お子さんは、明日のしたくを何分で整えられますか?1年生の秋、発達障害グレーゾーンの息子は、なんと1時間かけていました。毎日これは母もしんどい!ADHD脳の特性に寄り添い、約半年で10分まで時短できた、コルクボードを使った工夫をお話しします。
【目次】
1.発達障害グレーゾーンの息子のマイペースっぷりをご紹介
2.翌日の支度に1時間かかっていた過去
3.ADHD脳を時短に導く、ふたつの知識
◆分解が重要
◆聴覚より視覚が得意
4.支度時間が10分に!コルクボードを活用した行動の可視化
1.発達障害グレーゾーンの息子のマイペースっぷりをご紹介
秋風の気持ち良い季節になりました。夏休み明け直後の、ちょっとした緊張感はどこへやら。
朝晩は涼しくて、お布団の心地よさといったら!大人だって、たる~んとなりがちですよね。
かといって1日が24時間なのはいつでも一緒。それどころか、お昼が短くなったぶんだけ、なんだか気が急きます。秋の日はつるべ落とし。
お子さんは、明日のしたく、自分で整えていますか?低学年のお子さんなら、まだお母さんのお手伝いが必要かもしれませんね。
しかし!自分でやろうとしているなら、まずはそれだけでもハナマルです!
では、どのくらい時間がかかりますか?
10分?素晴しい!
30分?もうちょっと短くできそう?
昨秋まで、わが家の発達障害グレーゾーンの息子(当時1年生)は、平均1時間かけていました。私がつきっきりで急かしてこのありさまです。
1時間で仕上がればまだ良い方。放っておいたら、途中で投げ出すか、かんしゃくを起こすか。
夕飯・お風呂・就寝準備であわただしくなる、つるべ落としの夕刻に、1時間も割かれるのは正直しんどい!
このままでは、ハナマルをあげられるテンションにまで持っていけません。
しかし、2年生になった彼は今、帰宅後10分でしたくを終えて、元気に公園に出かけていきます。
何をどうしたら、6分の1の時短がかなったのでしょうか。
2.翌日の支度に1時間かかっていた過去
したくに1時間かかっていた頃の状況は、こんな感じでした。
「明日の支度するよー」と声をかけてから、ランドセルを開けるまでにまず20分(笑)
ようやくランドセルを開けると、くっちゃくちゃのプリントが散乱しています。プリントの裏には授業中に描いたと思われる、大好きな電車の絵がびっしり。1枚ずつ解説が始まります。
それ、後でもよくない?
母、1回目の「今、なにしてるんだっけ?」発動。
国語の教科書に挟まっていた鉛筆を削りに行ったと思ったら、教科書を読みふけっています。
立派だけど今じゃないし!
母、5回目の「今、なにしてるんだっけ?」
やっと明日使うものを詰め始めたと思ったら、給食袋をどこまで高く投げてキャッチできるかゲームがスタート!
母、20回目の「今、なにしてるんだっけ?(怒)」
多動衝動性障害(ADHD)の傾向が強い息子は、気の乗らない活動をさせられている時の、気の散り方が尋常ではありません。
また、好奇心が非常に強く、どんなものも自分を楽しませる遊び道具に変えてしまうという才能があります。(余談ですが、これはぜひ伸ばしていってほしい能力なので、悩ましいところです…)
発達障害グレーゾーンの子どもに届く話し方は、「笑顔で、ゆっくり間を取って、優しい声で」。
理解しています。理解はしていますけど、毎日1時間も付き合わされていると、もう導火線が残り2㎝です。
入学当初は、慣れてきたらできるようになるかもしれないから…なんて、淡い期待を抱いていたわけですが、繰り返すだけでは何も変わらず、ただ私の眉間のシワが増えてゆくだけでした。
3.時短に導くふたつの知識
ところで、ご存じですか?子どもの脳は未熟なんです。
失礼しました。そんなこと誰でも知ってますよね。子どもは小さい大人じゃありません。
しかし、ポイントはココ。
未熟な脳、とりわけ発達障害の特性を持つ子どもの脳には、正しく届く声のかけ方をしてあげないと、親子で遠回りをして、ヘトヘトになってしまいます。
その結果、親子関係が悪化してしまうことにもなりかねません。
その未熟な脳に届く声掛けをするために、知っていると得する情報は様々あるのですが、ここではふたつだけお話しします。
◆分解が重要
「明日のしたく」。
簡単なことのようですが、分解すると、大きく2段階に分けられます。
①「何するんだっけ、どこから始めればいいのかな、どうやって支度しようかな」と、考える。
②決めた順番で動き始める。
この二つ、どちらがタイヘンそうですか?もちろん、①ですね。
ランドセルが開くまでに20分かかっていた理由がこれです。ダンドリを頭の中で組まなくてはいけないから、タイヘンなんです。腰が重いんです。
①を肩代わりしてあげたら、かなり負担が減りそうな気がしませんか?
