【お悩み相談室】発達障害の息子の嘘。対応に困っています。

自閉症スペクトラム(ASD)の診断が出ている5歳の男の子のことで相談です。最近、自分のやったことをごまかしたり、平気で嘘をつくことが増えました。「うそつきは泥棒の始まりだよ」などと伝えていますが、一向に治りません。怒られたくないのが理由なのは分かっていますが…どう対応してよいか困っています。

 

5歳・男の子のママ

子どもがつく嘘…可愛い嘘もありますが、あまり頻繁だとお母さんとしては心配ですよね。私の息子は6歳で同じASDなのですが、5歳になる前くらいからウソをつくことが増えました。しかし、最近は「ほんとはね…」と言ってくれるようにもなり、素直さが育ってきた息子。ちょっとした対応のコツを掴んだ私が解説します!

 

発達科学コミュニケーションリサーチャー 瀬名香織

 

【目次】

 

1.発達障害の子どもの嘘に早めに対処しておきたいワケ

 
 
発達障害の子どもの中でも自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある子は、社会性の遅れがあると言われています。定型発達の子と比べると嘘のつき方や嘘の理由も幼くなりがちです。
 
 
その為、単なる身勝手、空気が読めないなどと受け取られる可能性も高くなります。
 
 
 
 
お母さんとしては、お友達や園の生活に支障が出ることは防ぎたいですよね。
 
 
息子さんも嘘をつくことで、罪悪感を抱え、不安感がさらに強くなる可能性もありますので、幼児期のうちに少しでも早めに対応することが必要です。
 
 
実は、お母さんのコミュニケーション、対応次第で嘘をつく癖がつかないように、素直さを育てることができるんです。
 
 
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2.発達段階別に解説します。子どもが約束を守れない理由

 
 
まずは、嘘の発達段階から簡単にご説明していきます。相談者さんの息子さんの嘘はどの段階の嘘をつくのか、考えながら読み進めてみてくださいね。
 
 

◆①3歳頃 最初の嘘

 
 
空想による虚偽や問い詰められたときの咄嗟の否認で、罰を受けないために反射的につく嘘。相手の状況や気持ちをまだ想像することはできません。「鬼が来るよ!」とお母さんが言った嘘を信じてしまうのもこの頃です。
 
 

◆②4~6歳頃

 
 
相手の立場に立った思考ができるようになってくる頃で、意図的に嘘も言えるようになります。
 
 
保育園に行きたくなくて、お腹が痛いなどと嘘をつくのはこの頃。お腹が痛ければお母さんは心配して保育園を休ませてくれるかもしれない、という考えからくる嘘です。
 
 

◆③7歳~8歳頃

 
 
一貫性のある嘘がつけるようになってきます。
 
 
例えば、お母さんと子どもがお父さんの良くない話をしていたとします。そこへ急にお父さんが現れます。お父さんは何の話をしていたのか聞きますが、「学校の話だよ」と子どもは嘘をつきます。
 
 
お母さんの気持ちを考えてつく嘘、他者を気遣う「社会的な嘘」をつけるようになってきます。
 
 
いかがでしょうか。息子さんの嘘はどの段階のものが多いでしょうか。
 
 
 
 
ちなみに、我が家の息子は現在6歳の年長で発達障害、ASDの診断が出ています。お友達は大好きなのですが、うまくコミュニケーションが取れていません。
 
 
嘘でいうとまだ最初の段階のものが殆どかな、と思います。
 
 
例えば、手洗い。息子は手洗いをやりたがりませんでした。今でも苦手なことの1つです。
 
 
帰宅後に「さ、手を洗おうか」と私が言うと、「もう洗ったよ」と見え透いた嘘をつきます。
 
 
別の日には「手はもう洗ったの?」という聞き方をしても「もちろん洗ったよ」と答えます。
 
 
息子の場合、手洗いを嫌がるのは、水が嫌などの触覚的なものではありません。
 
 
水遊びが大好き、にも関わらず…結局は「やらないといけないと分かっているけど、何となく指示に従うのが嫌」もしくは「手洗いの必要性を感じない」のです。
 
 
「やりたくないからやったことにしておこう」という意図が働いています。
 
 
もう1つ、私の反省点でもあるのですが… 息子が「やっていない」と言ったときの私の反応が「ネガティブ」になっていた可能性が高く、その反応を恐れて「やった」と嘘をついている節があるのです。
 
 
ネガティブな反応というのは、「もう!早くやりなさい!」と叱るということだけではありません。
 
 
私の表情が少し残念そうに、口調は責めている印象を与えていたように思います。 これは息子の良くない反応を引き起こす要因となっていたと思います。
 
 
発達障害の中でも特にASD傾向のある子どもは、叱られる行為そのものへの不快が異常に強いとう特徴があります。
 
 
その為、反射的に逆切れしたり、自己防衛が強く働き、また大人が出した助け舟の会話をまねしたりと、叱られない言い訳や嘘が次々出てきたりすることがあります。
 
 
息子もその点は典型的で、相手のネガティブな反応には無条件で強く反応します。
 
 
ここで言うと、「手洗いしたくないないのに、していないと言うとママが怒る」ので「洗った」と反射的に言う、ということです。
 
 
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3.幼児期の嘘の特徴と対応法はコレ!

