったり、自分が同じようにできないことにも気付いているのです。
全ての人とは言いませんが、ほとんどの人間が人と関わりたいと思っています。
関わり方を知らない、もしくは自分を守る手段として、1人でいることを選択しているだけなのです。
集団行動ができなかったとしても、1人で遊んでいることが多かったとしても、ずっと1人でいたいわけではなく、1人でいたいときもある、というだけです。
息子も今より幼い3歳のころ、園にお迎えに行っても1人で遊んでいることが多かったです。
けれど、お友達がブロックで作ったお城や電車をわざと壊しに行ったりはするのです。当然ながら、お友達には泣かれ、先生には怒られるという結末です。
1人で遊びたいときもあったと思います。けれど、やっぱりお友達にも興味があったのだと今なら思います。
ブロックで1人で何か作るのは楽しいけれど、お友達と作ったものを合体したりして一緒に遊ぶ、その遊び方が分からなかったのでしょう。
そういえば、当時は今より目を見て話すことが少なかったようにも思います。私の声かけも無視することも多かった…息子に辛い思いをさせました。
もしお子さんが、あまりしゃべらなかったり、コミュニケーションを取ろうとしなかったり…そんな風になっていたら、ママにやって欲しいことが1つだけあります。
安心感を与えてあげること。
視線があっていなくても、視線を向けて、笑顔で話しかけてください。目が合っていなくても、反応がなくても、子どもの耳にも脳にもその言葉は届いています。
そして、たくさん抱きしめてあげてくださいね。触れられるのが嫌なお子さんもいますので、ケースバイケースではあります。
もしそうでなければ、人との触れ合いが安心できるものだということをお母さんとのコミュニケーションの中で学ばせてあげることができます。
笑顔と安心感。昔の私ができなかったことを、この記事を読んでくださっているママにはぜひやって欲しいと思います。
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執筆者:瀬名香織
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)