旅行に置き換えてみましょう。
移動手段も宿も食事処も全て自分で調べて手配すると、出発までにたいへんな時間と労力を要します。
かたやパック旅行。集合場所まで行けば、あとは決められた旅程に従うだけで、良い思い出を作ることができます。
お手軽なのは断然、後者ですね。
旅行の準備ならワクワクもできますが、明日のしたくにワクワクできる子どもは珍しいでしょう。
◆聴覚より視覚が得意
発達障害の子どもは、聞くより見ることで情報をキャッチするのが得意な場合がよくあります。
具体的には、声で指示されるより、文字や絵で指示してもらったほうが、スッと頭に入ってきやすい。
学校の先生から、「話を聞いてなくて、着替えとか遅れちゃうんですよね」なんて言われたことがあるお子さんは、まさにこのタイプ。
目で確認できれば良いわけですから、黒板に時間とやることを書いておいてもらうと、それだけで解決できる場合もあります。
興味の対象が切り替わるのも、耳じゃなく、目がきっかけなんですね。
おうちだと、お母さんが何度声をかけても遊ぶのをやめないけど、アイスクリームのお皿がさっと視界を横切ると、「あっ!アイス食べたーい!」と食卓についてる(笑)
これ、お母さんの声を無視しているわけじゃなくて、本当に聞こえていない可能性が高いんです。
「何度言ったらわかるの!!」
このセリフ、何万回クチにしたかわかりません!って聞こえてきそうですが、残念ながら、お子さんは心の中で、こう思っているかもしれません。
「え…なんでお母さん、いきなりキレてんの?なんかヤバそうだから、とりあえず黙っとこ。」って。
なぜなら本当に聞こえていないから。
そうだとしたら、繰り返されるのは必定です。
4.支度の時間が10分に!コルクボードを活用した行動の可視化
私は、この二つの知識を使って対策を練ってみました。
100円ショップで縦長のコルクボードを買ってきて、7枚のカードを上から順に貼りました。
1.ランドセルから全部出す
2.本とプリントに分ける→プリントは母へ
3.宿題をする
4.鉛筆を削る
5.予定表を確認
6.給食袋を用意
7.全部ランドセルに詰める
どうでしょう、分解して可視化できました。絵の上手な夫のイラスト付きです。
私は、コルクボードを持ってニコニコと数字を指さすだけです。
別の何かに気を取られて脱線しそうになったら、ボードと笑顔で息子の視界に割り込み、指さし。
この対応をはじめたところ、みるみる時間は短縮していき、1週間もすると30分になりました。
もちろん、気分が乗らない日もありますから、行きつ戻りつしますが、1年生が終わる頃には20分でできるようになっています。
「ほら、昨日より3分も早く仕上がったよ!」
「ねえ、1カ月前と比べてみて!遊ぶ時間が増えたね!」
ほめてほめてほめまくって、定着させました。
これが、6分の1の経緯でした。ポイントは「分解」と「視覚への訴求」。
みなさんならどんな作戦を練りますか?
お子さんのことを誰よりもよく知っているお母さんだからできる、ぴったりの対策を見つけてくださいね。
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執筆者:髙田 礼
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)