発達障害ASDの子どもは順調に園生活を送っているように見えても、頑張りすぎて急にパンクしたように不登園になることがあります。彼らが持つ白黒思考の意味を理解して、お子さんが限界に達する前に上手にストレスコントロールをする方法を紹介します。
【目次】
1.頑張りすぎて、パンクしてしまった息子
2.発達障害・自閉スペクトラム症の白黒思考の意味
3.ASDの子どもの脳はどうなってる?
4.ストレスを調整してあげよう
①ストレスゼロ期間
②ストレス軽減のための選択肢
1.頑張りすぎて、パンクしてしまった息子
我が子は発達障害・自閉スペクトラム症(ASD)グレーゾーンです。
環境の変化に敏感な特性を持っていたので、年少から年中に進級するときは事前の対策をしっかりしていました。
担任の先生やクラスメート、教室が変わることなどを説明し、子どもが予測しやすいようにわかる範囲での変化は事前に伝えました。
本人も「もう年中さんだから大丈夫だよ!」と自信に満ち溢れた表情で毎日元気よく登園し、行き渋りもなく過ごしていました。
担任の先生からも「問題なく数ごせていますよ」と報告を受けていたし、大きなトラブルなく過ごせていたので安心しきっていました。
しかし、5月末のある朝、ボロボロ涙を流しながら「保育園で不安なことがある」と伝えてくれたのです。
何が不安なのかは具体的にわかりませんでしたが、漠然とした不安を抱えていたようで、問題なく頑張れていたように見えていたものの、本人も気づかない間にストレスがかかっていたようです。
このように、ASDの子どもは知らぬ間にストレスを溜め込んで、急に不登園になったり、攻撃的になったりすることがあるので注意が必要です。
では、ASDの子どもが順調に環境の変化に適応しているように見えて、何が起こっていたのでしょうか?
2.発達障害・自閉スペクトラム症の白黒思考の意味
発達障害・ASDの子どもは
・環境の変化が苦手
・白黒思考
・完璧主義
・コミュニケーションの苦手さ
・感覚過敏
などの特性を抱えています。
環境の変化やコミュニケーションの苦手さ、感覚過敏があるにもかかわらず、新しい環境に適応しようと神経をすり減らして頑張っています。
白黒思考というのは、頑張るときは常に100%の力を発揮しているので、”程よく頑張る”ということができずに、自分でも気づかないうちにストレスを溜め込んでいることを意味しています。
つまり、新しい環境に適応しているように見えても、白黒思考の彼らにとっては手を抜くことを知らないので、”ちょっと疲れたかも”と感じた時にはもうすでに頑張れない精神状態になっていることがあるのです。
3.ASDの子どもの脳はどうなってる?
ここで、発達障害・ASDの子どもが不安にさらされているとき、脳がどのような状態になっているのか、脳科学の観点から考えてみます。
人間の脳は、精神状態やストレス耐性から考えたときに内側と外側で分けて考えることができます。
内側の脳は本能的・動物的な脳と言われ、呼吸や内臓の働き、ホルモン調整、体温調節など生きていくために無意識的な機能を担当しています。
一方、外側の脳は、社会的・人間的・理性的な脳と言われ、喋ったり、感情を抑えたり、意思決定など人間になって初めて獲得した高度な機能を担当しています。
本来、精神状態が落ち着いている時は、外側:内側=3:1の割合で働いていると言われています。
しかし、取り乱した時や怒りに震えているとき、精神不安定な時はその働きの割合が一時的に逆転して、外側:内側=1:3になると言われています。
つまり、慣れない環境で頑張っている発達障害・ASDの子どもは常に不安にさらされているので、脳の働きが逆転している時間が定型発達の人より長いと言えるんです。
逆転現象が起きている時間が長ければ長いほど、子どもは無意識にストレスを抱え込み、心身ともにパンクするリスクが高まります。
そこで、ASDの子どもが頑張りすぎて不登園になっしまうその前に、脳の働く割合を正常に戻してあげる必要がありますね。
4.ストレスを調整してあげよう
では、どのように脳の働く割合を正常に戻すことができるのでしょうか?脳が受けるストレスを緩和し、メンタルを安定させる方法を2つ紹介します。
◆①ストレスゼロ期間
進級・進学や運動会・発表会などのイベントの時期はASDの子どもにとってストレスが多い時期と言えます。
その際は、意識的にストレスをゼロにする意識を持ちましょう。
例えば
・子どもがストレス解消のためのゲームやユーチューブはいつもより長めの時間でもOKにしてあげる
・家でだらしない言動があってもその時期は多めにみてあげる
・普段より褒める量を増やしたり、スキンシップを多めにとるなど癒しの時間を多く持つ
など、自宅ではなるべくストレスがかからないようにしてあげましょう。
◆②ストレス軽減のための選択肢
ASDの子どもは完璧主義であることも多く、「休んでもいいよ?」と聞いても休めないのが彼ら。彼らの完璧主義の心を満たしながら、ストレスが軽減できる選択肢を準備してあげましょう。
我が家は「今日無理して行かなくてもいいよ」「お昼から行ってもいいし、早お迎えもできるよ」というふうに、ストレスを軽減する方法はいくつかあるんだよというのを選択肢として提示してあげます。
白黒思考の子は学校に行くか行かないかの2つの選択肢しかなかったり、完璧主義の子は休むのは嫌だと考えていることもあります。
彼らが罪悪感を感じることなく休みやすいようにお母さんが上手にストレスをコントロールしてあげることで、脳の働きの割合を正常に戻すことができます。
結果的に、お子さんが限界に達する前に不登校や不登園を防ぐことができるんです!
次第に自分でもストレスコントロールができるようになっていくので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
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執筆者:中井春菜
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)