発達障害、自閉症スペクトラムの診断が出ている5歳の娘のことで相談です。声をかけて片付けに誘いますが一向に片付けようとしません。幼稚園も休園中なので、今のうちに少しでも片付けの習慣をつけたいと思っています。どのように対応すればよいでしょうか。
5歳・女の子のママ
私の息子も片付けが苦手です。声をかけても「後でやる」と言って一向に片付けませんでした。でも、ちょっとした環境設定と声かけを変えることで、息子に少し変化が出てきたんです!どんな工夫をしたかご紹介しますね。
発達科学コミュニケーション
リサーチャー 瀬名香織
【目次】
1.発達障害・幼児期の子どもはお片付けがヘタでもOKです
休園・休校が長引いているし、子どもが片付けをせずお家の中がなかなか片付かない!
そんな悩みに頭を痛めているお母さんも多いのではないでしょうか。
相談者さんのように、お休み期間に中に少しでもお片付け習慣を身につけさせたい、と思っている方もいらっしゃるかと思います。
私には6歳になる1人息子がいます。発達障害、自閉症スペクトラム(ASD)の診断が出ており、片付けスキルは皆無と言っても過言ではありませんでした。
お目当てのおもちゃを出すのに、箱に入っているおもちゃをとりあえず全部出し、そのまま放置。
服も脱いだら脱ぎっぱなし…私自身も片付けが苦手なこともあり、休日はあっという間に足の踏み場がなくなるほどに散らかります。
片付けられないなら出さないで欲しいので「使いたいおもちゃだけ出してね。」などと声をかけますが、バッシャーンと箱をひっくり返します。
いつも散らかった状態だと、本当に必要なときに必要なものを見つけ出すのに時間がかかります。それに、そもそも探す気にもならないということにもなりかねません。
そういう意味では幼児期の間に、就学前に少しでも、という相談者さんの気持ちもよく分かります。
私も少しは片付けるという意識を持って欲しいな、と思っていたのでお片付け問題には試行錯誤して取り組みました。
2.片付けの障害は何なのか?
娘さんにお片付けをして欲しいときに、相談者さんはどんな風に声をかけていらっしゃいますか?
声をかけるにも、お片付けするうえで娘さんの障害になっているものは何か?を考えてみると良いかもしれません。
発達障害・グレーゾーンの子どもが、お片付けが苦手な理由はいくつか考えられます。
まず、そもそも片付け方が分からなかったり、お片付けに興味が持てないという可能性があります。
ASDの診断が出ている息子は、興味の幅が狭いため、自分の好きなこと以外のことは殆ど気にしていません。
自分の世界を邪魔されると強い不快感を感じますが、部屋が散らかっていても不快にはならないようで、「部屋が散らかっている」という状態を認識さえないように感じます。
そして、好きな遊びやTVに夢中なときは、「お片付けしよう」という声かけは単なる自分を邪魔する音として認識され不快感しか感じません。
また、タイミングよく片付け始めたとしても、他のおもちゃに目が行き、また遊びだすといった状況に…
視覚優位の傾向があるため、目に入ったものに注意や興味が行きやすいという特性も、お片付け習慣が身につかない理由でした。
3.こうすればお片付けも楽しくスイスイ
あまりガミガミ言いたくないので、かなり大目に見てきた私ですが、常に散らかった状態が続くと掃除もできないので、いろいろ試してみることに。
1人で片付けられるようになれば一番良いのですが、一緒に片付けた方が息子はやる気が出るようだったので、まずは私が積極的に手伝うということを意識していました。
私が片付ける様子を見て、片付け方を学んで行って欲しいという目的もありました。
◆①物の住所を決める
片付けなさい、と言われても何をどうすればいいのか分からない、という状況だと判断したので、おもちゃの種類ごとにケースの色を決めました。
中身が見えない場合には、何が入っているか分かるように、写真を箱に貼ったり、絵をかいておくと良いかもしれません。
そして「このおもちゃのおうちはここだよ。遊び終わったらおうちに帰してあげようね」と、声かけしていました。
少しずつですが、おもちゃたちが戻る場所、住所を決めることで「元の場所に帰してあげる=お片付け」という意識が息子に芽生えきたように感じています。
◆②片付けの時間設定
「そろそろお片付けしようか」「一緒に片付けよう」などと声をかけても、すんなり動くことは殆どありません。
「このTV見てから」や「後で」…返事はたいていこんな感じです。 ですので、1日のスケジュールの中にお片付けの時間を設定することにしました。
わが家では、就寝前には毎日絵本の読み聞かせをしているのですが、その前にお片付けする、と決めています。
息子は絵本の読み聞かせが大好きで、それが楽しみで片付けをやっています。お片付けのあとに、本人の好きなこと、喜ぶ何かをして満足感が得られると、お片付けに対する意欲もアップすることになります。
毎日できるわけではないのですが、できなかったからと言って何かペナルティを課すことはしません。
翌朝にもう一度声をかけ「出したままのおもちゃはもう要らない?おうちに帰してあげなくていい?」と確認するようにしていました。
それでも片付ける様子がなければ「そしたらおもちゃはおうちに帰れなくて、迷子になって別の子のおうちに帰っちゃうかもね。」と悲しそうに伝えてみたり…
そうすると、はっとして片付けることも当時はありました。
◆③ゲームで楽しく!
誰だって楽しいと思うことしかやりたくないですよね。片付けに「面白い」「楽しい」を足してあげるといいですよ!
「どっちが先にこのおもちゃを箱に戻すことができるか競争ね!」
「パパの歯磨きと〇〇君のお片付けのどっちが早いでしょうか!」
など声をかけて、ゲーム感覚で苦手な片付けに楽しさをくっつけて取り組んでみました。
息子はかなり負けず嫌いなので、このやり方は何に対しても効果が高いです。
ただ、うっかり大人が勝ってしまうと後が大変なのでちゃんと本人を勝たせて終わる、ということも大事なポイント。
早さを競うので、大雑把な片付け方になるかもしれませんが、そこも大目に見ることにしています。
全てに共通することですが、片付け始めたとき、片付けられたときにしっかり褒めてあげることも忘れないでください。
片付けで褒められ、成功体験の記憶として残していくことがとても大事です。
親が介入することで1人で片付けられないのでは?と心配されるかもしれません。けれど、心配無用です!
本人任せで失敗の(叱られる)経験をするよりは、親が一緒に片付けてスモールステップで成功体験を積んでいけば、徐々に1人で片付けられるようになってきます。
私の息子も、片付け自体が苦手なことには変わりません。けれど、具体的に片付ける場所がはっきりして、寝る前に片付けることは理解しているので、私が気づかないうちに片付いていることもあるほどに成長しました!
お片付けすると自分も家族もみんな気持ちが良いということ、そして同時に物を大切にする、という概念もしっかり伝えていこうと現在進行形で取り組んでいます。
休園・休校でイライラもたまりやすいかと思いますが、焦らず無理せず、できることから取り入れてみてくださいね。
一緒にがんばりましょう!