 
 
このように、息子はASDの特性である不安感を強く持っており、独特なこだわりがあり、指示に従うことが苦手です。
 
 
嘘に関しても、未だに定型発達のお子さんで言う3歳くらいの段階のものが多いので、「空気が読めない」「身勝手な嘘」と捉えられがちです。
 
 
そんな息子に実践した対応法は2つ。
 
 

◆① 本当のことを言うチャンスを与える

 
 
手洗いに関するやりとりで「した」と嘘をついたやりとりの間に、全く別の会話を入れます。
 
 
「そういえば、今日の給食何だったの?」
「ハンバーグとお味噌汁」
「美味しかった?」
「美味しかったよ。」
「良かったね。教えてくれてありがとう」
 
 
この会話を挟んだ理由は、息子の行動は一切関係なく、ただ記憶と事実に基づく返答をするだけ嘘をつかずに済む会話をするためです。
 
 
そして、本題。
「あ、そう言えば、手洗いしたっけ?ママ、忘れてたよ。洗ってこよっと。」
「あ、僕も。一緒に行くよ」
 
 
一旦は話題を変えて切替える。そして事実に基づく返事をさせる。そして、嘘をつかずに済むように、行動を誘導する。
 
 
毎回このようにうまくいくわけではありませんが、記憶と事実に基づく返事をする練習をしていくことで、脳に良い反応を癖付けをしていくのが狙いです。
 
 
幼児期はまだ記憶があいまいなことも多いので、記憶の出し入れのトレーニングにも効果的です。
 
 

◆② やっていない、できていないときの反応に注意する

 
 
できていない、やっていないという返答に、眉間にしわを寄せてしまったりすることはありませんか?
 
 
先ほどもお伝えしましたが、叱ることだけがネガティブな反応ではありません。
 
 
「え~、まだやってないの?」など言葉で否定しなかったとしても、子どもは親の表情をよく見ています。少し眉間にしわが寄ったり、声のトーンが低くなっただけでも敏感に感じ取ります
 
 
そんな中で、やっていないことを「やっていない」、と正直に言うことは発達障害の子どもからするとかなり勇気がいることです。
 
 
相手の反応がちょっと心配だけど…それでも「やっていない」「できていない」ということを言えたとしたら、それは実はすごいこと。見逃せない褒めポイントなんです。
 
 
褒めると言っても、できていないことを褒められません。教えてくれたことが嬉しかったという気持ちを伝えることです。
 
 
「できなかったんだね。でも良くがんばってたじゃない。それが嬉しかったよ。」
「まだなんだね。教えてくれてありがとう」
 
 
①も②の場合いずれの場合でも、本人に事実確認するときにはあくまでも普通に、明るく聞いてくださいね。間違っても問い詰めるような聞き方はしないように注意です。
 
 
今はまだ幼いので、こちらが事実を知っている、把握できていることが多いですが、就学するとそうはいきません。
 
 
成長していくと、こちらが事実を知らないことを確認する機会も増えてきます。
 
 
そのときに、自己防衛の言い訳、嘘をつかせないためにも、叱り口調と怒っている表情を見せないのが大事です。そして、質問攻めにも要注意
 
 
あくまでも普通に冷静に、が本当のことを聞き出すコツです。
 
 
どんな結果であろうと、お母さんには本当のことを言っても受け止めてくれる、という安心感を与えてあげてください。
 
 
その安心感が、自分の存在価値を感じることにつながり、成長したときにもお母さんはなんでも相談できる味方だと感じられる要素となります。
 
 
 
 
現在の息子ですが、まだまだ自己防衛の嘘が咄嗟に口から出てきます。
 
 
けれど、少し時間はかかるものの自分の中で折り合いをつけて、自分の言葉を訂正し「やっぱり手を洗ってくる」と自分から動くようになりました。
 
 
できてもないけん玉を「できた!」と良く嘘を言っていましたが、今は 「今日もできなかったよ。でも〇〇ちゃんは剣先に入れられるようになったんだよ!すごいよね。」
 
 
みんなはできているけん玉を、自分だけができないという事実を伝えてくれるだけではなく、お友達を称賛する素直さも息子の中では育ってきました
 
 
会話の中で少しづつ自信をつけて、自己防衛に頼らずに、楽に素直さが出せるようになっていけるといいな、と思っています。
 
 
誰しも自分に都合の悪いことは言いたくないですよね。子どもなら尚更です。気長に付き合っていきましょう。
 
 
もし、相談者さんも取り入れられそうなことがあればぜひ試してみてくださいね。我が家も親子ともに絶賛トレーニング中です。一緒にがんばっていきましょう!
 
 
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執筆者:瀬名香織
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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